当時高校生だった自分の心(マインド)にグサリと撃針を撃ち込んだゲームです。
出来のわりに知名度が低い作品のことをよく「隠れた名作」と言いますよね。
デスピリアは「隠れすぎた名作」。
気持ち悪すぎて気持ち良い本作の魅力を、思い出補正込み、ネタバレ少なめで紹介します。
もくじ
隠れすぎた名作、デスピリアとは
出会い
まず「本作との出会い」から話を始めます。
当時、私は高校生でした。
初見では絶対に手が出ないジャケット。
「デ・スピリア」なのか「デス・ピリア」なのかもわからない。
よって全くノーマークだったけど、ゲーム好き同級生の勧めで購入しました。
他人の勧めを鵜呑みにして購入したゲームは本作だけです。
その同級生は、典型的な辛口ゲーム批評家気取り野郎。
コイツがそんなに推すなら…と買ったのに、推した本人は「へー買ったんやー」ぐらいのリアクションで結局買ってねぇ!
ふざけんな!と思いながら仕方なく、このカオスな世界に1人で飛び込むハメになりました。
今となってはその同級生に感謝してますよ、ええ。
おーい、あのときの同級生見てるかー?
発売元がアトラスだから女神転生みたいな作品だと勘違いしたままプレイ開始。
すぐ別物だとわかりました。
タイトルでスタートボタン押すと「ぐぅわぁぁぁぁぁー」と叫び声。いきなり様子がオカシイ。
プレイ中は「俺は今すごいゲームをやっている」と誇らしい気持ちだったのを覚えています。
クリア後はしばらく余韻に浸っていました。
意味はよくわからないけど「俺はみんなの知らない凄い世界を体験したんだ」と。
この感動を誰かと共有したい。
でも私は30代半ばになるまで本作の話が通じる人に出会ったことがありません。
だから寂しさを紛らわすためにブログを書きました。しばしお付き合いください。
じわじわくるホラー&ADV+RPG
「心とはなにか?どこから生まれるのか?」
ブレードランナーや攻殻機動隊など、SFモノでおなじみのテーマ。
そのテーマを、サイバーパンクな世界を舞台に「心を読む」という独自の切り口で描きます。
ゲームの基本はADV(アドベンチャー)。
探偵のように情報収集して話を進めます。
対象を自動ロックする「スフィアシステム」で操作は簡単。
PC移植のADVのようにクリック連打する必要はありません。
別の場所へ、「Dの食卓」のような主観視点ムービーで移動します。
主観視点で薄気味悪い場所を右往左往するため、嫌でも世界に引き込まれてしまう。
独特のじとーっとしたリズムで進行します。
もっさり移動にもっさり戦闘、スキップ不可のマインドダイブ。(台詞は早送り可能)
ゲームオーバーで大きく戻されると萎えるのでこまめなセーブ推奨です。
最も特徴的なシステムは「マインドダイブ」。
人の心や、色んなものにこびりつく「残留思念」を読んで情報収集します。
他人の考えが丸見えでさぞ楽しいかと思いきや、深層心理はひたすら闇、闇、闇。
明るさや救いなど無い。暗黒面を覗くのみです。
本格的なRPGとして楽しめます。
移動中、ランダムエンカウントで戦闘になります。要所でボス戦あり。
経験値でキャラを育成し、仲間(マインド)を作成。
キモいプリレンダの敵キャラと、具現化されたマインド(仲間)が独特の動きを見せる戦闘画面が大迫力!
