ド直球の冒険活劇を描き、RPG史上屈指の名作と評価された前作「グランディア」。
その続編がセガサターンの後継機、ドリームキャストで登場しました。
はたして「2」はグランディアを大作RPGシリーズとして根付かせることができるのか。
ドリームキャストの命運を握る作品です。
僕は本作を発売当時にプレイしました。
当時の記憶ではイマイチな印象です。期待が大きかっただけに落胆した覚えが。
発売から18年後の今、再びプレイして実際のところを確かめます。
少々ネタバレあり。
前作のレビューはこちら↓
もくじ
グランディア2の特徴
グランディア2は、スクウェアなど大手RPGメーカーにスルーされたドリームキャストにとって、待望の大作RPGです。
前作の約3年半後、2000/8/3発売。
主な特徴は以下。
■キャラ、世界観
前作から一新。
グランディアシリーズは世界設定のつながりがないため、作品ごとにそれぞれ作風が異なります。
本作は、明るくド直球の冒険活劇を描いた前作より暗くて重い。
■あらすじ
主人公・リュードは金次第でどんな仕事もこなすジオハウンド(冒険者)。
リュードはカーボ村から依頼を受ける。
依頼内容はグラナス教の歌姫・エレナに同行し、悪魔ヴァルマーを封印する儀式と行き帰りの護衛をすること。
依頼を引き受けエレナの護衛をするが儀式は失敗。
エレナは「ヴァルマーの翼」に取りつかれてしまう。
エレナに取り憑いたヴァルマーの封印とヴァルマー復活阻止のため、エレナはグラナス教の総本山セントハイム法国へ向かう必要がある。
リュードは引き続きエレナ護衛依頼を受け、2人の旅が始まる。
■グラフィック
ドリームキャストの性能を引き出し、セガサターンの前作より格段に美しくなりました。
前作はドット絵だったキャラもフルポリゴン化。
■基本システム
前作を引き継ぎます。
迷路ダンジョン、キャラ強制離脱・加入、リアルタイム戦闘、やりこみがいのある育成システムです。
前作と比べてパワーダウン
結論からいうと、18年ぶりにプレイしても印象は変わりませんでした。
単体の作品としては良作RPGといえる出来です。
でも前作と比べるとパワーダウン。
以下、そう感じる理由をつらつらと書きます。
グラフィックが暗い
当時としては間違いなく最高レベルのグラフィック。
ドリームキャスト発売(1998/11/27)からたった1年半で本体性能を引き出しました。
キャラ、背景が丁寧に作り込まれているのがわかります。
部屋の内装もオブジェクトが多くて豪華。
にも関わらず、前作の方が見映えが良い。
前作は光源による明暗をあまり描かないので、まんべんなく明るい色味でした。
一方、本作はどこに行ってもどんより暗いのでパットしない。印象に残る光景がありません。
キャラに前作のドット絵のような温かみが無いです。
マネキンみたいなので気持ちが乗りません。
ジェスチャーはするものの、顔に表情がない。イラストのイメージとも違う。
口を動かすのが大変なのか、口が無い。
せっかく作った3Dキャラを見せつけるようにデモでアップになる場面が多いこともあり、マネキン感に萎えます。
シナリオが暗い、退屈、超展開
壮大なオープニングを観てワクワクするけど、そこがワクワクのピークでした。
テーマは「人間の心の光と闇」。
ずっと暗めの作風で、人間のドロドロした部分を描きます。神々や超文明の華やかさは一切ありません。
シナリオは、前作が50話のテレビシリーズだとすれば本作は1時間半の映画。
まとまっている反面、前作のような壮大さは無いです。
前半は、立ち寄る町で遭遇した事件を解決する水戸黄門のような展開が続きます。
「味が無くなった→助けて神官様」みたいな。
夢を抱く少年が、徐々に新しい世界へ踏み出していく前作と比べると退屈です。
途中のどんでん返しはあるけど驚きはありません。初登場からいかにも怪しい人が黒幕。
そんな薄味シナリオが、やたらと間をとるザコ戦とイベントにより薄ーく引き伸ばされておりクリアに30時間かかります。
後半は都合が良すぎる展開でついていけません。
ストーリー終盤、今までやってきたことが全て無駄になり絶望的な状況に陥ります。
でも急展開でトントン拍子に大逆転!
