どうも、半沢の絵を描いてみたものの全然似ないのでヘコんだヤギです。
Paraviで一気観した半沢直樹(2020)は、前作以上の熱量があり期待どおり楽しめました。
と最初に率直な感想を述べた上で以下、政治色の強い視点で語ります。
半沢に倍返しだ!
結論からいうと、半沢直樹は財務省のプロパガンダドラマである。
なぜなら半沢の主張は自己責任論だから。
半沢の目的は常に「金回収・自力再建・構造改革」。
ここ25年間、日本をデフレでズタボロにした「自己責任論」の3点セットだ。
この自己責任論は、日本をデフレに突き落とした緊縮財政と表裏一体。
言い方を変えると、PB黒字化目標を掲げ緊縮財政を進める財務省の建前が自己責任論である。
半沢のやり方は日本全体の、マクロな視点で見れば失敗する。
なぜなら半沢の、資本主義での自力再建・自助努力はデフレ下では通用しないから。
資本主義とは、インフレの期待値で株主や銀行から前借りした資本で生産効率を上げ、GDPを上げるサイクルである。
よってデフレ下では機能しないし、デフレを許容するなら資本主義を採用する意味がない。
しかし日本は20年以上デフレを放置し、資本はPB黒字化目標や大企業の穴埋め、投資家に流してきた。
例えば、安倍政権の成果といえば、
・株価が8000→20000円
・企業利益と有効求人倍率が上がった
・税収増えた
他、外国人旅行者が3倍とか。
しかしGDP成長率は民主党政権と同じ0.8%※。
教育、医療、公共事業、地方などへの予算は悪夢の民主党政権以下。
※地震とリーマンショックを考慮すると、あの悪夢の民主党政権以下
※世界最低。緊縮であえぐEU諸国ですら1.5%
つまりパイ(総量)は減らし、上が取った分のしわ寄せを下が受ける構造に「構造改革」されたということ。
これでは資本主義ではなく株主主義だ。
最近、ホリエモンの「手取り14万?お前が終わってんだよ」発言が話題になった。
この発言はミクロなら正しいけどマクロなら間違い。パイが減っているのだから当然、日本が終わっている。
デフレ下でインフレ下の論理を振りかざす半沢の主張は、「手取り14万?お前が終わってんだよ」と同じである。
そもそも半沢はバブルの認識が間違っている。
4話で「就職氷河期は好き勝手やったバブル世代のせい」つってんだけど、これは違う。
バブル期で高騰したのは株価と地価。インフレ率(物価上昇率)は2.5%程度と適正だった。
だからバブルが弾けて大損したのは一部投資家だけで、景気は90年代半ばまで良かったのだ。
橋本政権で消費税5%引き上げなど緊縮財政が始まり景気がガタ落ち。その後、小泉政権による緊縮財政セットの構造改革で完全に終わった。
しかしショックすぎて日本人の記憶が飛んでいるのか、「バブルが弾けて景気悪化した」が常識になっている。
つまり好き勝手やったのはバブル世代の後、自己責任論を振りかざして構造改革の名の下に構造解体した人達である。
その人達とは、利権を作りたい一部企業やグローバリスト。そして、金を使いたくない政府と財務省。
両者の思惑は一致するため、国の資産が食い物にされる。
竹中平蔵らグローバリストは「自己責任→小さな政府→緊縮&構造改革」で国の資産に自分達の利権を食い込ませ、日本をデフレに突き落とした。
小さいところでは、マイナポイント事業がわかりやすい。
マイナンバーカードを普及させたいならカード所有者に直接5000円渡せば良い。消費を促進したいなら消費減税すれば良い。
でも政府は財政拡大したくないから一部企業が食い込む。
現在、菅政権がやろうとしている構造改革や、維新の大阪都構想はその典型である。
半沢直樹は5話以降、帝国航空の話に移る。
半沢が作った再建計画の詳細はわからないが、ようするにコストカットと縦割り打破で専門職は解体され、派遣社員を増やすことになるだろう。
ここ30年でおなじみの流れだ。
そんなやり方では、会社は生き残れても社員が生き残れない。下手すると乗客も生き残れない。
貧しくなった帝国航空関係者の消費が減り、他の商売も生き残れない。
半沢の自己責任論が日本をズタボロにすることは、現実の日本が十分に証明している。
20年以上GDPが増えない国なんて世界中探しても日本だけだ。
「社会的意義の前に、帝国航空も民間企業だから利益を出せ」
「開投銀は民営化された。政府の呪縛から解き放たれた」
「借りた金は返す。子供でもわかることです」
このようなメッセージを繰り返し叫び、半沢は正義を執行する。
しかし政府が借りた金を返す必要はない。
また、国鉄や郵政など民営化によってサービスが良くなった前例などない。
国の資産を投資家が食い散らかし、コストカットで採算が取れない地方から切り捨てられ、国民が不利益を被っただけ。
利益関係なく日本をもっと良くしよう、もっと便利にしようと先人が築いたものを民営化によって崩しているのが現状だ。
なんで採算の合わない路線や空港がダメなんだよ。
採算の合わない事業こそ国がやるべきだろ。美濃部空港、良いじゃないか。地方が便利になるし、職が増えるし。
話をまとめると、
半沢のようにバブルの認識を間違い、自己責任論を振りかざした結果が今の日本である。
半沢は失われた20年の象徴といえる。
だから今こそ「逆半沢」をやるべき。
つまり、政府は借金しまくって財政拡大し、民営化した事業は再び国有化しろ。そして借金は踏み倒せ。
半沢に倍返し、いや10000倍返しだ!
■余談
最後にドラマとして文句をいうと、やはり大和田と黒崎が蛇足だ。
2人をねじ込んだせいで、新キャストの存在感が薄れて話がブレている。
旧キャストに引っ張られてとっ散らかるって、ガンダムSEED DESTINYかよ。劇場版カイジかよ。
特に大和田。
だって常に「大和田、なんでいるの?」状態だもん。
大和田を絡めたせいで、市川猿之助(役の名前忘れた)の二重スパイみたいな立ち回りが迷走しすぎ。
終盤の美濃部に恫喝されるシーンも、半沢・頭取・美濃部3人の方がスッキリする。
大和田の立ち回りも迷走しており、結局なにがしたいのかわからん。
本気で頭取に恩返しがしたいのか、まだ頭取の座を狙っているのか。半沢に仕返しがしたいのか、そうでもないのか。
あの大和田が1回の土下座ぐらいで心入れ替えるわけない。
半沢だって親父の仇を1回の土下座ぐらいで許せるわけないので、良いライバルみたいになっているのは違和感ある。
つまり大和田、なんでいるの?空気読めよ。