敵のオーバーリアクションは恐いを通り越して笑えます。
主張が激しいダークな戦闘BGMも印象的。
ただでさえ息苦しい緊張感が倍増します。
主人公は最強マインド使いの美少女、アルーア・バレンタイン。
オープニングムービーで鼻から蟲を吸い込んで鼻血を出すアルーアさんは、世間を取り締まる体制側の最強能力者。
教皇の命のもと異端者を始末する「教会の剣」として異端者に恐れられ、目の敵にされます。
強力すぎる能力のため、この世界では珍しくまともなルックスなのに化物に化物呼ばわりされます。
グロを体現した敵に「ひぃ~化け物!」と言われるのはなんとも腑に落ちません。
当初は教会に忠実で融通がきかないカタブツ。
色々な出来事を経験して次第に考え方や性格が変わります。
その過程がストーリーの肝であり、見どころ。
舞台は2092年。
2070年「詩篇戦争」から22年後、荒廃した大阪・新世界。
アメむら、せんば、天満橋などの地名が出てきます。
1回崩壊した世界なので、大阪っぽさはありません。
現在、大阪に住む私も全くピンときません。
おそらく、ほとんどのプレイヤーが3章あたりでストーリーを見失うでしょう。
長ーい3章の意味深な長台詞を聞くうち、何のために何をやってるのかわからなくなります。
でも雰囲気だけで十分に伝わるものがあるのでOK。雰囲気で楽しめます。
物語の背景である「詩篇戦争」について詳しい説明もないけど、「1回めちゃくちゃなことが起きて価値観が崩壊した世界」ぐらいの理解でOK。
1章冒頭でいきなり列車事故に巻き込まれ、登場人物が次々と死んでいく怒涛のグロ展開が続きます。
閉鎖空間で変なキャラのオンパレード。SEの9割は悲鳴。
「ぎゃー!ひゃー!ヴボォー!」の連続でいつの間にかみんな死んでる。
ヤバいゲームに手を出しちゃった気がするけど、妙な魅力があるので後戻りはできません。
章ごとに場所が変わります。
ようやく新しい場所に慣れた頃、次の章に移るので気が休まりません。
1章の悪夢みたいな事故から生還して安心できるかと思きや、2章は青空の下でさらに濃くなる不穏な空気。
日常なのに息苦しい圧迫感があり、1章よりしんどい。
結局この世界はどこも地獄らしい。
何章あるか知らなかった当時、いつまでこの地獄が続くんだとウンザリしながら楽しみました。
この「ウンザリ楽しい」感覚は他じゃ味わえないです。
先に進めば状況が良くなるかと思いきや、進めば進むほど鬱展開。
ゲームに慣れるほどプレイヤー自身の精神耐性も高まるので、後半は意外と平気かも。
プレイヤーに新たな趣味嗜好を植え付けるゲームです。
どんなグロ・うつ展開も受けて立つぜ!
気持ち悪すぎて気持ちいい
本作を表現した格言(?)があります。
「この世界には3種類の人間しかいない。それは狂った人間、人造人間、狂った人造人間」
不気味なキャラデザ、気持ち悪い台詞、重々しいグラフィック。
ゲームの雰囲気がとにかく重いんです。
誰も信用できないので一瞬たりとも安心できません。
1時間もプレイすると、どっと疲れが押し寄せます。
マネキンみたいなレンダリングだから表現できる気持ち悪さ。
生身とマネキンの区別がつかないCG絵です。
両者の境目が曖昧で気持ち悪く、独特の世界観が出ています。
化物みたいな奴ほど生き生きしており、まともな人間の方がマネキンに見えてくるのが面白いところ。
デザインした人の顔を見たくなるような、グロを通り越してもはやギャグなクリーチャーが山ほど登場します。
可愛いペット犬すら「遊星からの物体X」みたいになっちゃってる。
人間もパンチ効いた奴ばかり。
コイツらが会話画面では独特の台詞回しで、戦闘中は絶妙にキモいアニメーションでプレイヤーを魅了します。
本作の世界に慣れると普通の人がむしろ変に見えるから不思議。
「この人普通だな。怪しいぜ」みたいな。
