ダブルキャストってどんなゲーム?
■あらすじ
主人公は映画研究会(映研)に所属する大学生。
飲み会で泥酔して街をさまよっていたとき赤坂美月に出会う。
美月は記憶が無く、行くあてもないのでしばらく主人公と同居を始める。
映研で自主制作映画が企画され、主人公が推薦した美月がヒロインに起用される。
以降、美月の周辺に不穏な空気が漂い始める。
やるドラ第一弾
ダブルキャストとは、「見るドラマからやるドラマへ」がキャッチフレーズの「やるドラ」※シリーズ第一弾。1998/6/25発売。
選択肢を選んで進行し、選択によって展開が変化し各エンディングに分岐するアドベンチャーゲーム(ADV)です。
※
「やるドラ」シリーズは、
『ダブルキャスト』
『季節を抱きしめて』
『サンパギータ』
『雪割りの花』
『スキャンダル』
『BLOOD THE LAST VAMPIRE』
と続きます。
『雪割りの花』までは四季がモチーフの4部作。
本作のテーマは夏。
万人向けの作風故に夏が第一弾になったらしい。
4部作は元々「記憶喪失」がテーマのオムニバス形式※でした。よって4部作のヒロインはみんな記憶喪失です。
(※独立したストーリーを並べて、全体で一つの作品にする形式)
女の子&青空で爽やかなパッケージの通り、夏×ラブコメ×サスペンスホラーな作風。
(中盤までは)明るく楽しい雰囲気です。
ベストエンドの他、グッドエンド・ノーマルエンド・バッドエンドが複数あります。
バッドは未解決クリア、ノーマルエンドは番外編。
本編中にほとんどヒントが無い上、選択肢は曖昧。初見だとバッド直行です。
明るく終わってもバッド扱いになる意味はグッドエンドを見ればわかります。
ヒロインを大事にするだけでは真相にたどり着けません。
バッドエンド後は体育会系キャラがヒントを教えてくれます。
このヒントが大ざっぱすぎ。
「信頼できる者の協力が不可欠」
「世の中そんなに甘くない」
2人のうち1人は「うむ、その通り!」しか言わねぇ~
でもご安心を。バッドエンドを2回見ると、グッドエンド(ベストエンドの次)フラグの選択肢に印がつくヒント機能が使えます。
フルアニメ
やるドラならではの特徴はフルアニメーション。
一般的なADVの「立ち絵+会話ウィンドウ」ではなく、アニメムービーが一時停止して選択肢が出ます。
アニメはプロダクションIG制作で質が高い。
台詞はフルボイス。
じっくり遊んで1時間半、ずっとアニメ&フルボイスが続きます。
フルアニメ・フルボイス。
記憶喪失のボクっ娘(後述)と同棲。
ラブコメ、サスペンス、バイオレンス。
総じて、一周1時間半の迫力が凄まじい作品です。
ボクッ娘
ヒロインの赤坂美月は記憶喪失で元気な“ボクッ娘”(一人称がボク)。
ギャルゲーで必ず1人はいるタイプ。メインヒロインとしては新鮮です。
ボクッ娘は男まさりなタイプが通例なのに、美月はいかにも美少女で眩しいほどに可愛いのも新鮮。
圧倒的なスタイルの良さ。しかもこの丈の短さでキュロットではなくスカートの神ファッション。たまりません。
(プレステはセガサターンよりアダルト描写の規制が厳しい。パンチラ禁止です。でも本作は完全にパンチラしています)
食事の栄養も気にしてくれるし、家事もしっかりこなす。
キャベツの千切りとか上手いしもう完璧です。
この美少女がボクッ娘属性なのには理由があります。ゲームをプレイして確認しよう。
私は最初、男が転生した人だと勘違いし「ダブルキャストってそういう意味?」と戸惑いました。
ラブコメ生活
圧倒的美少女の美月とラブコメ生活が楽しめます。
開始すぐ、いきなり美月と同棲生活が始まる展開で面食らいました。
私のような冴えない男にこんな娘が寄ってきたらぼったくりを疑います。
ラノベなら「俺と記憶喪失の美少女が同棲できるはずがない!」みたいなタイトルになりそう。
記憶喪失で身分証明もない美月と同棲するだけでなく、学校に上がり込んで青春生活が始まります。都合良すぎて羨ましい。
そんな楽しいラブコメ生活の中、どこか不穏な空気が漂っています。
妙に包丁が強調されたり美月の様子が変になったり。所々に伏線が。
実は主人公が美月と親密になるのが真犯人出現の鍵です。よって前半のラブコメには意味があります。
中盤からノリがシリアスなサスペンス調に変わります。
何が起こるのか予想できない緊張感があり画面に釘付け。
後半はバイオレンス&ショッキングな展開へ。
終盤の特定ルートがエグいので、本作はトラウマゲーとして有名です。
前半と後半、陽と陰のコントラストが強烈。
たぶん一生忘れられない作品になります。
フルアニメの賛否
フルアニメの影響で、普通のADVなら順を追って丹念に描くところが飛ばされた感じ。
一枚絵&テキストで済むところがフルアニメだから当然です。
特に後半が急展開。というか超展開。
プレイヤーの分身であるはずの主人公が急に覚醒して独り歩きします。
独りで行っちゃうのは中盤→後半をつなぐ主人公の心情変化の描写が無いため。
①昔の美月を知る人が現れる
②過去を探る
③もしや……
この流れが無く、いきなり「昔の美月を調べたら~」と解答編に向かいます。
推理に向かう必然性も薄い。
手段を制限する、外堀りを埋める部分が飛ばされています。
例えば『かまいたちの夜』のように閉鎖的状況なら、登場人物を疑って犯人を特定する展開に説得力があります。
一方本作は推理の前にできることがありすぎる。
警察に届けたり病院で診てもらえば…… とやるべき行動が色々浮かびます。
それらを全部すっ飛ばして大規模作戦を実行し、一気に解決に持っていくのが腑に落ちません。
終わり方も唐突です。
殺人未遂事件の後、後日談を数行のテキストで消化。
解決した気がしない。また事件が起きる気がします。
シナリオの総量が限られるからADVとしては分岐も少なめ。
フルアニメの没入感は凄まじい反面、ADVとして端々まで描くのはムリがある気がします。
本作は名作です。
でも現在、同じようなフルアニメのADVは主流ではありません。
理由はまず前述の制作リソース問題。
加えて、フルアニメと周回プレイ前提のADVの相性に問題がありそうです。
分岐を探って達成率を上げる過程は、選択肢の総当たりで選んでいく作業。
2周目以降はアニメ・ボイスをスキップする人がほとんどだと思います。
つまりフルアニメを満喫できるのはバットエンド直行の初見プレイだけ。
一方、制作リソースの限界で分岐とシナリオは減る。
フルアニメの労力が、ADVとしての完成度にあまり直結していない気がします。
まとめ
一周1時間半の迫力で記憶に残るゲームです。
ADVとしてはフルアニメが足かせな面もあるけど、美月と過ごす夏は忘れられない思い出になるはず。
一生忘れられない体験をサクッとできるのでぜひ。