エネミーゼロ、プレイしたことが無くても名前は聞いたことがありませんか?
発売にまつわるエピソードが有名な一方、ゲーム内容についてはあまり語られない作品です。
というのもこのゲーム、難しすぎてまともにプレイできた人が少ない。
そんな作品を難易度ノーマル※で最後までやり遂げた私が、本作がいかにク○ゲーか、もとい難しいのかを解説します。
(※通常版ノーマル=廉価版ハード)
もくじ
見えないエネミーとの戦いを描くインタラクティブムービー
飯野賢治さんの作品
エネミーゼロの企画・脚本・監督は飯野賢治さん。
ゲームソフト開発会社のワープ(W.A.R.P.)代表取締役であり、「Dの食卓」(以下、D食)作者として有名な方です。
飯野さんといえば、熱気バサラの「俺の歌を聴けー!」ならぬ「俺の作品を遊んでみろー!」的なクリエイター。
パッケージを開けた時点で並のゲームと違うことがわかります。
ディスク4枚組のうち1枚はなんとオープニング+体験版。
取説にも圧倒されます。
取説としては使い物になりません。
凝ったデザインすぎて画像と文字情報が入り乱れ非常に見づらい。というか情報を見せる気がありません。
ご丁寧に取説を読んでもわからなかった人のためのガイドつき。
そのガイドまで「ブンブンブンブン」などの擬音で表現されて意味不明な二重苦。
プレイして慣れるしかないです。
さらに、飯野さんの名を知らしめたD食と同じく飯野さんの自画自賛コメントが溢れます。
以下、取説のコメントより抜粋。
(中略)きっと感動してくれると思います。もしかしたら、初めて涙を流すゲームになるかもしれません。その感動のために、どうか頑張ってプレイしてください。」
ちなみに設定・ストーリーは映画「エイリアン」「プレデター」と被るけど、飯野さんいわく「エイリアンやプレデターを知らなかった」。
事実なら飯野さんはとんでもない鬼才ですね。
■あらすじ
宇宙を航行する貨物宇宙船「ヴィークル・ジ・アキ」に非常事態が発生し、乗組員は強制的にコールドスリープを解かれる。
謎の透明な敵により次々と殺される乗組員。
乗組員の1人・ローラはエネミー探知機「VPS」を頼りに船内の探索を始める。
エネミーゼロ事件
作品自体より、発売にまつわる事件の方が有名です。
本作は元々、PSのキラータイトルとして開発されていました。
ところがPS版完成発表会見で突然、PS版開発中止とサターン版発売を発表。
しかもPSのロゴがモーフィングでサターンのロゴに変わるムービーを流す挑発的な演出つき。
SCEにPS版「Dの食卓」出荷本数を減らされたことに対する意趣返しとの噂。真相は不明。
この出来事は「エネミーゼロ事件」として後世に語り継がれます。
飯野さんがコラムを書いていた「ゲーム批評」で本作が酷評され、飯野さんが連載を取りやめたエピソードも有名です。
探索パート+戦闘パート
飯野さんの話はこの辺で切り上げて、ゲーム内容の話に移ります。
ざっくり言うと、ムービー移動の探索パート7割+FPSの戦闘パート3割。
探索パートはD食の「インタラクティブ・ムービー」を引き継ぎ、移動や調べるたびにもっさりムービーが挿入されます。
一方、戦闘パートの通路・フロアはリアルタイムレンダリングの3DCGで描写。
進行方向がわからない、目印になるものが無い迷路のような構造です。
ミニマップも無いので自分の方向感覚だけが頼り。
右往左往しているうち、移動に合わせて上下に揺れて激しく3D酔いします。
同じホラーゲームでも「バイオハザード」とは別物。
・美しく進化した探索パートムービー
・FPSのような戦闘パート
・どこかで見たような展開の本格的SFストーリー
上記によりD食からの進化を感じることができます。
ひたすら洋館を探索してキテレツな話が展開するD食とは一味違います。
ただ、探索・戦闘パートともに難点が多々あります。
以下、難点について詳しく解説します。
もっさり&ノーヒントな探索パート
