「S~D」のおすすめランクで整理しました。
作品を選ぶ際の参考にしてください。
200本までの感想
【1~100本】
【100~200本】
映画配信サービスは他にもあるけどAmazonプライム・ビデオは買い物も便利になるのが利点です。
Sランク:知り合いにオススメしたい
ガス人間第1号
■あらすじ
奇妙な銀行強盗の発生と同時に、困窮しているはずの日本舞踊家元・藤千代の羽振りが良くなった。藤千代が事件の関係者と踏んだ岡本警部補は、恋人の新聞記者・甲野と共に捜査する。やがて藤千代は逮捕されるが、その後すぐ真犯人を名乗る男・水野が自首。水野は、自分は肉体をガス化できるガス人間であり、藤千代のためなら凶行を続けるという。
「ガス人間」なんてトンデモSFなタイトルから想像もできない、儚く美しい物語。
まずオープニングが最高に格好いい。なんだこれ。
手を上げた銀行員を舐めるように映した後、これでもかとゆっくり段階的に金庫が開くところを映す。
もうこの2カットだけで名作確定。
藤千代の妖艶な雰囲気と、トンデモSFが絶妙に噛み合う。
警察、記者のカップル、その他リアルなおっさん達の小気味良いキャラも面白い。
最初から怪しく、粘りつくような空気を引っ張りながら、やるせなく儚い終演をむかえる。名作というしかない。
藤千代が美人すぎ。
存在するだけで眼を引きつける雰囲気を作っちゃうぐらい美人。
誰なんだろう、と思って調べたら20代の八千草薫さんだった。
昔の女優がずば抜けて美人なのは、思い出補正ではなくガチだ。
パパはわるものチャンピオン
■あらすじ
かつてのエース・大村孝志は怪我により輝きを失い、悪役レスラーとなってブーイングを浴びていた。孝志は自分の仕事を9歳の息子・祥太に伝えられずにいたが、偶然バレてしまう。祥太は悪役の父を恥じて同級生に嘘をつき、父親への複雑な気持ちと罪悪感を抱えるが、悪役として全力を尽くす父を見て次第に心が動かされていく。
筋書きなんて完全に見えてるのに、なぜかめちゃ泣ける。
序盤、子供と目があってバレた時点でウルっとくるから不思議。
なんなら開始6分半、銭湯でポーズ決めてるときからヤバい。
主役である棚橋の演技は決して上手くないし台詞も少ない。でも「素の棚橋」そのままに見えて妙にリアル。
作らないその演技・表情が、まるで能面のように感情移入を呼び込む装置として機能している。
その棚橋の周りを固める役者が上手い。
子役・寺田心、 夫を応援する妻・木村佳乃、プロレスマニアのライター・仲里依紗など助演のリアリティにより、物語と棚橋がまるで神輿のように高い位置へ持ち上がっていく。
最後、棚橋が正面からガチらないのも秀逸。
大事なのは強さや人気だけじゃない。失ったものは戻らないけど、それでもできることがある。やりたいことがある。
そんな、一本筋の通ったメッセージがしっかり集約されている。
新日の有名なプロレスラーが沢山出てくるのも楽しい。あの北村克也さんもいる。
ライバル役がオカダ・カズチカというのもまたニクい。現実とのシンクロ要素もあるじゃないか。
プロレスファンから、プロレスに全然興味ない方まで楽しめる傑作。
愛しのアイリーン
■あらすじ
田舎の42歳ダメ男・宍戸岩男は恋に破れて家を飛び出した。2週間前後に帰ってきた岩男はフィリピン人の妻を連れていた…
これは凄い。
「今どきこんな田舎存在するのか?」と思うほど昔ながらの価値観を維持する田舎が、どこに着地するのかわからないシナリオと一人ひとりがハマりすぎている役者によってエグいほどリアルに描き出される。
僕も似たような田舎育ちだけど面食らった。
娯楽はパチンコとフィリピンパブ。
職場もパチンコとフィリピンパブ。
家に帰ったら口うるさい親。
もうどうしようもねぇ。
元々最悪に近い状況だが、歯車が少し狂っただけで最悪な状況がどこまでも加速していく。
その先のラストシーンでは、
主人公がフィリピンという別世界からアイリーンを連れてきた話だと思わせて、実はアイリーンが別世界を体験した話だったことがわかるという、とんでもない逆転劇が起きる。
そこでタイトル「愛しのアイリーン」が腑に落ちるのが秀逸。
一方で、主人公は元気で若い男(といっても42歳だが)というだけでモテてしまうので、男性にとって田舎は恵まれてるんじゃないかと思ってしまうのが悔しい。
男なら色々な感情を抱いてしまう作品。
マスク
■あらすじ
お人好しで気弱な冴えない銀行員・スタンリーはある日、美女・ティナに一目惚れする。その後散々な目にあうスタンリーだが、偶然拾った木製の仮面つけた途端、超人・マスクへ変身。本性を引き出されたスタンリーのハチャメチャな活躍が始まる。
デビュー当時のキャメロン・ディアスの説得力よ。ひと目で化物級、男の理性崩壊級美女ってことがわかる。
しかもめちゃ露出激しい衣装で踊りまくるからたまらない。
もうこのキャメロン・ディアスだけで必見なのだが、主人公の飼い犬であるマイロちゃんが可愛すぎるのも見どころ。
マイロちゃんが第2の主人公といえるほど活躍する。鳴き声で感情表現するし、マスクもつけちゃう。鍵をくわえて離さない(笑
犬好きが作ったとしか思えない、犬好きも必見の作品となっている。
マイロちゃんはジャックラッセルテリアという犬種らしい。本作でジャックラッセルテリア好きが増えたのは間違いないだろう。
人によって超人化後の性格が全く異なるのが本作の面白いところ。
並の作品なら、元を陰気な奴にして超人化してから急に陽気になることでギャップを演出するだろう。しかし本作の場合、主人公は演じているジムキャリーのイメージ通り、元々陽気な奴。マスクによって素がブーストされている状態になる。
この「内面を過剰に引き出される」という性質が面白い。
マスクをつける前もつけた後も自分。だから感情移入できて爽快なのだ。
僕がマスクをつけたらやっぱり悪いことをやってしまうだろう。
でも主人公・スタンリーはマスクをつけてもただの陽気な奴。マイロちゃんも同様。
だから本作は単純に気持ちよく楽しめる。
Aランク:面白い
アップグレード
■あらすじ
近未来。グレイは謎の組織に襲われ、最愛の妻を失い、全身麻痺の重症を負う。失意の中、AI「STEM」を人体に埋め込む非合法治療の提案を受ける。手術の結果、体を動かせるだけでなく、AI制御に切り替えると超人的な動きが可能になった。さらに、意思を持つ「STEM」はグレイと対話し、最適解を助言する。身体・知能を「アップグレード」したグレイの復讐劇が始まる。
犯人、絶対に許せねぇ!
そう思わせた時点で成功してる。
最初に引き込まれて、そのまま最後まで楽しめた。
AI制御により「アップグレード」された主人公が無双!
テンポ良く復讐劇が続いて退屈しない。
夜を基調にした画作りは低予算のチープさを上手く誤魔化しており、良い雰囲気出てる。
特に秀逸なのはダークなオチ。
・主人公にとって、救われる道はこれしかない。
・犯人は見つけられないのに、主人公はすぐ突き止めて追い回す警官にイラつく
だから、最後にスッキリ。
よくあるSF復讐劇モノだと思って観たら、予想を超えて楽しめる良作。
ただ、ラスボスの不完全燃焼感はある。せめて息使えよ。
ドキュメンタリー映画「アイドル」
■あらすじ
SKE48の舞台裏に迫り、現代のアイドル像を描くドキュメンタリー。
僕はアイドルオタじゃないので、~48グループの何が良いのかわからない。
思ったのは、ルックスや歌唱力だけじゃないアイドル像なんだなと。
ずば抜けて可愛いわけでもない、目や鼻に違和感がある女の子達が、メイク溶けた汗まみれの泥臭い姿を見せる。
90年代は、最強のルックスを持つアイドルが最強だった。
牧瀬里穂、森高千里、宮沢りえ、広末涼子…
とにかく見た目でゴリ押す、その他大勢を一瞬でなぎ倒す。
~48はそうじゃない。
なんというか、部活っぽい。部活を応援する感じなのかもしれない。
僕は、アイドルを連れてその辺歩いて「おいおい、あいつハチャメチャ可愛い女連れてるぜ」ってジロジロ見られたい。
だから部活っぽいのはピンとこない。
ガガーリン 世界を変えた108分
■あらすじ
1961年、人類史上初の有人宇宙飛行を描く。過酷な挑戦の中、ガガーリンは自分の半生を回想する。
偉業を達成した美談でもなく、ソ連を揶揄するブラックな作風でもない。
人類初の偉業を成し遂げる過程とガガーリンの半生を丹念に描く。
それがジワジワ効いて最後につながり、感動を生む。
ガガーリンの性格は温和。一言でいうと良い奴。だから気持ち良く観れる。
気になるのは、
・コロリョフの喋り、宇宙について語る教師、親父の演技など、ちょっと画がクサい
・ガガーリンの奥さん、吹き替えの声が可愛いすぎて浮いてる
この程度。
全体的に見れば、真面目で見応えある作品。
■
9Gに耐えて、冷徹そうな女科学者に「本物の男だわ」と呼ばれるガガーリン。
閉所に数日間閉じこもる、精神の耐久テストも余裕で耐える。
ガガーリンの心体はなんでこんなに強靭なんだろう。うらやましい。
僕なんてちょっと拘束されてただけでもう限界。
動機が激しくなり、全身の力が抜け、嘔吐し、放尿し、気を失って終了だろう。
宇宙の極限状態で「気分は上々」とか言える精神力が欲しいわ。
■地球帰還後について
ガガーリンはソビエトの広告塔となり、激変した環境で徐々に精神が弱っていったらしい。
過酷な精神耐久テストに合格できても、社会生活の環境変化には耐えられないのか…
地球帰還から7年後、MiG-15UTIで飛行中に墜落事故で死亡。享年34歳。
政治的思惑が絡み、別のSu-15が事故を引き起こした、など陰謀論が根強い。
このSu-15にはソ連の英雄的パイロットが乗っていたというから興味深い。英雄を英雄が堕とす、アニメみたいな話だな。
■ガガーリン関係のネタ
・「地球は青かった」
この有名な台詞は、映画には無い。
そもそも原文は「空は非常に暗かった。一方、地球は青みがかっていた」で、「地球は青かった」が浸透してるのは日本だけらしい。
・地球生還後、フルシチョフ(当時のソ連最高指導者)はガガーリンの軍服の生地が硬すぎて勲章をつけることができず、直接手渡した。
ソ連の重工業・軽工業の技術差を揶揄する話。真偽不明。
ハッピー・デス・デイ+ハッピー・デス・デイ2U
■あらすじ
女子大生のツリーは誕生日、殺される1日を何度も繰り返す。殺人犯を見つけ、ループを抜け出す方法を探す中で、自堕落な生き方を見直すようになる。
一言でいうと「アメリカ版、時をかける少女」。
自堕落な大学生活を送っている主人公がタイムリープしながら謎に迫っていく話。
狭い範囲内で起こる小さな出来事。
それを2作かけて、あらゆる方向から味わい尽くすのが面白い。
実は、それらの出来事は全て本筋と因果関係がないオトリとしてばら撒かれている。このハチャメチャさが独特。
