PS1 アドベンチャー

センチメンタルグラフティ【評価/感想】女を求めて全国旅する高3

投稿日:2019-04-28 更新日:

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ショップでふと眼に止まり衝動買いしました。

ゲーム内容は知らなくてもタイトルは聞いたことがあるぐらい知名度は高いですよね。

パッケージをさっそく開封すると、甲斐智久さんの美しすぎるイラストつきカレンダーが12枚入り!

描かれたヒロインを眺めながらどの娘にしようかなーとワクワクします。
正統派にいくか、それともちょっと冒険してみるか。

期待値を上がったところでサターンにCDを放り込みプレイ開始。
10分後……



センチメンタルグラフティってどんなゲーム?

センチメンタルグラフティとは、恋愛シミュレーションゲーム。通称、セングラ。
1998/1/22発売。

■あらすじ

高校三年生の春休み、主人公の元に「あなたに会いたい」と書かれた差出人不明の手紙が届く。

主人公は小学四年生から中学卒業までの5年半で日本全国12都市へ転校。各地で12人の女の子と仲良くなった。

手紙の差出人はその内の誰かに違いない!と確信した主人公は、日本全国12都市で12人と再会し差出人を探す旅に出る。

 

いわゆる“ギャルゲー”です。

札幌から長崎までの12都市にヒロインが12人。
土地の風土に合った雰囲気のヒロイン達と親交を深め、誰かとゴールインします。

全国12都市を旅して12人のヒロインに会いに行く旅。
コンセプトは魅力的です。

 

各都市で観光気分を味わえます。

ただ、行ける場所は偏り気味。

東西南北、名所だらけの京都がこのざっくり感です。
京都駅~三条辺りに寄りすぎ。

はるばる京都まで来てヒロインの実家を訪問したらいきなり弓矢で撃たれました

翌日、街でヒロインと偶然出会って鴨川デート。

って鴨川のシーンないんかい!

12都市のデートスポットを描写するのはムリだったようで、肝心なご当地スポットは省略されがち。

デートは単調な数パターンの繰り返し。
1枚絵が少ない。選択肢すらほぼ無い一本道で味気ないです。

 

ギャルゲーブームについて(前編)

本作を紹介するには、1995~1998年の“ギャルゲーブーム”に触れる必要があります。
本作発売までを前編、発売後を後編に分割して語ります。

 

1992年頃、『同級生』『卒業』『プリンセスメーカー』でPCにギャルゲーブームが到来しました。

一方、家庭用ハードはスーパーファミコン(SFC)が主力。
ギャルゲーを作るには容量が必要で、SFCのロムカセットは不向き。
よってPCのブームは家庭用に波及しませんでした。

1995年、PS・サターン発売で家庭用ハードはCDメディアに移行。
容量の優位はPC(フロッピーディスク使用)と逆転し、ソフトの価格はPCより安い状態になりました。
そのためギャルゲーの主戦場はPCから家庭用ハードへ移ります。

PS版『ときめきメモリアル』(ときメモ)の大ヒット以降、ブームに乗って良作・駄作が乱発。

12タイトルが十万本以上の売上げを記録しました。
ときメモはマルチで100万本、『サクラ大戦』はサターンのみで50万本超え。

アニメ・音楽・小説・ラジオなどメディアミックス展開がセットになっており、あらゆるメディアを総動員したテンションの高さは売上規模をはるかに上回ります。

そして、1998年。
本作は発売前にメディアミックスを展開し人気が爆発。ギャルゲーブームは頂点を迎えました。

 

セングラの難点

ブームの頂点で、期待値マックスで満を持して登場した本作。

オープニングムービーの時点で雲行きが怪しいです。
謎の踊り、真っ黒な背景、爽やかな曲とのミスマッチ。
あまりの不気味さに「暗黒太極拳」「暗黒舞踏会」と呼ばれています。

いざプレイ開始するとオープニング以上の致命的難点が。

以下、詳しく紹介します。

 

設定にムリがありすぎる

設定にムリがありすぎます。

全国の12都市にヒロインを配置した結果、主人公が超人になりました。

 

まず主人公の経歴が波乱万丈です。

・小学四年生~中学卒業までの5年半で12都市へ転校
・それぞれの転校先で仲良くなった女の子が12人いる

この時点で凄い。
さらに凄いのはここから。

普通はイタズラを疑い、警察に相談したくなるような怪しい手紙が送られてくると「差出人は知り合った女の子の1人に違いない」と断定。
「あなたに……会いたい」の一文を頼りに旅へ出発します。