■D食の難点がそのまま
探索パートはD食の難点をそのまま引き継ぎます。
・チェックできる場所と進むルートがわかりにくい
キーを入れた方向とズレた場所にグルンと移動しちゃって、調べたい場所を向いてくれません。
位置ごとにチェックできる場所が限られるのも相変わらず。
手を伸ばせば届きそうな死体もアクセスできるのは一方向のみ。
死体は100%キーアイテムを持っているので、特定位置から調べることに気づかないと詰みます。
・何かするたびにもっさりムービーでレスポンス最悪
何かを調べるたびに主人公・ローラがもっさりリアクションを取ります。
何度同じことをやっても同じリアクションで、カット不可。
ローラは何回も同じ鍵穴をしつこく調べ同じ死体で驚きます。いや、それさっき見たやないかと。
例えば、銃の充電器を普通に調べると「この装置はいったい何に使うのかしら」みたいなリアクションを長々と見せられます。銃持ってるのに。
充電するにはアイテム欄を開いて銃を選択する必要があります。
鍵を使う、ディスクを使うなど何をするにもこんな具合。
総じて、探索パートでは探索どころか調べること自体が嫌になります。
よほど気長な方以外は苦行に感じるでしょう。
■進行フラグがノーヒント
進行フラグがノーヒントかつ脈絡が無いので推理もへったくれもありません。
・死体の指を拾う
・写真を見る
みたいなどーでもいいフラグばかり。
結局、チェックできる場所を片っ端から総当たりで調べ回るハメに。
「引き出しから鍵ゲット→その鍵でロッカーを開けたら鍵ゲット」
みたいなムリヤリに攻略チャートを引き伸ばす嫌がらせも目立ちます。
しかも、何のために何をやっているのか全然わかりません。
脱出するために移動しているのか、仲間と合流するためなのか。
さっぱりわからないまま危険地帯を命がけで探索します。
やっと他の乗組員に出会っても勝手な行動をとるだけでチームワークの欠片もありません。脱出に向けた話が何も進まない。
最初から最後まで、意味もわからず右往左往している感じです。
チェックできる場所を片っ端から調べるのは、例えば「バイオハザード」も同じです。
ただ本作には探索の面白味や物資をやりくりするサバイバル感がありません。
なにより、行動するたびもっさりムービーがツラい。
フラグが不親切すぎて自力攻略だと詰みがち。
例えば、
・エネミーに追われる場面で通路の左右2択を間違えると詰み
その先で上を向く(Cボタン)操作に気づかないとダクト前で詰み。ちなみにCボタンは二度と使いません。
・ジョージのスペルを覚えていないと詰み
そもそもジョージのロッカーであることに気づかないと詰みます。
・モニターに映るキンバリーの通ったルートを覚えていないと詰み
・階数などの操作が2進数
などなど。
難しいというより不親切。攻略情報なしにプレイすると心折れます。
マゾすぎる戦闘パート
探索パートでストレスを溜めた後、マゾすぎる戦闘パートでさらにストレスが溜まります。
■探知機が頼りにならない
敵は透明で見えません。
そこで、音で敵の位置を知らせるソナーのようなエイリアン探知機「VPS」を使います。
ちなみにゲーム開始直後、引き出しからVPSとセーブ用アイテムを取り忘れると詰み。もちろんノーヒント。
VPSの音は、
・エネミーの位置によって音質(高・中・低音)が変わる
・距離によってテンポが早くなる
このVPS音だけを頼りに敵の位置を推測します。
しかし、VPS音は全く頼りにならない。
音の区別は「前・横・後」の3方向のみ。左右の区別無し。
音が似通っている上、エネミーが複数いると音が混ざります。
そのため、慣れないうちは「ヤツが近くにいる・いない」ぐらいしかわかりません。
さらに、ピコピコうるさい。
絶え間なく警告音にさらされるので不愉快です。エネミーが複数いるとピコピコ音が重なって頭おかしくなりそう。
船内でエネミーから逃げるローラの気持ちとシンクロしている感はあります。