少々やりすぎており、体の不調や「2人同時に存在すると~」のくだりは消滅してしまう。
そもそも主人公の死とリープの関係が謎。それに主人公からすると何度も死を体験するループがハードすぎて精神が持たないだろう。
とはいえ本作のハチャメチャなノリにより、多少のムリは観終わった後に思い出すまで気にならない。
2作目は世界観を縦・横へ拡大。
主人公の記憶により研究を圧縮するという「真マジンガーゼロ」みたいなことになる。
前作のちょっとした引っかかりを拾い上げ、広げて消化していくのが楽しい。
「1→2」の順で観るのがオススメ。
1作目は単独で成立しているけど、2は1が前提になる。バックトゥザフューチャーみたいな構成。(作中にパロディあり)
続編「3」があるなら酷使されすぎな主人公・ツリーは交代、と思わせて終盤にやっぱりツリーにループが戻ってきて「ああもう最悪!」って感じになりそう。
アデライン、100年目の恋
■あらすじ
事故&奇跡により年を取らなったアデラインは、29歳の体のまま100歳を超えた。不老の秘密がバレて研究対象にされるのが嫌なので、偽名を使い孤独に時を過ごしている。そんなアデラインの前に魅力的な青年エリスが現れる。秘密のため心を閉ざすアデラインだが、エリスに惹かれる気持ちが次第に強くなっていき…
ハートフルなノリが特徴の作品。
100歳という設定は重々しいけどその設定は軽く処理されており、明るいノリを貫いている。
まず歳をとらなくなった説明が無理やりすぎて笑う。
よく考えれば、100歳なのに普通に恋愛ドラマをやってる時点で変だ。
しかもアデラインが美人すぎて男はみな一目惚れするため、100歳とか全然関係なく男女関係のドラマが始まる。
パーティーに行くとまず男に見られ、その男を見ているところを他の男に見られて声をかけられ、帰ろうとすると最初の男がエレベーターに駆け込んでくるという有り様。
また、アデラインは100年生きたから聡明というわけではなく元々聡明な人。
精神は肉体とシンクロするようで、精神年齢も100歳とは思えない。普通の聡明な恋する29歳。
そもそも、孤独でいたいならなぜ着飾って綺麗にするんだ?と思う。
「アデラインは今でもオシャレしたいし本当は恋愛もしたい普通の女性」ってことを表現しているのだろう。
しかし、こんな美女が着飾って外を出歩いたら「ナンパしてくれ」と言っているようなもんだ。声をかけるなという方がムリな話。
では100歳設定に意味がないかといえばそんなことはなく、ちゃんと面白い仕掛けがある。(以下、ネタバレ)
それがエリスの父。
今でも未練タラタラで、息子の前で妻にブチ切れされてるのが笑う。
しかし親父の気持ちになったらたまらんなこれ。若いとき一目惚れした女がそのままの容姿で現れるなんて。
親父かいい人でよかった。だって一歩間違えたら…
そんな仕掛けもありつつ、重い設定に対してやたらとほんわか系なので観やすい。
ワンちゃんを絡めるのは卑怯やわ~こんなん感動するしかないやん。
心が叫びたがってるんだ。
■あらすじ
幼い頃、自分の言葉により家族がバラバラになったと思った少女は、「卵の妖精」により言葉を発すると腹痛になる呪いをかけられる。それから心も閉ざし高校2年生になる。ある日、クラス劇の委員に選ばれてから事態は動き始める。
まず画が綺麗で良い。
田舎の風景を上手く表現している。夜に浮かび上がる生コン工場とか。
あらゆるひと悶着が全て最後につながり上手く収まる「嘘くさい」「上手くいきすぎ」感はある。
でもそれは、
「言葉にできないことって色々あるよね。言葉にすると痛いけど、気持ちは言った方が良いよね」
ってメッセージを、言葉を封印した少女と極度に狭い世界を舞台にした「寓話」として描いているのだから必然。だから割り切れる。
一方で割り切れないのは、ヒロインが最後に絞り出す本音がリアルすぎてキツいところ。
僕なんぞは「ああ、やっぱり言わない方がいいこともあるよね」って気分になってしまった。
それに、男が本音中の本音を言ってしまうとたぶん大変なことになるだろう。
「君が本音を言ったのだからその気持ちに俺も本音で答えねばなるまい。俺はクラスの女子全員とヤリたい」
とか言ってしまいそうだ。
いや、もちろん作中の男(坂上)はそんなゲスいことは言わない。
坂上はラノベによくいる主人公な感じ。普通の優男だが言うときは言う=モテる。
寓話として理想化された世界とはいえ、脚本家が女性だからか男ツートップ(坂上・田崎)の理想化が激しい気がした。
やはり男は女に理想を求め、男にはリアルを求めてしまうのかもしれない。
好みは分かれそう、かつ僕はあまり好みではないタイプの作品だが、ド直球の青春モノに振り切っているので見応えはあった。
日日是好日
■あらすじ
大学生の典子(黒木華)は武田先生(樹木希林)にお茶を習うが、意味不明な所作にただ戸惑う。理屈っぽくてお茶にあまり乗り気ではなかった典子だが、次第にお茶にハマっていく。一方で、典子には就職・結婚など人生の転機が何度も訪れる。
これは面白かった。
なぜなら、予想を裏切られたから。
「どうせ今どきの女の子がお茶を習った結果、仕事とか恋愛とか色々うまくいく話だろ」
と思って観始めたが、話は思わぬ方向へ転がっていった。
大学生のときにお茶を2年やって、その経験が活きて就職するだけかと思ったら、軽く12年やって32歳になる。
このとき、さっきまで大学生だった黒木華がまさに32歳のやつれた表情になっているのが凄い。
かと思ったら、24年が過ぎて44歳になる。
黒木華は20歳から44歳まで演じているのに違和感が無いのが凄い。黒木華の童顔と演技が為せる技といえる。
主人公は不幸の連続で、お茶の才能が伸びるわけでもなく、状況は何も好転しないまま44歳になる。
むしろ、お茶をやめた多部ちゃんの方が就職・結婚を経て人生を前に進めていく。
結局、大学生のときに悩んでいた就職もできない。
「でも世の中にフリーライターというものができて焦ることは無くなった」
とか言ってるのが泣けるわ。気持ちはわかる。
ようするに、「お茶を習ったら人生うまくいきました」なご都合主義ではない。
これがリアルな人生だ。だから話がすっと入ってくる。
これだけの説明では、「ではお茶とは一体なんだったのか。何の意味があったんだ」って話になる。
僕が本作から感じたのは、
お茶の「形」を固めることで精神・感覚が研ぎ澄まされる。音の違いや季節の機微がわかるハイパー状態になる。
その状態で色んなものを見つめることで見えてくるものがある。
「世の中にはすぐにわからないことがある」
そのわからないことに近づくためにお茶があるのかなと。
お茶は就職活動やお見合いの肩書きで使う特技ではないのだ。
典子には人生の転機が何度も訪れるが、映画内では何も良いことが起きない。悪いことばかり起きる。
一方で、日々変わらぬお茶の所作があり、お茶を通じて世界を見ることで「良いこと・悪いこと」という概念自体が無になっていく。
日々はいつも好日。だから「日日是好日」なんだなと。
え、何を言ってるかわからないって?
頭で考えてはダメ、体で感じなさい。
Bランク:家で観るならまあ
日本沈没 (1973)
■あらすじ
197X年夏、学者の田所は海底を走る亀裂と乱泥流を発見する。内閣の懇談会で田所は「日本がなくなる」可能性を口にするが、学者仲間の失笑を買う。一方、田所の意見を耳を傾けた政財界のドン&首相は、極秘裏に研究チームを立ち上げる。チームが出した結論は「2年以内に、日本列島は海面下に沈没する」。ドン&首相は、全国民国外脱出計画「D-2」を策定。日本沈没が迫る中、必死で日本人を海外避難させる。
「当たり前のように自分の国、領土を持つ日本人がいかに幸せか」
を気づかせるのがメインテーマと見た。
政治家や御用学者のやり取りに「シン・ゴジラ」感があり、SFの古典なんだなーと実感。
東京が「世界一の都市」と言われてるのが、今となっては羨ましい。
日本はもう30年間デフレを続けて、違う意味で沈没しそうなので。
今観ると、思い出補正がある特撮ファン以外は楽しめないかも。
2時間半と尺が長く、話が全然進まない。
長々と異変の兆候を調べる過程は結局、意味がない。こんなもん防ぎようがない。
学者の「勘」で首都圏1000万人避難させるわけにもいかないし。
「復活の日」と同じく、総理側のメインストーリーと関係なく現場で右往左往する主人公が邪魔に感じた。
特に活躍しない。この人の場面で間延びする。丸々いらんやん。
「ええ、ここで終わり?」な終わり方。
当時の映画は今どきと違い、わかりやすいオチを作らない。これを余韻ととるか、消化不良ととるか。
僕は消化不良に感じた。だって2時間半観たのにオチないんだもの。
ザ・サークル
■あらすじ
メイは巨大SNS企業「サークル」に採用され、ワクワクしながら働く。先進的な会社の雰囲気を楽しみながらも少し戸惑うメイは、ある事件をきっかけに自分の24時間をすべて公開する新サービスのモデルに抜擢される。1000万人のフォロワーに注視されながらアイドル的な存在になるメイだが…
ロリコンを殺す女の子、ハーマイオニーでおなじみのエマ・ワトソン主演。
SNS社会がエスカレートして全体主義になる、という分かりやすい話。
SNSへの参加が半強制されるような、現代の気持ち悪い空気を掘り下げている。
ジョブズやイーロンマスクみたいな社長(トムハンクス)が率いる先進的な企業がモチーフ。
社内の描写は「へー世の中の最先端はこんな雰囲気なんだなー」と楽しめる。
社長のプレゼンがいかにもって感じで面白い。
日常会話を交えて面白おかしく話をしつつ、コンセプトを伝える。ジョブズのモノマネみたい。
そんな描写が面白い一方、話に意外性はない。
想像通りなことになっていく。
主人公の心変わりが急すぎるのがついていけなかった。
主人公は会社の空気に違和感を持ち、テクノロジーの拡張にはむしろ反対の立場だったのに、ある一件から180°方向転換。SNSの象徴みたいになる。
たぶん九死に一生を得る体験をしたところに社長の言葉巧みな誘導が刺さった結果だろう。
でも描写不足だと思う。
そもそも、そんな体験をするハメになったのは会社のストレスが原因だし。余計に反対の立場に回るような気もする。
こうしてブレーキを失った主人公は、24時間プライベートの全てを晒すSNSによる監視対象になり「トゥルーマンショー」みたいになっていく。
そのうち自分だけでなく、自分と関わる家族や友人にも影響が出はじめて…
最後はテクノロジーを否定するどころか、自然に任せてより拡張する方向に着地。
「SNSは危険だから気をつけよう」みたいな、退屈なメッセージじゃないのは良かった。
たしかに進化を知ってしまった以上、今さら後戻りはできない。
「ツールはあくまでもツール。使うのは自分。だから自分もテクノロジーに応じた進化をしないとな。」
そんな風に感じた。
ジャッジ!
