はじめに
王道ファンタジーSRPG。
辺境に住む正義感の強い少年アークが精霊から力を授かり、世界を破滅から救うために冒険。
PS本体発売の半年後、1995/6/30発売。
「ポポロクロイス物語」「ワイルドアームズ」とともにSCE三大RPGとして宣伝された。
光と音のRPG
キャッチコピーは「光と音のRPG」。
美しい2Dグラフィック。
次世代機感は無いけど丁寧に描かれており見応えがある。
キャラは戦闘以外でも細かく動く。実力派声優のボイスつき。
技・魔法演出はカット不可。
どの技も間をたっぷり取るのでイライラ。頻繁に使うし使われるのでテンポが悪い。
BGMは名曲揃い。ほぼ全曲が次作にそのまま使われた。
担当は安藤まさひろ氏。F1の「TRUTH」が有名。
後に「グランツーリスモ」のメインテーマ「Moon Over The Castle」を手掛ける。
システム
簡略化
フィールド移動、エンカウント、ダンジョンといった要素を簡略化。
地図で場所を選んでイベント→バトルの繰り返し。
世界の広がりを感じない。
他には稼ぎ用のフリーバトルエリアと街。
街といってもお金や店が無いのでアイテム入手のフラグ立てで寄るだけ。
飛空艇で6つの国を移動。国を移動するときは毎回、発着場から飛空艇に乗る。
1国の中で行ける場所が少ない。酷いときは発着場→1ヶ所行ってその国のイベント終了とか。
そのため頻繁に飛空艇に乗るが、この時のやりとり&たっぷり間をとる発進デモがスキップ不可。ダルい。
サクサク進行
シナリオも簡略化でサクサク進行。
気持ち良いほど割り切った展開で仲間が流れるように集まる。
普通のRPGなら数時間かかるようなシナリオを30分ぐらいで消化。感情移入するヒマもない。
アークとククルはいつそういう仲になったんだ?
何が起こっていて何をやってるのかもわからない。
世界の破滅を防ぐために聖櫃を見つける必要があり、そのために世界中を巡り精霊たちに会ってきたはずだが、アークが聖櫃を開けて得たものは「自らの成長」。は?
シナリオは「起承転結」の起で終わる。続編「II」の序章。
いきなり「アークは勇者、ククルは聖母として精霊の力を集め世界を救え」と言われ、ようやく盛り上がってくるのか?と思ったところでエンディング。
「プレステ初の大作RPG」といった誇大広告とのギャップで発売日に買ったユーザーは落胆。発売直後に中古があふれ返った。
プロデューサーいわく、
元々「Ⅰ」「Ⅱ」は1本として開発していたが、PS発売から半年以内に出したいから、出来上がっていた部分までをとりあえず1本のソフトにして出したらしい。
戦闘
マス上で駒(キャラ)を進めていくオーソドックスなシステム。
素早さ順で敵味方入り乱れて行動する。
位置取りが重要。側面・背面から攻撃するとヒット率アップ&反撃を受けにくい。
レベルが上がると必殺技も強化。
効果範囲が大きく広がり、敵を一網打尽できるので爽快。
特殊能力は聖剣伝説のようなサークルコマンドで選択。
斜めコマンドが非常に選択しづらい。ご丁寧にオプションに「パッドななめ入力:ふつう・よくする」設定項目がある。
キャラは全員出撃。「味方ターン終了」コマンドが無いので毎回全員を操作する必要がある。
前線で活躍するキャラが偏りがちで、育成が遅れたキャラは「ただいるだけ」な存在になる。そのベンチ組の操作まで強いられるのが面倒。
■難易度
次の戦闘フィールドに行くと敵が段違いに強い。さっきまで楽勝だったのに2撃でやられたり。
逃走不可なのでレベル差のあるフィールドに入ってしまうとどうしようもない。ある程度稼いでから逃げるのもムリ。
経験値稼ぎ用のフィールドでレベルを上げてから再び挑むとまた楽勝のバランスに戻る。
つまり難易度はレベリング次第。作業感だけが残る。
■やり込み要素
物足りない分は水増し&高難度のやりこみ要素でカバー。
闘技場1000勝&地下50階の遺跡ダンジョン。これまた作業感が際立つ内容。
シナリオが腑に落ちない
世界が破滅に向かうのは人間の愚行が原因らしい。
人間の醜さは描かれているものの、例えば大量破壊兵器を使うとか、神の力をもてあそぶとか、そういう破滅に至っても仕方ないと思えるようなシーンが無い(目立たない)のでイマイチ腑に落ちない。
主人公が愚行に加担していたなら感情移入もしやすいが、アークはただの辺境で育った少年。
精霊に会っても「人間は愚かだ」「なんもわかってない癖に力だけ使いやがって」みたいにひたすら罵られる。特に悪いことをした覚えがないので不愉快。
そんな怒れる精霊にアーク達は「人間は反省してやり直せるから力を貸してくれ」とたった数行の台詞で説得。
「人間に教えられたわ。そこまでいうなら~」とあっさり納得する精霊。
どうも腑に落ちない。
おわりに
続編「II」とセット前提。
本作単品ではシナリオ・システムどちらも消化不良。
少なくともこの一作では泣けない。