リュード
「もうダメだー、おしまいだー。あ、そうだ。昔聞いたことがある場所に行ってみよう」
→なんか凄い力を入手
→なぜかミレーニア復活して体も入手
→勝利
超展開すぎて主人公が茂野吾郎に見えてきます。
(CV:森久保祥太郎)
前作終盤の超展開も違和感があったけど、あの冒険活劇全開の作風だからギリ許せました。
本作は中途半端にリアリティを出す一方で、前作以上の超展開だから許せません。
また、本作はシナリオに限らず後半の作りが雑です。
グロ系ダンジョンが続いたり、レベルデザインが雑だったり、巨大ラスボスが静止画で登場したり。
エレナとミレーニア、2人のヒロインが絡むマクロスみたいな三角関係になります。
しかしこの三角関係、エンディングまでいっても進展がない。
2人は分離してそれぞれリュードを待ちながら平和に暮らすって、そんな都合の良い二股があっていいのか!テレビ版マクロスFか!
自分で会話を進めるイベントは健在です。
前作は冒険感を盛り上げていたけど、本作ではめんどくさい。
キャラとシナリオに入り込めないと、こんなにも気持ちのノリが違うものなのかと。
キャラの魅力が薄い
シナリオだけでなくキャラの魅力も薄いです。
テンプレをなぞったようなキャラばかりで、意外性もリアリティも無い。
メンバー全員の動機づけが弱いのも気になります。
具体的には、
・リュード:仕事だから
・エレナ:神官の役目だから
・ミレーニア:アタシのことを唯一心配してくれたリュードが好き。(たいして心配した描写がない)
・ロアン:面白そうだから
・マレッグ:追ってる相手が同じっぽい
・ティオ:自分探し
このように、みんなテキトーに動いています。
前作は、「世界の謎に迫ってやるぜ!」とバカみたいに一直線なジャスティンに周りが引っ張られる構成でした。
対して本作は、目的意識が薄いままメンバーが仲良くなっていきます。
そのため、ストーリーを進めると誰が何のために何をやってるのか見失う。何をやっても熱量、印象が薄いです。
「ロアン助けたしさあ帰ろ。あれ?そもそも何でここに来たんだっけ」みたいな。
次第にストーリーの根本的な部分に迫っていくけど、結局は行き当たりばったりで巻き込まれるだけ。自分で道を切り開いてる感が無い。
以下、魅力が薄いパーティーメンバー達を軽く紹介します。
「リュード」
主人公。
皮肉屋でぶっきらぼうだけど根は優しい。モテる。
「エレナ」
素直じゃない、世間知らず、ヤキモチ焼き。
絵に描いたような、何も出来ないくせに口だけエラそうな偽善者。
その理想が現実の壁にぶち当たるのが作品のテーマだが…
「こんな女、すぐ野党に襲われて終わりだろ」と思ってしまう。
「ミレーニア」
エレナに取り憑いた闇の存在。
エレナと対象的な無邪気でわがままなキャラ。
「ロアン」
小生意気な少年。
「マレッグ」
空気を読んで気を回すオッサン。
「ティオ」
綾波レイみたいなオートマター。
このキャラはいくらなんでも狙いすぎ。
戦闘システムが宝の持ち腐れ
前作の戦闘システムを引き継ぎます。
リアルタイムで、行動ゲージで上手を取り合う攻防が熱い。
さらに本作から敵の行動予約、ターゲットの判別が可能になったので戦略性が上がりました。
と言いたいところですが、RPG史上屈指の秀逸な戦闘システムは本作でも宝の持ち腐れ状態です。
前作から大幅強化された魔法演出で、テンポが悪化。
魔法の演出は戦闘画面にムービー映像を重ねるタイプ※。スキップ不可。
派手で爽快なのは良いけど、スキップ不可は致命的です。
とにかく長い。
相手が複数なら範囲攻撃魔法「ライガ」「ライデン」でザコを一掃したいけど、魔法演出を見るぐらいなら通常攻撃で回したくなる。それほどテンポが悪い。
後半はボス戦すら魔法を使うのが億劫になります。
攻撃魔法はもちろん回復、補助魔法も例外なく演出が長い。
ムービーなだけに映像に変化が無くてすぐ飽きるのもツラい。
敵も魔法を撃ってきます。これもスキップ不可。