■あらすじ
広告マンの太田は、落ちこぼれだがバカ正直で広告への愛は誰にも負けない。会社の都合により、太田は各国の超一流クリエイターが集結する国際広告祭にむりやり参加させられる。ミッションを失敗するとクビになる大ピンチ。業界ならではの策略とかけひきが渦巻くなか、太田の起死回生の逆転劇が始まる。
華やかに見える広告業界だが、裏側はどこの世界も同じでやはりロクなもんじゃないことがわかる。
使えなければゴミのように扱われ、賞レースの裏側は広告の出来と関係ない駆け引きばかり。
主人公・太田はバカ正直で駆け引きができるタイプではなく、優秀でもないので日本ではコケにされている。
序盤の合コンでは滑りまくり、主人公が空気が読めない人間である伏線も張られている。
そんな太田だが、世界一の広告賞を決める選考会メンバーに入るとなぜかバカ受け。
特に何を努力するわけでもなく仕方なく頑張っているだけなのに、バカな立ち回りが一周まわって「あいつがしゃべると何かとんでもないアイデアが出る」みたいなキレ者だと思われる。
世界にはいろんな文化があるし、国や業界によって常識も価値基準も変わる。だから日本でうまくいかないからといって無能なわけじゃない。
そんなエールが受け取れた。
ただ、気になるのは太田がやたらとモテること。
元カノが美人、北川景子も美人、鈴木京香ともいい感じ。
まだ底辺を這い回る様子を描いている途中なのに、北川景子を誘って2人で海外に行く時点で相当うらやましい。
男は仕事より顔と性格が大事というエールも含まれているのかもしれない。
コーヒーが冷めないうちに
■あらすじ
とある喫茶店「フニクリフニクラ」の、ある席に座ると好きな時間に戻ることができる。しかし、過去に戻っても現実は変わらない。それでも、噂を聞いた客が今日もこの喫茶店に訪れる。
波瑠が美人すぎる。どんだけ鼻高いんだよ。
その波瑠と張り合う石田ゆり子も化物だ。
前半は数本のエピソードが独立するオムニバス形式でタイムリープのシステムを説明。
後半は主役・有村架純がシステムの伏線を回収するという流れ。
シナリオはひねりがあり、練られている。
でも都合良すぎる展開が過ぎる気がして、途中でどうでも良くなってしまった。
肝心の後半に移った頃にはすでに心が離れており、感動もできない。
・幽霊と話ができる
・タイムリープできる
この2つは盛りすぎじゃないかと。どちらか片方にしてほしい。
しかも後半は未来まで絡んできて何でもアリ。ついていけない。
感動を生む仕掛けが鼻につく。あざとい。
やりたいことから逆算された設定にムリがある。
そんな印象を受けた。
とはいえ、映像がこってりとした質感で美しく、こだわって撮っているのがわかる。
波瑠ちゃんの造形がいかに美しいかを知るには最適な作品だろう。
ある少年の告白
■あらすじ
アメリカの田舎町。牧師の父を持つジャレッドは同性愛者の矯正セラピーに参加する。そこで行われているプログラムは、自分を偽り神に許しを請う異様なものだった。
LGBTの矯正施設で理不尽な仕打ちを受ける話。
実話を元にした話らしい。
特に面白い展開があるわけでもないが、アメリカのLGBTをめぐる事情をリアルに描写している。
僕はLGBTではないけど子供を作る気がない。よって他人事とは言い切れない。
「親が孫の顔を見れない」という意味では状況にあまり差がないなーなんて思いながら観た。
LGBTの人たちは「将来のため」ということで隔離施設に入り、無理やり趣味嗜好を変えようとする。
しかしプログラムには根拠がなく、指導者は無能。
そのやり方はまるで軍隊。
「何を行っているか親に話してはいけない」というルールがまず異様。
行われていることは、みんなの前で懺悔させられたり、教本で殴られたり。まるで「フルメタル・ジャケット」のような理不尽。実際、微笑みデブみたいな人が現れる。
そんなやり方では当然、まるで効果がない。
そもそも、LGBTの矯正なんてことが可能なのかどうかが怪しい。
結果、器用な者は「矯正できたフリ」をして施設を出ていき、微笑みデブのように器用じゃない人が残されてしまう。
親は金を払い、子供は心に傷を負い、指導者は満足し、施設は儲かるというロクでもない状況がある。
「~教」が支配的だと、理屈を説明できないときに都合よく「神」を持ち出してくるから厄介だと思った。
LGBTだと「神に許しを請え」「悪魔に取り憑かれている」とか言われてしまう。
このように神や悪魔を持ち出してくるのは日本にはあまり無い事情だが、大人が頭カタいことを言ってくるのはどこの国も同じだろう。
エンディング前、主人公は施設の出来事を本にして作家デビューする。
このとき、ただ抑圧されていた主人公の立場がたった4年で親父より上になっているのが印象的。
つまり題材はLGBTだが、本質はもっと普遍的。
「今は思春期でツラいかもしれないけど、大人になれば一人で生きていく力と自由が手に入るからさっさと親離れしよう」
そんなメッセージが込められている気がした。
ブラックフット
■あらすじ
熟練アウトドア気取りの彼氏と、アウトドアに乗り気ではない彼女が大自然へキャンプに行く。しかしそこには怪しい男や熊がいた。
熊はもちろんだが、まず途中に出てくる挙動不審男が恐すぎる。
別れ際、相手に「これに答えたら怒っちゃうかもしれないよ」的な質問をしつこく浴びせるのがもう変態。
熊より、ってことはさすがに無いけど人間も十分恐いてってことがわかる。
カップルは、途中まで熊よりアイツが来ることに対してビビっている。
たしかにアイツがいきなり斧振り回してきたら熊並にヤバい。
アイツが目をつけたのもうなずけるほど彼女は美人だ。
山中で夫婦が裸になり、水に飛び込むシーンがある。
このとき後ろ姿だけ拝める女の人の体がエグいほど良い筋肉してる。海外の「良い体」ってこの感じよね。
1時間すぎてようやく熊が現れると、武器も逃げ場も無いのであっさりいかれてしまう。
相手は巨大でもない普通の熊だが、熊と戦うなんてバカげていることがわかる。
つまり、鷹村さんの強さはバカげている。
熊のアクションはカット割りで誤魔化しており特に何が凄いわけでもない。
しかし異様に淡々としているのがめちゃ恐い。
歯や牙がかすっただけで大ダメージ。1回噛まれて、それを応急処置しているときにまたやられて同じ部位噛まれるのがもうしんどい。
その後、腹わたからリアルに食われてもう見てらんない。
この彼氏を山対策を怠ったバカだと思ってしまったら、自分も「俺はこんなバカじゃないから大丈夫」と過信しているバカ男の一員になってしまうだろう。
とはいえ、全編どのシーンを観ても女の方が有能なのがツラいところ。
喧嘩のときボロカス言われてかわいそう。「何をやってもダメ」まで言われてしまう。
彼氏は無残に死んでしまうが、彼女に悲しむ暇がないため全く振り返ってもらえない。
それまでのいきさつと合わせて、この感じでは彼女が病院に運ばれて現実を受け止めた後、彼氏はすぐ忘れられてしまいそうだ。
ようするに、こういう場所に行くなら男はビビりなぐらいが調度いいって話。
変人や熊はどこに出るかわからない。
あと日本版はジャケット詐偽みたいになっている。
本作にこんなシーンは無い。
女子ーズ
■あらすじ
名字に色が入っているというだけの理由で集められた5人は、邪悪な怪人に立ち向かう「女子ーズ」となる。5人は各々の仕事を抱えながらなんとか時間を作って怪人と戦う。
AVみたいなタイトル&パッケージだが、よく見ると女優が豪華だ。
桐谷美玲、高畑充希、有村架純、山本美月、藤井美菜。
間違いない、これはAVではない。
全編が古くさいコント調。
この緩いギャグと緩いノリは家で観るならちょうど良い。映画館で見たらたぶんツラい。
「桐谷美玲の彼氏っぽい男がメンタリストdaigoに似てるなー」と思っていたところ、それを佐藤二朗がちゃんと突っ込んでくれたのは秀逸だった。
島本和彦デザインのバカみたいなコスチュームにより、メンバーのスタイルの良さが際立っている。
桐谷美玲は細すぎて棒みたい。
この豪華メンバーが緩いノリをやっているから様になる。
「うんこ」を連呼する桐谷美玲は他では観れないかもしれない。
桐谷美玲の嘘くさい演技はこんな作品がちょうどハマる。
高畑充希、有村架純という演技できる2人を脇に置いたのも成功しており、主役を上手く引き立てている。
中盤からシリアスになりかけるが、ちゃんとコミカルに戻した上でさらに畳み掛けてくれたのも良かった。
ここでシリアスにしたら全体が中途半端になり、三池崇史の実写化映画みたいなつまんない作品になるだろう。
聖☆おにいさん
■あらすじ
イエスとブッダは、東京・立川でアパートをシェアして下界でのバカンスを満喫していた。2人は普通の日常を過ごしているが、たまに神パワーを発揮して奇跡を起こしてしまう。
キリスト教のイエスと仏教のブッダが、東京・立川で暮らしているという軽いテイストのギャグアニメ。
大事件が起きることはないが、2人にとっては色々な出来事・事件が起きている。
そのなにげない出来事の前で2人がたじろぎ、ときに神パワーを発揮し、お互いがお互いの奇跡に戸惑う。
そういった細かい感情描写が見どころ。
どちらかというとブッダが天然キャラで、イエスが突っ込み役。
イエスはイケメン扱いされるのに、ブッダは特徴的な見た目からイジられキャラになってしまうのが笑う。
宗教を題材にした小ネタが面白く、2人のほのぼの系やりとりで癒やされる作品だ。
しかし、本作がそれなりに面白く仕上がっているのは完全に原作のおかげだと思う。(僕は原作未読)
というのも、本作には映画だからできる表現、映画にした意味を感じない。
まず、1年を通した日常を描いているのに、季節感が薄い。
そのため最後の「1年間色々あったよね」感が薄く、ラストの年末年始でイマイチ盛り上がらない。
最後の「1年間色々あったよね」感で一本筋を通さないと短編集みたいになるので、そもそも映画にする意味があったのか?と疑問に思ってしまう。
(週1で30分枠とかならめちゃ楽しいと思う)
一番ダメなのは子供&夏祭り。ここはマジでいらん。
子供はこんなに良心的な外国人2人にひたすら嫌がらせをする。
2人がなぜか極道を引き連れていることが発覚した後も怯まずつけ狙う。
こんなタチの悪い軽犯罪を観せられても不快感が残るだけなので、本作の特徴である「癒やし」が台無しになる。
僕は子供のこいういう無神経なところが嫌いなんだ、ってことを思い出した。
夏祭りでは完全に主役が子供へ交代し、もはや謎の外国人に子供が立ち向かう話と化した。
子供を通じて2人の良さを引き出すはずが、2人が子供の引き立て役に回っており本末転倒。
見ず知らずの外国人をデコピンして「大ちゃんはさ、やっぱりヒーローだよ!」ってどういうことやねん。
ブッダの白毫(びゃくごう)を2回デコピンしたこの餓鬼は間違いなく地獄道に落ちるだろう。
てか極道を見て「ボタン星人の手下?」はねーだろ。
いくら子供でもわかるだろ、そっち系のヤバい感じが。
子供のどーでもいいシーンを入れるヒマがあるなら、子供を丸々カットしてネタを詰めてほしかった。
「2大宗教あるある」ネタの濃さ・密度が足りない。もっと欲しい。
足りないから、原作未読なのに原作に負けてると思ってしまう。
「観客が引くかもしれない」とか宗教団体にビビらずもっとガンガン来てくれ!