行動力が超人。

プレイ開始から5分、主人公の経歴と行動力についていけません。

消印調べるとか、電話番号を調べてアポとるとか準備もしない。

ヒロインと会っても手紙のことは一切聞かない。

「こっちの住所知ってるならお前が会いに来い」
「手紙に電話番号とか住所書け」
とかヤボなことも言わない。

とにかく行動する男です。

 

タフすぎる旅

行動力以上にタフさが超人的です。

主人公の旅は、テレビ番組の企画みたいなタフすぎるスケジュール

ヒロインに会うため北海道から長崎まで全国を渡り歩き、旅先でバイトしながらときには野宿。

しかも電話が使えるのはなぜか東京の自宅のみ。
ヒロインと会うアポを取るには数百km離れた東京に帰るか、偶然出会うのを期待して現地をさまよい歩く2択。

そんな旅を、受験が控えた高3の3月から一年間続けます。

手紙一通を頼りに、高3の大事な時間を全てつぎ込み女を追いかける主人公に感情移入するのは難しい。

せめて主人公が大学生なら……

 

ストーカー vs メンヘラ

ざっくりいうと主人公はストーカー、ヒロインはメンヘラです。
どちらにも感情移入し難い。

 

キャッチコピー「忘れかけてた恋を探す旅物語」の通り、主人公は高校3年生なのにヒロイン関係の記憶が曖昧。

記憶喪失状態でヒロインを探し歩き、アポ無しでいきなり実家を訪問するか偶然街でヒロインに出会い「僕のこと覚えてるかな?」と問い詰めます。

冷静に考えると完全にストーカーです。

 

対するヒロインも負けていません。
「もしかしてあなた…~じゃない?」と意気投合。
電話番号を渡され「また誘ってね!」と初日から親密な関係になります。

記憶無い同士が意気投合する状況についていけません。

 

その後、ヒロインを長期間連絡を取らなかったり会わなかったりで放置すると「せつなさ度」が上昇。

一定ラインを超えて「せつなさ炸裂」状態になると、無言電話を繰り返したり消息を絶つ異常行動を起こします。

これではセンチメンタルというよりメンヘラです。

ちなみに、ギャルゲーとしては珍しくヒロインを振ることが可能です。

ストーカー vs メンヘラの地獄みたいな絡みは必見。

ストーカーのようにつきまとった主人公が、付き合ってもいないのに諦めきれず東京の自宅まで来たヒロインを「恨みっこなしだよ、惚れた君が悪いのさ」と突っぱねます。

 

浮気必須

ベストエンドを迎えるには12人全員を登場させ、最低6人のイベントを進める必要があります。
つまり6股以上が必須。

股をかけるには細かくスケジューリングを組んで、全国各地に飛び回りヒロインのご機嫌をとる必要があります。

もはや手紙の送り主とか関係ない。片っ端から手をつけるだけ。

 

エンディングは以下の3種類。

・ベストエンド:女の子から告白される
・グッドエンド:主人公から告白して成功する
・バッドエンド:告白が失敗

手紙の送り主はベストエンドのヒロインになります。
グッド・バッドエンドだと手紙の送り主が判明しないまま。

 

ギャルゲーブームについて(後編)

本作発売後、あまりの出来に発売前のメディアミックスで期待値を上げたファンは落胆。
(実際は、公開されたゲーム画面の顔グラがイメージイラストとかけ離れていたため発売前に期待値が下がったらしい)

一方、本作発売の1998年は『サクラ大戦2』『慟哭、そして……』『やるドラ』などブームの頂点となる傑作ギャルゲーも発売されました。


ギャルゲーは駄作と良作を出し尽くし、ブームは衰退を始めます。
1999年以降、ギャルゲーの発売タイトル数・売上げは急降下しました。

 

3年間のギャルゲーブームが後世に与えた影響は大きいです。

恋愛要素はあらゆるジャンルに導入されました。
ブームの時期に開拓したメディアミックスは現在の声優コンテンツにつながっています。

 

まとめ

高3の1年中、女を求めて金と時間を全投資して全国旅する主人公に感情移入するのは難しいです。

設定の難点を抜きにしても、

・ゲーム中の絵がいまいち
・デートシーンが味気ない
・スケジュール管理があまりにもしんどい

など厳しい仕上がり。
発売当時に期待値を上げて遊べば愕然とするでしょう。

とはいえ期待値を下げて今遊べば一周回って全てが面白いです。話のネタにもなるのでぜひ。






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