6体に不意打ちされたときは1分ほどコントローラーから手を離します。
(実は常に手を離している。詳しくは後述)
※
調べたところ、ドリームキャストはサターンと同じく半透明の処理が苦手らしい。
半透明エフェクトではなくムービーで表現したのはそのためかも。
戦闘バランスは前作以上のヌルゲー。
消化試合なので、せっかくの戦闘システムを生かせる場面が少ないです。
ヌルゲーな上、以下のシステムにより工夫せずともクリアできます。
・敵復活なし&セーブポイントで全回復
「大技でなぎ倒す→セーブポイントで回復」の繰り返しでゴリ押し可能。
・復活薬で完全回復
なんと生きているキャラに予約できます。FFでいうアレイズが予約で使えるようなもの。
ときには下手に回復するより復活させたほうが楽です。
しかも店売りで値段が安いから使い放題。
前述のように魔法を撃ちたくないので、そのうちザコ戦はオート通常攻撃で回すようになります。
戦闘システムを堪能するどころか、ぼーっとAIの動きをぼーっと見ているだけ。
プレイ時間の7割はオート戦闘の鑑賞時間です。
オートにしても行動ゲージの進むスピードが遅いのでイライラ。
自分と相手の相対速度を見切れないとゲーム性が変わるので早くできない事情もわかります。
でもせめてオートのときは高速化できるようにしてほしい。
ボス戦もヌルゲー。
普通に道中のザコを倒して強化し、キャンセルを決めれば勝てる。
ヌルゲーに加え、ヴァルマー以外の中ボスはザコの使い回しなのも萎えます。
ただ、終盤は辻褄合わせのように難易度が跳ね上がります。難易度調整が雑。
特にキツいのがヴァルマーコア。
実質のラスボスといわれる最強ボス。
ここまで特に苦労なく進めてきたのに急に強すぎ。推奨レベル20ぐらい跳ね上がってる。
ターゲットの数が多い上に行動が早い。ずっとボスのターン。
消費アイテムを惜しげもなく投入し、何度も全滅して粘ること3時間でようやく撃破しました。
なんだったんだコイツ。
隠しダンジョンが無い。
高難度の隠しダンジョンが無いから戦闘システムを味わえない、前作と同様です。
レアエネミー・アイテムを配置した「スペシャルステージ」があるものの、アイテム回収以外にやることがない。
これには18年前もガッカリしました。「結局この戦闘システムを味わう場所ないやんけ!」と。
戦闘のやり込みは次作「グランディアエクストリーム」で存分に味わえます。
ただ、シナリオなど他の難点がさらに悪化しており大作RPGとしては次作で失墜しました。
次の「グランディア3」でシリーズは地に落ちます。
ダンジョンのダルさが悪化
ダンジョンのダルさが前作から悪化しました。
もはや嫌がらせのように感じます。
狭くてうねる。分岐が多い。長い。
フロアごとの特徴も無いし、どこにいっても狭いし暗い。
大自然のフィールドまでもれなく、不自然に迷路構造。
しかもアリの巣のような構造なので順路は一択。自由度ゼロです。
常にほぼ真上から見下ろす視点なので先が見えません。そのため開放感もゼロ。
遠景が見えないので、どんな場所に行ってもスケール感が無い。
先が見えないので進んでいる実感もない。同じ場所をグルグル周っているようで疲れます。
ようするに退屈です。
狭いし迷うので、敵シンボルを避けるだけ労力の無駄。
これではシンボルエンカウントの意味が無いです。
道がうねりでコンパスが役立たず。
ハシゴ登り降りの遅さも地味にイライラ。
後半はひたすらキモいダンジョンの連続でウンザリします。
しかも後半ほど複雑で長いから、腸内カメラの映像みたいなのをずっと見るハメになって気分悪い。
まとめ
単体の作品としては良作RPGで遊べる出来です。
でも「グランディア」としては前作からパワーダウン。
どんより暗い作風と、テンポが悪化した戦闘。
結果、クリア後に何も印象に残りません。
「グランディア」シリーズ未プレイの方がまず一作選ぶなら、やはり前作がおすすめです。