サカサマのパテマ
■あらすじ
少年・エイジはサカサマの少女・パテマに出会う。空に落ちそうなパテマを助けようとエイジが彼女の手を握ると二人は空へ飛び出してしまう。治安警察に追われる2人はサカサマに抱き合い、助け合いながら、封じられた世界の謎に迫っていく。
今どき珍しいほどわかりやすいボーイミーツガール。
よって大きくハズれることは無いけど既視感が強い。
ラピュタの「空から降ってくる」の逆をいく「空に落ちていく」少女。
空に憧れる少年。これでもかというほどわかりやすい体制側のゲスな敵。
このように、やってることが完全にラピュタなので、序盤で「ああ、ラピュタの感じね」と興味が薄れてしまった。
まず、ボーイミーツガールなのにパテマが魅力的なヒロインに見えないのが痛い。
容姿・性格ともに特徴がない。あるいは描写不足で掘り下げが足りないので魅力が出ていない。
目新しさが無く既視感が強いのは、最大の特徴であるサカサマ設定があまり活きていないため。
極端な話、サカサマじゃ無くても良いように思えてしまう。
「パテマは押し込められた地下世界の住人。地下人は地上人に奴隷として扱われて迫害されている」
に置き換えても成立する。
もちろんそれではマンネリで地味だからサカサマにしているのだが、それは見せ方の都合であって世界観・設定が深くなっているわけではない。
サカサマで重力反転したお互いを助け合う仕掛けは、新鮮ではあるけど特に面白くはない。ありえない状態なので感情移入の邪魔をしている感もある。
そのため、見せ方の面でもイマイチ。
上記の物語・仕掛けの難点以前に、僕はサカサマで抱き合っている状態がエロいのが気になってしまう。その体位はダメだろうと。
4層の世界という、ちゃんとやるならアニメ2クール24話ぐらい欲しい話なので、そもそも映画1本で描くのは至難の業といえる。
映画化すると決めた以上、ラピュタもどきになるのは仕方ない。
セガサターンの名作「AZEL」みたいな民族調のエンディング曲は良かった。
この曲だけで泣きそうになる。「曲>本編」ぐらい良い。
造語っぽいので何を言ってるのかわからないけど、字幕を見ると本作のことを歌っているのがロマン感じるわ。
ドラゴンボールZ 神と神
■あらすじ
魔人ブウとの戦いから数年後、破壊神・ビルスが眠りから目覚めた。強すぎて戦う相手がいないビルスは退屈しており、夢で見た自分と互角に戦える「超サイヤ人ゴッド」探しを始める。悟空は腕試しにビルスに戦いを挑むが、次元の違う強さで軽く倒されてしまう。ビルスの次の目的地は地球。超サイヤ人ゴッドがいなければ地球が破壊されてしまう。
公開当時の期待感は凄かった。ようやく本物のドラゴボール続編が観れるとワクワクしたものだ。
実際、本作は期待を裏切らない仕上がり。
まずパワー任せの超サイヤ人3悟空をビルス様がこれ以上ないほど軽く倒すことで、異質な強さが上手く描写できている。
「コイツはヤバい、パワーとかじゃなくて次元が違う」って印象を受ける。
地球を守ることより自分の欲望を優先する、悟空のポンコツ戦闘狂な性格が強調されているのも良い。
悟空は元々、正義の味方じゃないし分別のある大人でもない。ひたすら真っ直ぐ強さを追い求めるのが見ていて楽しいキャラ。
フリーザ編以降は悟空は地球の命運や家族など色々と背負うことになり、ポンコツな性格ではいられなくなったからセル・ブウ編は悟空の立ち回りが迷走していたわけで。
本作では悟空の内面的成長をリセットして原点に戻した。
これは本作の続編にあたるTVアニメ「ドラゴボール超」で、長いストーリー展開を作る上で上手くいったといえる。
お気楽ムードは賛否の分かれるところだが、この先長く展開するにはこれしかないだろう。
「強い奴出てくる→世界の危機→悟空達がシリアスに頑張る」の繰り返しではマンネリが避けられない。ドラゴボールZの映画や、GTを観ればわかる。
実はビルス様、本作では相当遊んでる。
ビルス様には超サイヤ人ゴット超サイヤ人(SSGブルー)でも「身勝手の極意(兆)」悟空でも勝てないのだから、超サイヤ人ゴットじゃまるで話にならない。
実際、勝てる気がしないまま映画が終わる。
この「勝てないまま終わる」というラストは新しい。今後の展開に期待が膨らむので、ドラゴボール超の導入として成功している。
本作を観ただけではビルス様よりウィス様の方が強いことがまだ曖昧なのもロマンがある。
上には上がいるかもしれない。そんな予感がワクワクする。
とはいえTV版で天使、大神官、全王様なんかが出てくるとインフレが止まらなくて萎えるから困ったもんだ。
このようにストーリーは成功している一方、作画はイマイチ。
CGは綺麗だけど肝心のキャラが安定しない。
界王星で悟空が超サイヤ人になるときぐらいもっとちゃんと描けなかったのかと。トップのアニメーターをここに使ってくれ。
これでもTV版に比べれば神作画に見える。
TV版は本当に酷い。たしか、ベジータの指が6本になったり手が左右反転する。
作画はどう考えても昔の方がレベルが高い。それは最近、ドラゴボールZの映画を観て痛感した。
ひと目で「カッコいい」と憧れを感じるほどの神作画。
昔は動きが少なくて止め絵が多い、尺が短い、とか色んな要因があるとは思うけど。
今の作画しか知らない方はぜひ「とびっきりの最強対最強」あたりから観てほしい。悟空はもちろん、最終形態クウラのあまりのカッコよさにビビるから。
作画は「ドラゴンボール超 ブロリー」でようやく旧作の表現力まで上げてきた感じ。だから超ブロリーはひたすら戦ってるだけなのに面白い。
というわけで、日本のアニメーターにもっと金を回してくれ。
ハイキック・エンジェルス
■あらすじ
アクション映画部の女子高生5人は廃校で映画撮影を始める。撮影も大詰めを迎えたとき、誰もいるはずのない廃校に謎の集団が現れ、廃校を封鎖してしまう。5人は100人の相手に戦いを挑む。
「どーせ女の子がハイキックしてパンチラしまくるんだろ」
と思ったらその通りだった。期待を裏切らない。
アクション映画を撮りにきたのに、普通のパンツを履いているという非現実。
戦闘狂のポンコツという地球育ちのサイヤ人のような性格の主人公を筆頭に、みんなパンチラを気にせずハイキックしまくる。
その蹴り技中心のアクションは想像の2,5倍キレキレ。
蹴りの受けあいなんて経験者じゃないと絶対さまにならないだろう。「ベシィ!」って重そうな良い音してるわ。
本格アクション&パンチラの一点豪華主義であり、登場人物は主役5人と敵だけという低予算丸出し仕様。
「女子高生が廃校にやってくる」という、もはや女子高生である必要性をかなぐり捨てた設定なので他の生徒がいない。
あまりの低予算ぶりに「カメラを止めるな」を思い出した。
エンディングのスタッフロールにはカメ止めのネタばらしに近い面白さがある。
このネタバレカメラで客観的に観ても、やはり凄まじいアクションをしているのがわかる。
女の子の可愛さは期待を少し下回ってきた。
完全に僕の趣味嗜好だが、主人公・私服・縦笛の3人で中の上。他はそれより数段落ちる。
でもナチュラルメイクで「どこにでもいる女子高生」なリアリティはある。
(僕の趣味嗜好は偏っているので外見の評価はあまり気にしないでほしい)
演技力は予想をはるかに下回ってきた。
演技に問題のある作品がよく「学芸会」と評されるが、本当の学芸会とは本作のことだ。例えではないリアル学芸会が観れる。
設定のぶん投げ方は想像を超えてきた。これでもかというほどテキトー。
主人公達は「普段こんな生活してて、家庭はこんな感じで~」といったキャラ背景が無い。薄いとかじゃなくて「無い」。
敵組織も全てが謎に包まれている。敵女ボスが「こんなところに何しにきたのかしら」と言うが、それはこっちの台詞だ。
見ているこっちが恥ずかしくなる低予算と演技力。一方でアクションは、三池崇史が作るような金をかけた邦画より見応えがある。
この粗さ、アンバランスなチグハグさが独特の魅力になっている。
僕は楽しめたけど、ハマらない人は全くハマらないだろう。
東京喰種 トーキョーグール
■あらすじ
大学生・カネキは人を喰らう怪人・喰種の臓器を移植されたことで半喰種となる。カネキは他の喰種と交流して、喰種も人間と同じように家族や友人がいることを知る。一方、喰種を駆逐するエージェント2人が現れ、人間と喰種の熾烈な戦いが始まる。カネキは喰種と自分の存在に葛藤を抱きながら戦いに身を投じる。
原作は読んだことないけど、とりあえず観た。
今更だけど「コードヴェイン」のビジュアルってこれのパクりよね。
SF漫画の実写化としては珍しく良く出来てる。普通に面白い。