初見では頼りになる、ならない以前にそもそも意味がわかりません。
不愉快な警告音が鳴る中いきなりゲームオーバーになり「このク○ゲーがぁー!」と投げたくなります。
そこからゲームを続行した時点であなたは選ばれしプレイヤーです。
■ゲーム史上最弱銃
武器はエネルギー銃。
命中すれば一撃でエネミーを倒せます。
この銃がゲーム史上最弱といえる性能で、マゾい戦いを強いられます。
・射程が短すぎ
・発射までに溜め時間が必要 (ボタン長押しで溜め→離すと発射)
・装弾数1~3発
射程が異様に短いため至近距離に引きつけて撃つ必要があります。
「ギャーオ!」とエネミーの叫び声が聞こえてもまだ遠い。
最後の警告音「ファーン!ファーン!ファーン!」が鳴ったら撃ち時。近接武器で殴れる距離です。
エネミーに接触すれば即死なので1発外すと致命的。
装弾数が少ないのもツラい。
前半の難所、ダクトで使う銃は装弾数1発のみ。(難易度ノーマル)
しかも弾補充に使う設備「ガン・チャージャー」はマップの端々に散っており、数が少ない。
1発撃ってはガン・チャージャーへ戻り、また元の場所へ。この往復を1フロア進むだけで何度も繰り返します。
溜めが長すぎても短すぎても不発になる仕様で扱いも難しい。
先読みで溜め始める必要があります。
特にツラいのがダクトフロア。
「一匹撃破→充電に戻る→バリケード前の一匹撃破→充電に戻る→バリケード破壊」の繰り返し。
苦労の末、バリケード前の敵を倒した後が問題。
固定敵を倒したらVPSが反応しなくなり、バリケードの方向がわからなくなります。
バリケード破壊に使う1発の充電のためその場をいったん離れて戻るとき、赤く点滅するダクト内を数十分さまよって気分が悪くなりました。
■セーブ・ロードが有限
即死で簡単にゲームオーバーになるのにセーブ・ロードが有限。
セーブ・ロードするたびにセーブ用アイテムのバッテリーを消費します。
ゲームオーバーまたはリセット→ロードでも消費するので、前半に使いすぎると終盤の難所で詰みます。
上記の難点により探索×戦闘パートでストレス掛け算状態。
常に頼りないVPS警告音にさらされながら敵の接近を待ち、ゲーム史上最弱銃でようやく一体倒すたび弾切れで遠くの充電器まで引き返す。
何度も探索パートへ引き返すハメになり、そのたびにもっさりムービー。例えば「ダクトから出る→充電→ダクトに登る」でもっさりムービー3回。
マゾすぎます。
「制作側としては本当にこれで良かったのか?」と疑問に思うほど不親切。
あげく終盤の難所では見える敵が出現して「敵が見えない」コンセプトが揺らぎます。
最初の戦闘で何度か失敗してゲームオーバーになった後、なんとか一匹倒すことに成功。
「よし、1体仕留めた!銃の使い方がわかったぜ!」と思った直後のイベントでその銃を落とします。
せっかくやる気が出てきたプレイヤーを再び突き放す。これが飯野流。
まとめ
グラフィックと戦闘にD食からの進化を感じることができます。
ただ、不親切ゆえの理不尽な難しさが難点。
探索パートはDの食卓の難点がそのまま。
・ノーヒントで脈絡がないフラグ立て
・チェックできる場所と進むルートがわからない
・何かするたびにもっさりモーションでテンポ最悪
戦闘パートはマゾすぎる
・探知機が頼りにならない上、常に不愉快な警告音にさらされる
・至近距離まで敵を引きつける必要があり、1発1発に即死のリスクが伴う
・撃っては充電の往復作業
この探索パートと戦闘パートが交互に挟まれるため、ストレスかけ算状態。
自力攻略だとゲーム開始直後に心折れます。たぶん最初の銃入手まで行けません。
それまでにゲームを投げるのが常人の正常な感覚だと思います。
これから本作をプレイするチャレンジャーな方へ。
序盤で投げ出すぐらいなら攻略を見た方がマシだと思うので、攻略情報を手元に置いてのプレイをおすすめします。
あと、難易度イージーにしましょう。イージーがノーマル仕様です。