「アンジュレーション」など先駆的なシステムが魅力。ところが困ったことに家庭用移植はドリキャスだけ。しかもその移植度が……
VF3tbとは
「2」から進化したグラフィック
上画像が「3」、下が前作「2」。
テクスチャマッピング、シェーディングが進化。カクカクだった表面が滑らかになった。
当時、新キャラ「葵」の演舞デモを見た人は驚愕したという。
申し訳程度の残像エフェクトを追加。
正直、前作「2」より格好悪いと思う。
マネキンみたい。
BGMは風の音のようなアンビエント(環境音楽)を取り入れたオシャレ系。
落ち着いているというかダルい。耳に残る曲は少ない。
新キャラ「鷹嵐」
力士の表現はグラフィック的にもモーション的にもこの時代の技術では厳しかったのか、まるで肉塊のモンスター。妙に頭部が小さくてプロポーションがおかしい。
中国まで取材に行った中国拳法と違い、相撲の取材はどうも甘いように見える。相撲のことを知らない人が作ったとしか思えないモーション。体の軸がないようで力感が無い。
力士の表現は特別難しいのかもしれない。5fsの鷹嵐でもまだ違和感が凄い。
その点、鉄拳の「巌竜」はうまくデフォルメしてると思う。
キャラ性能も特殊で、1人だけ最重量扱いでコンボが入らなかったりして対戦相手に「つまらない」と言われて踏んだり蹴ったり。
勝利画面で「このボケェがぁ」と怒鳴るガラの悪さも受けが悪い。
そもそもなぜ土俵入りで使う「化粧まわし」で戦ってるんだ?
先駆的な新システム
「アンジュレーション」
通称「アンジュ」。ステージが4角形から起伏のある変化に富んだ形状に。リングアウトの演出も様々。
高低差によって有利不利、コンボレシピ、ダメージが変化。
とりあえず四角いリングを置いただけの「2」とは違う、変化に富んだ力作ステージ。
作りは非常に豪華。
しかし高低差による状況変化はフェアな勝負を好む格闘ゲームプレイヤーには受けが悪く、アンジェレーションは次作「バーチャ4」で廃止。同じように起伏を取り入れた「鉄拳4」は開発者からも失敗作の烙印を押されてしまった。
起伏のある地形を格闘ゲームに導入するのは難しいらしい。
「エスケープボタン」
軸移動による回避行動を導入。
ボタンガードの時点で難しいと言われてるのに、さらに防御行動ボタンが増えた。
シリーズ経験者と初心者の差を埋めて敷居を下げるはずだった新システムだが、とりあえず3ボタンでシンプルに動けるVF2から要素が増えたことでプレイヤーはふるいにかけられた。
軸移動システム自体は、後にレバー操作が主流になり、3D格ゲーには欠かせない要素になる。
「2」に比べてゲームスピード低下。動きがモッサリ、ステップも遅い。
ダメージが全体的に減少し、ジャッキーの膝サマーでも3割しか減らないので爽快感も低下。
結果、「求めてるものとなんか違う」ということで「2」の熟練プレイヤーは離れた。
またゲームバランス調整のための度重なるバージョンアップのせいで、ABCDの4バージョンが混在しゲーセンとプレイヤーは混乱。
そんな状況を打開するべくリリースされたのが「3tb」。「3」の1年後、1997年9月稼働。
tbはチームバトルの略で、3on3の団体戦が特徴。同キャラ×3も有り。
正直、強引というか安直なアレンジに思える仕様だが「1回3キャラが使えるお得さ&チームプレイが盛り上がる」仕様が功を奏して都市部のゲーセンでは「2」後期に匹敵する人気になった。
ただCPU戦では元のキャラが少ないため同キャラが何度も出てきてウンザリ。
キャラランクはカゲが最強で、初心者向けのジャッキーと上級者向けのアキラが続くらしい。
葵、シュンは最弱候補。
ドリームキャスト移植の出来
「tb」稼働1年後の1998年11月27日、ドリームキャスト本体と同時発売。
移植は「元気」に外注。
看板タイトルなんだから自社で作ってほしい気がする。
その内容は、
家庭用の追加モードがないどころか対戦モードも無い。
2P対戦は乱入のみ。メニューが無い。
キャラ交代時のロードが長い、勝利画面の文字がキャラの顔に被る、など散々な出来。
ロンチに合わせて無理に作ったのが丸見え。
上画像がAC版、下がDC版。
比べると違いは一目瞭然。DC版は一言でいうと「キレが無い絵」に見える。
モデリング見直し、ポリゴン数減少。
体の凹凸が変。特にパーツのつながり、関節周りが不自然。
背景のテクスチャが粗い。色味が浅い。
当時のゲーム誌では「アケ版より発色が良い!」とか言って誤魔化してたような覚えが。
DCのパワーを見せつける役割は果たした「3tb」移植だが、完全移植とは言い難い内容。
対戦モードが無かったり長いロードのなど単純に家庭用ゲームとして出来が悪い。
DCの信用が最初から怪しくなった。
バーチャ3の思い出
中3とき家族で行った姫路セントラルパークのゲーセンコーナーにバーチャ3があった。
1クレ200円で手が出ないから後ろでベガ立ち。
当時、ひそかにジャッキーの膝サマーで天下取れると思ってた。無知だから。
数年前にセントラルパークに行ったらビデオゲームは跡形もなく姿を消していた。
まあ当然といえば当然。何が悲しくて高い入場料払って格ゲーせにゃならんのかって話。
今どきは格ゲーを置いてるゲーセンが少ない。イオン程度のゲーセンだとガンダムvsが置いてるぐらい。では格ゲーはどこにいったかというと、パチンコやスロットに進出。
「バーチャ2」で盛り上がってた時期を知ってるだけに、この有様は悲しい。
まとめ
先駆的なシステムは今になって再評価されている。しかし家庭用移植はドリームキャストのみ、しかもその出来が悪いのがツラいところ。
オンライン対戦対応で完全移植を期待したい作品。(たぶんムリ)