説明的な部分を省いて尺を詰めたのが良かったのだと思う。
グールの持つ超人的回復力や覚醒する仕組み、エージェントの背景・過去、変な武器。
この辺はほとんど説明がないけど「まあそんな感じなんだろうな」とわかる。
役者が良いし、CGからはグールの強さとキモさが伝わる。
冒頭、蒼井優に襲われるシーンの引きが抜群。「おお、これは意外と良く出来てるぞ」と最初に安心できた。
清水富美加は「暗黒女子」でも良かったし、やはり華がある女優だ。色々あって芸能界から去ったのが惜しい。
唯一気になったのは白髪のエージェント(大泉学)。
合わない役を頑張って演じた結果、存在が浮いちゃってコントみたいになっている。
あと「手足もがれても戦え。それがプロというものだよ」と偉そうに言ったくせに、子供が覚醒する可能性を忘れるのは抜けすぎだろ。
純平、考え直せ
■あらすじ
歌舞伎町の若手ヤクザ・純平は、幹部のタマをとる鉄砲玉を命じられる。一人前の男になりたい純平はやる気。決行日の3日前、偶然出会った加奈と一夜を共にし、惹かれ合う2人は楽しい3日間を過ごす。決行日、純平は考え直すのだろうか。
SNSならではの薄―いつながりを背景にしており、濃い人間関係は一切ない。
主役の2人すら出会って3日、2人ともちょっとバカなのでノリで付き合っている。
ヤクザの絆も描かれていなければ、主人公にヤクザらしさも男らしさも感じない。
そんな嘘くさくて、心に何も入ってこない軽薄な感じが妙に心地よい。
やっぱり僕は深い人間関係を求めていないのかもしれない。今どきはそういう人が多いから本作の評価がまあまあ高いのかもしれない。
柳ゆり菜のヌードシーンが最大の見どころ。
本作を観るまでこの方知らなかった。調べたところ、2015年に週刊プレイボーイ初代グラビアクイーンの座に輝いたらしい。
本作を観た後に居ても立っても居られず検索したグラビア画像より、本作の動いているゆりちゃんの方が可愛く見える。好みの問題だけど。
その素晴らしい肉体美のせいか、綺麗すぎてヌードシーンがエロく見えないから不思議。
綱引いちゃった!
■あらすじ
大分市役所の職員・西川千晶は、市のPRのため「女子綱引きチーム」リーダーを任される。
メンバー集めを始めたとき、ちょうど給食センター廃止により職員があふれていた。千晶は、給食センター職員を綱引きメンバーにし、全国大会出場したら給食センター廃止を取り消すよう市長と約束する。
「シコふんじゃった。」を思い出す「綱引いちゃった!」。
タイトルが気になりすぎて観た。
それぞれ家庭の事情を抱えた陽気で奔放なおばさん達を、井上真央が懸命に引っ張る物語。
人間関係のゴタゴタがメインで、競技としての綱引きの掘り下げは甘い。
これは尺的にどちらかを選ぶしかなく、ウケを狙うなら綱引きを掘り下げている場合ではないので仕方ないだろう。
ただ、終わり方がぶつ切りなのは誰がどう観てもダメ。
今まで丁寧に立ててきたフラグが全て綺麗に流れてしまった。これではスッキリしない。
渡辺直美、玉山鉄ニのくだりを全カットすれば大会での活躍が描けたかもしれない。
そんなことより引っかかるのは、おばさん達が給食センター存続を訴える理由。
「自分達の職を維持したい」
ただそれだけの理由で存続を訴えているため同意できない。
センター廃止後は食品メーカーが引き継ぐのだが、それで「食のクオリティが下がる」という根拠がないし、その点について全く触れられていない。
だから市長の「市民のために豊後食品を誘致した。たった7人の生活と2000の雇用、どちらが大事か子供にもわかる」という主張が説得力を持ってくる。僕は市長に賛同してしまった。
また、おばさん達の性格・生活がだらしないので「てめぇらにくれてやる職はねぇ!」とイラ立つ。
自分の思い出と照らし合わせても、給食センターなんぞ存続させる意味はあるのか?と疑問に思う。
僕の小学校・中学校では、給食は学校で作るのではなく給食センターから運ばれくる形式だった。
その内容たるや酷いもので、塊として楽しめる豚肉が出るのは一ヶ月に2回だけ。化学薬品を大量投入されたおかずと白米はまるで家畜の餌のようでクソまずい。その上、飲み物は牛乳なので、一番楽しみなのは普通のパンだった。パン以外はほとんど残した。平気で食ってる同級生達が「よくこんなもん食えるな」と不思議だった。
そして僕は今でも、もっとまともな昼飯なら身長が5cm伸びたのではないかと給食を恨んでいる。
そんな思い出と、おばさん達の「自分達の職を維持したい」という1人よがりな動機が重なり、主人公達を応援する気になれなかった。
なので、「食品メーカーが出す給食が酷い。私達の作る給食の方がクオリティが高い。自分達の職だけでなく子供達のために頑張る」みたいな描写がほしかった。
セブン・シスターズ
■あらすじ
世界的な食糧不足により、厳格な一人っ子政策が敷かれた近未来。二人目以降の子供は資源に余裕が出るまで冷凍保存される。そんな状況の中、ある七つ子姉妹は各曜日の名前をつけ、各自が週1日ずつ外出して1人を演じることで30歳まで生き延びてきた。しかしある日、「月曜」が失踪したことで日常は狂い始める。
ディストピアな世界観で繰り広げられる絶体絶命の状況。
主人公(ノオミ・ラパス)の1人7役、顔をドロドロにしながらあらゆることをこなす頑張りが光る。
「7人もいるからええやろ」ってなノリで次々と散っていくのが凄い。
ただ、この展開はテンポが良い反面、処理が雑で1人1人のキャラが立っていないのが難点。
7人の性格は「リーダー、天才、バカ、ヤンチャ」系ぐらいの差しか読み取れない。
なので、4人姉妹ぐらいに減らした方が面白くできたかも。
話自体はめちゃくちゃなのでマジメに観ると引っかかる。寓話、おとぎ話として楽しんだ方が良いかと。
逃れた人は問答無用で銃殺って厳しすぎる。
「今まで飯食った分を強制労働で返す」ぐらいにしてくれ。この任務にあたる特殊部隊に使う税金、食料こそムダだ。
主人公が30歳ってことはこんな政策をもう30年以上やっている。
それで実態がバレないのはオカシイだろ。今までやってきたことを振り返ると暴動どころじゃ収まらない。
人権意識の高い欧州連合でこんなことできるかね。
舞台がスターリン政権下のソ連や、中国が支配した世界ならこの設定も腑に落ちるが。
実際のところ、先進国は移民受け入れで大変なことになるのが予測できるので、移民の子供を冷凍するってことならリアルかもしれない。
親父の作戦が、ことごとく常軌を逸した発想なのも引っかかる。
7人を週7日で分けたり、1人が怪我したら全員に同じ怪我をさせたり。
普通はそう考えないだろうと。
曜日で分けると情報がバラバラになるからかえってややこしい。
学校はコイツ、習い事はコイツ、男の相手はコイツ、みたいな役割分担にした方が良くないか?
1人が怪我をしたら、その怪我を隠そうとするのが普通だろう。同じ怪我を他6人に再現する方が難易度高そう。
「それほどまでして必死で生きる必要がある世界」とするなら、世界全体の雰囲気に切迫感が足りない。
7人も備えが足りなさすぎるし、性格違いすぎてこのチームワークで乗り切るのはムリ。せめて髪型を合わせる努力ぐらいするべきじゃないのか。命がかかってるんだから。
そもそも、なんで7人も生んじゃったのよ。計画性よ。
あと、吹き替えだと滑稽なことになるので注意。
「日曜ぉー!」「金曜ぉー金曜ぉー!」
曜日は話に活かされていないのでわかりやすくする意味はない。名前はフライとかサンディーにした方が良かっただろう。
Cランク:家で観てもイマイチ
地下鉄(メトロ)に乗って
■あらすじ
父親が倒れたという知らせを受けた営業マン・長谷部真次。兄が事故死しても冷淡だった父に反発してすぐに家を出た真次は、知らせを受けても特に焦ることもなく地下鉄で移動していた。真次は地下鉄のホームで偶然、高校時代の恩師と再会する。気がついたときには周りから人が消え、出口の先は昭和39年の東京だった。そこに突然、若き日の兄が姿を現す。
メトロに乗ってトンネルか何かを抜けると時代が変わる話かと思ったら全然違った。
むしろメトロの方から食い気味に干渉してくる。
自分の意思とは関係なく急に都合よく、ちょうど良い時間にタイムスリップを繰り返す。
その都合良すぎる設定は別にいい。そういう話だとして割り切る。
でも映像作品として説得力が無いのはダメだ。事後すぐにメトロ行きとか笑ってしまう。
大沢たかおの違和感が凄い。
マジでただのボンクラにしか見えん。
満州に行く前の若者役だけがハマっている。
満州で戦う姿は、どう見ても命を懸けて戦うそれではない。てかあんな孤立無援の状況からどうやって助かったんだ?
物語の謎解き・クライマックスにあたる、終盤の4人集合するシーンが特に不自然。
シナリオのパズルがハマっているはずなのに、映像を見るとバラバラという不思議な現象が起きている。
何がダメなのかと問われたら、撮影、演出、役者がそれぞれ全てダメと言うしかない。
4人の絡みが不自然すぎて安い演劇のように見える。
堤真一が急に変なこと言い出すし、それを受けた大沢たかおのリアクションも変。岡本綾はまた別の理由で自分の世界に入ってるし。
大沢たかおは息子が死んでへコんだ直後なのに、美智子の話題でウキウキしだすのもおかしい。どんな心変わりだ。
最後もオカシイだろ。なんでそうなる。
お前が堤真一の前から去れば良いだけの話だろ。
大沢たかおの気持ちを考えろよ。息子をなくして、行き場もないから愛人の元に行ったらよくわかんない女のせいで愛人をお腹の子供もろとも失って、今日一日散々だ。
しかも改変後が正史になるのかよ。
結局、腹違いの妹と不倫してたってこと?
とんでもねぇ話じゃねーか!
総じて、突っ込みどころ満載すぎて冷めてしまった。
でも感じることはあった。
それは「そりゃこんな時代じゃまともな人間は生きていけないよな」ってこと。
親父には親父の、時代には時代のリアリティがある。
だから今の価値観で一方的に上から目線で過去を断罪しちゃいかんということだな。
凶悪
■あらすじ
実際に起きた凶悪事件を元に、獄中の死刑囚が告発した殺人事件の真相を週刊誌編集部が暴き、首謀者逮捕に至るまでを描く。
うーん、結局何がいいたいのかわからなかった。
ただ事件を追うだけのドキュメンタリーで終わっている。映画として面白いかというと、面白くない。
全体を通して考えると、
「金が発生する場所がある以上、この犯人らが死んでも次の凶悪犯がでてくる。社会自体が凶悪を抱えている。凶悪な世界にめり込み、足を踏み入れることを楽しんでいる自分自身も凶悪を抱えている。」
たぶん、そんなことを伝えているのだろう。
しかし、主人公や僕自身が凶悪にのめり込む実感がいまいち湧かなかった。
全体的にどうも嘘臭いため、作り物を眺めている感じ。
やっていることは胸くそ悪い割になんとも思わない。
暴力シーンなら「スマグラー」の方がよっぽどキツかった。
不快すぎて二度と観たくないが、Sっ気を楽しむ感覚は多少味わえる。
「凶悪にのめり込む。楽しんでいる」実感が主人公とシンクロすれば、本作を貫くテーマにつながったはず。
つまり、本作のテーマを伝えるならスマグラー超えが必要になってくる。
そんな映画は誰も観たくない(僕も観たくない)からあえて嘘臭く作っている面があるのだと思う。
だから、そもそも映画にするのが無理筋なのではないかと。
主人公のキャラが全く立っていないのも、凶悪にのめり込む実感が薄い要因。
主人公は観客の写し鏡・シンクロ先なのに、そのキャラが宙ぶらりん状態。
まず山田孝之が週刊誌記者に見えない。
戦場カメラマンのような雰囲気をまとっており、眼がギンギンに決まっている。
そんな山田孝之からは人物背景を読み取ることができない。
どんな経歴なのか、優秀なのか、何がしたい人なのか、何で奥さんと結婚したのか、普段どんな感じで何が趣味で…
何もわからない。
こんな空白みたいな人にはシンクロできない。
話をまとめると、
・胸くそ描写が甘い
・主人公のキャラが立っていない
により作品のテーマがボケており、結局何がいいたいのかわからない。中途半端な作品。
ドキュメンタリー感覚で、あまり期待せずに観るのが良いだろう。
役がハマりすぎの悪人2人は見応えがあるし、現代社会は凶悪な世界と隣合わせであり僕のような底辺層は一歩踏み外せばすぐそちらの世界に入ってしまうことがわかる。
アンダルシア 女神の報復
■あらすじ
スペイン北部の小国で日本人投資家の遺体が発見される。調査にあたる外交官・黒田が出会ったのは、遺体の第一発見の女性と、事件を担当するインターポール捜査官。2人はそれぞれ秘密を抱えていた…
「外交官・黒田康作」シリーズで、映画「アマルフィ」の続編にあたるらしい。
「主役・トムクルーズなエージェント物を日本が作ったらこうなる」
って感じの作品。
あふれ出る、海外ロケ頑張りました感。外国人エキストラ感。
頑張ってる感は伝わるけど、頑張りが目的化しているためどのシーンも効果的ではない。
外ロケのアクションシーンと、狭い部屋のやり取りの両極端で、全体的になんだかスケールが小さく感じる。
しかもエキストラ以外でまともに外国語を話してるのは黒木メイサだけ。
結果、普通の凡庸な邦画に仕上がっている。
慣れない場所を舞台にしているせいか、メインキャストの演技がクサいのも気になる。
主役・織田裕二は本作だけでは全く魅力が伝わらない。
どの辺が魅力的な人なのかわからない。わかるのは黒木メイサの誘惑に負けたスケベ男ってことだけ。
てか外交官って、現地の大使館で贅沢に暮らしつつ何かしらの交渉をする人でしょ。
さらに極端な偏見を込めて言うと、出世のことしか頭にないためいつも日本の足を引っ張ってきた無能集団でしょ。
それがなんで凄腕エージェントみたいになってんの。
伊藤英明の演技は相変わらず。俳優としてキャリアを積んでも変わらない、人物背景空っぽ感。
こんな棒読み、フランス・英語下手、浮浪者みたいなインターポールがいてたまるか。「たまんねーな」「ユアオーケー?」
ようするに、洋画の真似事に見えて滑稽なので「やっぱトムクルーズ観よー」って気分になる。
洋画の真似事をしても予算・技術・俳優などあらゆる面で映画業界のレベル差が目立つ。「シン・ゴジラ」みたいな日本だからできる表現・工夫がほしい。
ライアーゲーム REBORN -再生-
■あらすじ
ファイナルステージから2年後。ライアーゲーム事務局は、前ゲームの優勝者・秋山深一を新たなるゲームに誘うため、ある少女を強制的にゲームに参加させる。
「ザ・ファイナルステージ」の後、再び開催されたライアーゲーム。
前科者の秋山さんは、経歴にうるさそうな日本の大学(帝都大=東大に相当)でなぜか大学教授になっている。
ファイナルステージ後、ノーベル賞クラスの実績を積んだのだろう。
教授になって相変わらず、困っている女の子を観ると相変わらず居ても立っても居られない秋山さん。
わりとすんなりゲームに参加して、お得意の「やられたフリ」を披露する。
ヒロインは、完全にギャル化してフレッシュさの欠片もなくなった戸田恵梨香から、多部未華子になった。
まずね、実写版はフクヤマを推しすぎ。
今回なんてゲームに参加しないのに出てくる。
シーズン1で受けたからって調子にノリすぎ。こういうキャラはさり気なく面白いから良いのに、前に出過ぎ。さすがに飽きる。
多部ちゃんは好きだから主人公交代は良しとしよう。
多部ちゃんは人をイライラさせるキャラを演じるのが上手い。もう見るからにイライラする。
肝心のゲームは、原作屈指の人気ゲーム「椅子取りゲーム」。
しかし本作は展開が急すぎてちょっとよくわからん。
「こんなテキトーな説明でゲームに参加するわけねーだろ」とまず疑問に思う。
主人公は帝都大やで。東大生ってそんなにバカか?
原作は舞台は島全土。色んなロケーションがあったような覚えがある。
対して本作は、周りに何もないような廃墟。
いやいや、こんな場所ではイスを隠せないでしょうよ。
この廃墟は他の作品でも観た記憶がある。
調べたところ、ここは茨城県高萩市安良川「日本加工製紙高萩工場跡地」。特撮でよく使われる場所。
週1の特撮で観るような風景から、とりあえず安くそれっぽい画を作る狙いが伝わる。
原作ではゲームのルールを説明する「模擬ゲーム」なんてのもあったが、それもカット。
そして、ゲームが進むとなおさらよくわからんことになっていく。
決着は原作から変わっている。
「次」を前提にした原作と違い、無理やりハッピーエンドで終わらせているので「ファイナルステージ」と同じく萎える。
総じて、
「本当はドラマの新シリーズがやりたかったけど、ダメだったから無理やり映画にした」
感が出ている。
その象徴が、フクヤマを筆頭にしたやたらアクが強くて嘘くさいキャラ。
過去に登場したオッサンとか濱田マリも出てくる。コイツらはもうええやろ。
ワンパターンに感じてしまうし、嘘くさすぎて話が入ってこない。
新興宗教の教祖(船越英一郎)や、ボスのノブテル(新井浩文)も酷い。リアリティの欠片もない。
ようするに、テキトーな内容を面白おかしいキャラでごまかす魂胆が見え見え。
シーズン2やファイナルステージもそれでなんとかしてきたから、今回もその手法でいく。
こうして悪い前例を踏襲するから、作品を出すほどクオリティが落ちていくのだろう。
すべては君に逢えたから
■あらすじ
男女の6つのストーリーが交錯するラブストーリー。それぞれに奇跡が舞い降りる。
イヴの夜に素敵なことが起きる、オムニバス形式※の恋愛ドラマ。
(※いくつかの独立したストーリーを並べて、全体で一つの作品にしたもの)
あらすじには「交錯する」と書いたけど、実は交錯しない。
最終的に全てのエピソードが1つにまとまるのかと思ったら、全く別の話のまま終わる。
それは別に良いけど、奇跡が起きたのは実質、玉木宏・高梨臨コンビだけじゃね?
玉木宏はウェブデザイナーの仕事をバリバリこなす社長。
「誰目線で喋ってるんだ!」
「お前が説明できないのにそれでクライアントに説明できるのか!」
と部下がボロカスに怒られているときはブロガーの自分が怒られているようでツラかった。
東出昌宏は最近のイメージで絶対浮気する感が強い。
いかにも怪しい女が登場するし、東出に遠距離はムリだ。
キャラクター自体にも魅力がない。仕事に疲れてボソボソ喋っているだけ。
最後、始発で帰れとか言ってるし。さっそく相手の仕事のことを考えてないじゃないか。
時任三郎のエピソードは丸々無くて良い気がする。ここだけテーマがズレてる。
まあでも遠距離組と玉木コンビは良かったから、心にエネルギーが足りないときは観ると良いかもしれない。
リアル~完全なる首長竜の日~
■あらすじ
恋人同士の浩市と漫画家の淳美。淳美は、1年前の自殺未遂で昏睡状態のまま。浩市は淳美を目覚めさせるため、意識の中へ入る最新医療「センシング」を実行する。意識の中にいる淳美は一心不乱に漫画を書き続けていた。浩市が「現実に戻ろう」と訴えても「首長竜の絵を探してきてほしい」と言うばかり。意識と現実を往復するうち、事件の真相が明らかになる。
ラブロマンスかと思ったら、ただのホラーだった。
僕はこういうSFホラーなサスペンスが好物なので、そっち方向へ予想を裏切られて嬉しかった。
原作は「インセプション」を超える面白さと評判らしい。
実際、前半は面白くなりそうな雰囲気がバシバシ出ている。
とはいえ、ところどころ画が安いのは気になる。ちゃんと撮ってくれ。
車に乗っているときの景色の流れ、死体3人が嘘くさすぎ。あえて嘘くささを出す演出なのかと思ったほど。
CGが恐いのは良かった。
特に中谷美紀は元がCGみたいなだけに見分けがつきにくくてめちゃ恐い。
こうしてなんやかんやあった後、立場が逆転するところが山場。ここまでは観れる。
しかし、その後ダラダラ続く部分があまりにも酷い。
散々引っ張ってきた伏線は全部海に流れてしまい、あげく最後はアクションものになって萎える。そこで首長竜使うんかい!
コレ系の作品なら、最初に言った「インセプション」や、同じくディカプリオ主演の「シャッターアイランド」が面白かった。
伏線を綺麗に回収するし、映像にも隙がなく美しい。その上でカッコいいアクションを見せてくる。
それらの作品と比べると本作は数段落ちる。
作品というより映画業界自体のレベルの差が出てしまっている気がした。
海外のスタジオが金かけて作ればもっと良い仕上がりになりそう。まともに実写化されないという意味で、日本の小説家は不遇だなー。
一番思ったのは、やはり佐藤健はスポーツが似合うってこと。
なぜスカッシュやってるだけでこんなに様になるんだろう。もはや動かずとも背後にジムがあるだけで画になってしまう男だ。
ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ
■あらすじ
巨額のマネーを賭けて騙し合う「ライアーゲーム」に巻き込まれてしまったバカ正直な神崎直は、元天才詐欺師・秋山深一に助けられながらゲームに挑む。2人はついに最後のゲーム「エデンの園」にたどり着いた。
TVドラマの続き、「続きは映画で」にあたるライアーゲーム最終章。
どう観てもドラマの2時間SPだ。シナリオ、演技、演出、何から何まで作りが安い。
そもそも、ライアーゲームはTVドラマ・シーズン2から下り坂まっしぐらだった。
シーズン1で深夜にやっている頃は心理学とかが好きなちょいオタク向けで、その層に的を絞った、他のドラマとは一味違うシナリオの作り込みが面白かった。
最初の、恩師と1億円を奪い合う「マネー奪い合いゲーム」から、「少数決ゲーム」「密輸ゲーム」までまんべんなく面白い。
しかし、シーズン1がヒットしたことでシーズン2がゴールデン枠になり、ライアーゲームはいつしか一般向け、悪く言えばバカ向けドラマになってしまった。
深夜だと面白かったお笑い番組が、ゴールデンに進出した途端に輝きを失う現象と同じことが起きている。
シーズン1のフクヤマで味をしめたのか、シーズン2からはやたらアクの強い、嘘くさいキャラ・演出が鼻につくようになった。
シーズン2のオリキャラ・葛城リョウも完全に浮いている。
この女、特に可愛くもない上に違和感丸出しのゴスロリファッション。「秋山に勝った」というのも半分嘘で、最後はあっさり負ける。
葛城リョウのせいでどーでもいいフラグが何度も入り、「天使と悪魔ゲーム」もリョウさんのせいで改悪されてしまっている。
このキャラ、本当に必要だったのか怪しい。
さらにシーズン2ラストのドラマオリジナルゲーム「ゴールドラッシュ」なんて、シーズン1ラスト「密輸ゲーム」の劣化版であり面白味も何もない。
(原作はたしか椅子取りゲームをやっている頃なので、ドラマはオリジナルで行くしかない)
この下り坂の最終章、オリジナルゲーム「エデンの園」で戦うのが本作。
当然、面白いわけがない。
だいたい、最終戦に残ったわりにバカ揃いすぎる。
ボスと秋山以外、全員バカじゃねーか。
もう心理戦もへったくれもなく、みんなをワイワイさせて中田ヤスタカBGMを流しておけば良いと思っている。
実は僕もなおちゃんクラスのバカ正直で、過去には映画冒頭のなおちゃんと同じように路上詐欺にあい、見ず知らずの相手に2000円渡したことがある。
そんな詐欺を仕掛ける奴には何の後ろめたさも無い。引っかかる相手を見て心底喜んでいる。
後から思い出すと怖くなるほどだ。同じ人間として話し合うなんて絶対にムリ。法と警察力に訴えるしかない。
それだけに、ラストの展開は納得がいかない。
仮にも騙し合いに来たゲス野郎共が、さっき知り合った他人のために無償で1億を使う。ドブに捨てる。1億の負債を背負う者もいる。
いやいや、ありえないから。
バカ正直な僕ですらこんな嘘くさい連中には1000円も渡したくない。
これはもう、心理学に基づいて人間の心の動きを描き、社会の仕組みまで描写した原作を全否定している。
原作から離れた途端につまらなくなるのは「ハチワンダイバー」も同じだった。
興行的にムリだとは思うが、原作モノは原作の範囲に収めるか、原作が完結してから実写化してほしいものだ。
あと、シーズン2からなおちゃん(戸田恵梨香)がギャルっぽくなってしまったのも気になる。
シーズン1の黒髪なおちゃん方が明らかに可愛い。「若さ=美しさ」を痛感させられる。
同性が観れば「綺麗になった」と言うかもしれない、言いたいかもしれない。
しかし僕のような30代半ばの男に言わせるとそうはならない。
トモダチゲーム 劇場版 FINAL
■あらすじ
高校生が、借金返済ゲーム「友情かくれんぼ」に参加させられる。仲間の絆が試される危険なゲームが始まる。
前作からさらにライアーゲーム感が増した。
主人公よ、やられたフリがバレバレだぜ。「ライアーゲーム シーズン1」ラストで自暴自棄になる秋山さんを見ているかのようだ。
暴力に関するルールがガバガバじゃね?
仲間内で暴力自由なら、スパイを送り込んで不意打ち仕掛けて全員をめちゃくちゃ拷問して、また元チームに戻ればいいのでは。
だいたい、なんで運営がメンバーに入ってんだよ。それが一番ルール違反だろ。何が目的やねん。
結局のところ、コイツらが友達に見えないのが致命的。
だから損得感情を超えた選択をとるのが不自然。
(その前に全員が高校生に見えない。相手チームのリーダーなんて引率の先生だろ)
例えばライアーゲームの秋山さんには、バカ正直なナオちゃんを守るというわかりやすい動機があった。
それに、当時の秋山さんには他に何もない状態だから、リスクを背負ってどこまでも突っ込んでいくのもわかる。
対して本作はどうか。
高校生の日常を描いていないし、友情を感じるエピソードもない。よって何の絆も伝わってこない。
もしかしたら劇場版以前にちゃんと描いていたかもしれないけど、そこまで確認する気が起きない。
最後の奴なんてクズすぎて、例え過去に何があったとしても友情を感じるのはムリだ。潔く大人のゲームに送ってやれ。
さらに君たちは高校生なのだから、リターンと釣り合わないリスクを自ら背負いにいくのはバカげてる。
懲役3年食らって26歳、職業・天才詐欺師の秋山さんとは違うのだ。
たとえ友情をしっかり描いたとしても、僕は感情移入できないだろう。
なぜなら僕には命をかけてまで助けたい高校の友人なんて1人もいないから。
家族、彼女、パピヨンちゃんレベルでようやく「ここはひとつ頑張らねば」って感じ。
それがリアルな人間関係じゃね?
トモダチゲーム 劇場版
■あらすじ
高校生が、借金返済ゲーム「陰口スゴロク」に参加させられる。クリアのコツは友達を疑わないこと。友情破壊必至の危険なゲームが始まる。
「ライアーゲーム」っぽい、全員が力を合わせれば損をしないゲームに、一見普通の高校生が参加させられる。
当然うまくいくはずもなく裏切り者が出てきて「そいつは誰なんだ!」「もう誰も信じられないよ!」という疑心暗鬼で話が進む。
心理戦だから派手な映像は必要ないとはいえ、あまりにも画が寂しい。
終始、田舎の校舎屋上で5人が言い争うだけ。肝心のスゴロクは安っすいCG。
もうどこを観ればいいのかわからないほど低予算臭が凄い。
内田理央と根本凪、美人と胸デカくて可愛い系の2人でなんとか画面を持たせている状態。
てか、こんな胸デカくて可愛くて茶髪の女はイジメる側だろ。知らんけど。
対して男が全く高校生に見えないのが気になる。
特に金髪の男が酷い。完全におっさんじゃないか。
そんな中に1人とんでもないキレ者が混ざっている。
なんでコイツはこんなに頭がキレるんだ?劇場版から観ると全然意味わからん。
なんかこれ系の映画って作り方が決まってるな。
もはや、見えている地雷を自ら踏みに行って「地雷じゃねーか!」と文句を言っているような気がしてきた。
でも今はこういう、軽くてどうでも良くて、頭空っぽになる作品が観たい気分。
なんかの片手間に観るならそれぐらいのがちょうどいい。
続編の「劇場版ファイナル」も観るぜ。
ふるさと
■あらすじ
ダム建設により水中に没する小さな村で、住民は残された時間をいつも通りに過ごしていた。認知性を患った老人を中心にして、昔から何も変わらない「ふるさと」の風景を描く。
うーん、名作扱いされている作品だがちょっとよくわからなかった。
ダムの話だと思って観たら、認知症老人の話だったので。
じいさんの演技がリアルすぎて胸が痛い。認知症のドキュメントを観ているかのよう。
僕の父親がもう同じような年齢だし、偉そうな口調が似ている。
そんな演技を1時間半、延々と観せられるからたまったもんじゃない。
高齢化社会は失われるどころか加速しているのだから、失われるふるさとの風景を観て感動している場合ではない気がしてくる。
息子は、献身的に尽くしてくれるよくできた美人の嫁がいて良かったな。今どきこんな嫁は見つからない。うらやましい。
あと、じいさんの嫁(ばあさん)が綺麗すぎる。山奥の村にこんな昭和のガチ美人女優みたいな女がいてたまるか。思い出補正にもほどがあるぞ。
自然の風景は綺麗だけど、僕の田舎は今でもこんな感じなので特に感慨は沸かない。
僕の田舎は海沿いだから開放感があるし、観光業で食える。
対して本作のような海が無い田舎は閉塞感が半端じゃないので住むのはツラい。ダムを作らなくても限界集落化で遅かれ早かれ人の営みは失われるだろう。
つまり何が言いたいかというと、
「海沿いに生まれて良かった~」
信長協奏曲 NOBUNAGA CONCERTO
■あらすじ
戦国時代にタイムスリップして織田信長と入れ替わった高校生のサブローは、天下統一を目前にする。しかし本物の織田信長である明智光秀と、信長への復讐を企てる豊臣秀吉がサブロー暗殺の機を伺っていた。
TVドラマの続編にあたる、「続きは映画で」の典型的な例。
おそらく、小栗旬はテレビ局のこういうやり方にウンザリして事務所社長の立場で業界を変えようと思ったんだろう。
当時、僕はTVドラマの信長協奏曲を毎週欠かさずチェックしていた。
最終回なのにどう考えても尺足りないから不安がつのり、結局終わらず「続きは映画で」の仕打ちを受けて完全に見限った。
あと、水原希子のお市にゲンナリしたのを覚えている。
見限ったとはいえ気になるので今さら観たが、やっぱりドラマ特別編で十分な内容だった。
ナレーションつき総集編で始まり、開始数秒でさっそく萎える。
TVドラマだと期待値を落とした上でも、おかしなことが多すぎる。
いくらバカ高校生でも「本能寺の変」ぐらい知ってるだろ。本能寺ってワードが出た時点で気づくはずだ。
普通の高校生が戦場の近接戦闘で活躍できるのも不思議すぎる。なぜ本物の武士相手に無双できるんだ?
最後はこの結末しかないと思うけど、もう少し演出でなんとかならんかったのか?夢オチじゃないか。
ドラマ+映画と観続けて最後でこれはツラい。最初から観なきゃよかったと思ってしまう。
歴史と同じく、信長協奏曲が駄作になる結末を変えることはできなかった。
しかし本作を糧にして、力をつけた小栗旬が業界を変えてくれるはずだ。視聴者の思いが受け継がれることを期待するしかない。
Dランク:わりと苦痛
大帝の剣
■あらすじ
三種の神器(オリハルコン)の大剣を背負う大男の侍が、神器を狙う謎の宇宙人と戦う超SF伝奇時代劇。
ここまで「やることなすこと全てが滑っている」作品も珍しいのでは?
不愉快とかシナリオ破綻ではなく、シンプルにつまらない。
企画の打ち合わせ段階では盛り上がったけど、いざ作ってみるとダメだった。
あるいは、身内の飲み会で盛り上がったネタをアウェイでやったらトゥルトゥルに滑った感じ。
スマグラー おまえの未来を運べ
■あらすじ
役者志望の25歳フリーター・砧涼介は儲け話に乗って失敗して借金を背負う。砧は借金返済のために裏の仕事、秘密の運送屋=スマグラーの仕事をする。
金絡みの黒い話で主役が妻夫木聡でしょ?
役者も端役まで豪華。面白いに決まってるやん。
ところが面白くないんだこれが。
それどころか、ここまで感想書いてきた200本以上の映画の中でダントツ最悪といっていい。
感想を書くことを前提にしていなければ、間違いなく最初の10分で観るのをやめていた。
ストレスが溜まるだけなので金もらっても観たくない。
過去にタイムスリップして本作を観ようとしている自分を止めたい。
記憶を消したい度は「進撃の巨人」なんぞ比較にならない。
まず裏世界に足を踏み入れる前の、妻夫木の日常を全く描いていないため、現在カタギとは違う世界にいることが実感できない。
そして裏世界を中途半端にコミカルに描くため、恐くもなければ面白くもない。何をどう観せたいのかわからない。
ヌンチャクで事務所に押し入るアニメチックな超人キャラが登場し、リアリティは崩壊。
それでも後半までは「クソつまんねー」ぐらいの感想だった。
しかし問題はラスト38分の拷問シーン。マジでなんだこれは。
撮った人の正気を疑う。頭おかしい。(この「頭おかしい」は良い意味ではない)
ただの悪趣味、ドS。気持ちが悪い。
これまでテキトーな画を撮ってきたくせに、拷問シーンだけやたらとネチネチ描写している。
目を覆いたくなるようなことをされる妻夫木の、これまた観ていられないような顔と叫びを執拗なまでに繰り返し映す。ドSがハマりすぎてる高嶋政宏がトラウマになるわ。
もうこれがやりたかっただけやん。
だったらタイトル画像を黄色のポップな感じにすんなよと。まんまと騙されたじゃねーか。真っ赤にしろ真っ赤に。
僕はグロ苦手な方ではないと思う。
例えば「バトロワ」や「悪の教典」、「アウトレイジ」を観てもなんとも思わない。「SAW」を観たら「うわぁ…」と引くぐらい。
しかし本作の拷問シーンはほんまに気が狂いそうになった。
これ観て楽しめる人なんているのか?
妻夫木のキャラが、自分の限界に挑戦するかのように拷問に耐えるのも意味わからん。
お前はただの役者崩れのフリーターだろ。仲間にも大して思い入れはないし、連れて行かれる前に逃げろ。
あんな拷問受けてすぐ回復できるわけねーだろ。お前はグールか。
頭をトンカチで殴られてんだぞ。脳挫傷で死ぬわ。
グロだけ散々見せて、そういうところをご都合主義にすんなよ。なにを綺麗な顔で爽やかに終わってんだと。撮った人頭おかしい。
ムダに尺が長くて時間をムダにするという駄作の特徴もばっちり押さえている。
僕は作品を扱き下ろしていい気分になる趣味はない。
どんなクソ映画でもただボロクソに書かないように気をつけているつもり。
しかし本作と監督・石井克人にだけは言わせてもらう。
ふ・ざ・け・る・な。
シンデレラゲーム
■あらすじ
アイドルユニットの解散公演を終えた沙奈を含む、売れないアイドル達が孤島に集められた。そこに謎の男が現れ、勝ち抜けばトップアイドルになれるゲームの開催を告げる。アイドルの意地とプライドをかけたサバイバル・デス・カードバトルが始まる!
「脚本家の頭大丈夫?」
と思わざるを得ない作品。
地下アイドル達が蹴落とし合う設定は良い。
地下アイドルが、バトロアとカイジの限定ジャンケンを組み合わせたようなゲームに参加させられる。
無人島で戦うが、アイドル達はパフォーマンス中と同様、AKB風、水着とかバカみてーなコスチュームを着ている。
可愛い女の子が沢山出てくるのと、胸やパンツが見えるか見えないか的なカメラワークが嬉しい。
(でも最初に失格になった娘が一番可愛いような気がする。)
参加する女の子は性格の酷い奴が多い。カイジでいえば船井安藤クラスのクズ&クズ。
まあ自己顕示欲丸出しの地下アイドルなんてそんなもんだろう。(偏見丸出し)
このように設定は面白そうである。
しかし映画の出来はクズ&クズ。
肝心のゲームの面白味が皆無で、なんか気がついたら主人公が最後に残っていた。
ジャンケンは一発勝負で、1回負けるだけで死亡確定。利根川も引くぐらいシビアだ。
一発勝負では駆け引きが成立しないのが問題。これではカードを集める意味もない。色々策を弄する奴もいるが、結局は無謀な一発勝負をしている。せめて「私は~を出すから信じて!」ぐらいの心理戦は仕掛けろよ。
そんな命がけの勝負なのに、カードがペラペラで安っぽいのがこれまた。
肝心の対戦ルールもわけわからん。
カードはグー・チョキ・パーではない。
ルールの説明もないまま「魔女vsガラスの靴で魔女の負け」とか言われる。
カードを使うゲームなのに、船井みたいな奴のせいで主人公はさっそく全てのカードを失う。
もうこの時点で負け確定かと思いきや、「オプションカード」という謎システムが後出しで登場。主人公は普通にカードを貰っちゃう。
プレイヤーのミスでカードを失ったのにオプションカード支給はペナルティなし。しかも通常カードよりオプションカードの方が強いという謎仕様。
(後で調べたら、主人公は視聴者の人気投票により謎のポイントを貰っており、そのポイントでカードを購入したらしい。)
そうはいっても通常カードを持っている分、相手の方がなんかしら有利なのかなと思いきや、対戦中にカードを使い切った相手はオプションカードが貰えず負け確定。ひでぇ。
その後、ルールにより暴力は一発退場(死亡)であり実際に何人も目の前で死んでいるにも関わらず、懲りずに暴力をふるって次々と退場になっていくアイドル達。
いやいやゲームをしろよゲームを!どうせ退場させるならゲームで退場させろ!
結局のところ、蛇足になってるジャンケンを丸々カットして、立ち回りのポイント制&人気投票で脱落者を決めた方が良かったと思う。
人気取りのために服を脱ぐ奴が現れる、みたいなサービスシーンを入れつつ「ヌードはアイドルとは違う路線なので失格です」とか言って落としてほしい。
進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド
■あらすじ
エレン達は巨人によって破壊された壁の穴を修復する作戦にあたるが、巨人の襲撃で窮地に陥り、エレンは巨人に飲み込まれてしまう。その時、エレンは突如巨人化して他の巨人達をなぎ倒す。巨人の正体、世界の真実とは。ついに全ての謎が明かになる。
二部作の後半、完結編。
前作でウンザリし、続編を観る気が失せたのでしばらく忘れていたが、ふと思い出したので観た。
たしか前作は巨人エレンが出たあたりで終わったような覚えが。
本作でどれだけ話が進むのか、どんな形で完結させるのか気になる。
で、観た感想は、
「前作と合わせて観た記憶を消したい」
いや、記憶を消してもう一度観たい的な意味じゃなくて。
もう何が悪いとか具体的に考えるのも疲れたから、途中で考えるのをやめた。無になった。
悪役がいて、そいつを倒すってだけの安っぽい話。B級映画によくある感じ。
原作もエレン巨人化以降よく知らないけど、こんな話なの?んなわけないよな。
立体機動のアクションはカット割りで誤魔化しており安っぽい。引っ張られるたびに「ううっ!」とか言ってるのがもう観てらんない。何か素早い動作をしたときの「シュッ」みたいなSEも安っぽい。BGMが場面に合わせてわかりやすく切り替わるのも安っぽい。
あとシキシマは変身前の方が強かった。
前作と合わせて観た時間が本当にムダになる。まだ観ていないなら存在を忘れた方が良い。
話のネタにもならない。本作の話をするだけで寒い奴だと思われるから口に出さない方が良い。