システム紹介:マインドを見る&壊す
マインドダイブ
マインドダイブすると、言葉が重なって溢れ出します。
「殺」「死」「恐」「痛」などの言葉が踊り、不穏なBGM、SEが響く。
サブリミナル的に流れてくる言葉が、直接プレイヤーの精神に入ってくる感じです。
とりあえず自分の精神は無事なので、プレイヤーに悪影響は無いはず…
最強のマインド使い、アルーアさんに隠し事はできません。
マインドダイブすれば「あそこを見られたら終わり」「花畑に埋めた」など、隠し事をさらけ出します。
アルーアさんは最強なので、ときには相手の頭の中を直接イジって大人しくさせることも可能。
まあ世の中、見ない方が良いことも多いです。
下手に心を覗いたら気づかれて戦闘になったり、酷いときは強烈にネガティブな思念に襲われてHP1にされたり、ロクなことが無い。
ごくたまに「実直な男です」と良心を見るときもあります。
こんな世界では、ちょっとした良心が凄く希望に思える。
もうこれだけで生きていけると思えるほど。
マインドバトル
精神を具象化したマインドで戦い、相手の思念を砕くバトル。
戦闘では物理・精神世界の境界が曖昧な謎空間に連れて行かれます。
会話画面では普通の人間が、戦闘画面ではクリーチャー化。意味はわからないけど怖い。
戦闘の爽快感は薄めです。
・もっさり攻撃エフェクトなので手応えがいまいち
・与えるダメージが少ない
・敵の回避率が高い
よって、前半のダメージ源はアイテムと開放(マインド自爆)。
まあ、爽快感なんてどうでもいいのです。
本作の醍醐味である、気持ち悪い雰囲気を味わってください。
仲間として一緒に戦うマインドは、女神転生でいう仲魔みたいなもの。
敵が落とす「記憶素子」で作成&強化します。
マインドは「怨、愛、死」&絶(&神)の4属性。
要はRPGでおなじみの火や水と同じ、ジャンケンみたいな3すくみなのでシンプルです。
役割分担を考えてマインドを作成し、良さげなスキルを継承しながら強化でLVを上げます。
マインド作りの自由度は低め。
・同一マインドは作れない。
・記憶素子の稼ぎはできないので入手数が限られる。
そのため「怨・怨・怨・怨」みたいな偏ったパーティーは作りにくい。
とりあえずアタッカーの怨マインドを1、2体。
継承はバフ・デバフ系を選べばスムーズに攻略できます。
全60種類でスキル継承もある本格派とはいえ、「女神転生」みたいな仲魔合成を期待すると拍子抜けするかも。
モデルは色違いの使い回しが多いし、スキルの幅も少ないです。
「ADVだと思ってプレイしたら本格的なRPGの育成・戦闘要素があってラッキー」
ぐらいの気持ちで遊ぶのがちょうど良いかと。
作成&強化でスキル継承するうちグロい奴ばかりのマインドに愛着が湧き、可愛く見えてきます。
■攻略:マインドを入れ替えよう
前線・控えマインドを入れ替える便利さに気づくと一気に難易度が下がります。
というのも、控えマインドは2ターンほどでHP・MP全快&異常状態回復するから。
マインドは耐久力が低く、全体回復手段が少ないので回復が間に合いません。
燃費も悪い。大技使うとすぐMP枯渇します。
入れ替えを使わないと苦戦は必至。
ガンガン入れ替えちゃってください。
難点:バトル周りに難あり
ランダムエンカウントが面倒
移動中のランダムエンカウントが探索の邪魔。
右往左往する途中に延々と割り込まれて萎えます。
下水道、セクター12、病院など危険エリアはエンカウント率が高い。
一歩進むたびに戦闘になってツラいです。
ザコを倒す旨味が無いのもザコ戦がダルい要因。
というのも、
・ザコは記憶素子を落とさない
・LV上げは必要ない
よって、効率を求めるなら逃走アイテム「タントラリング」で逃げるだけの作業です。
50個ぐらい買い込めば最後まで足りる。でもエンカウント、逃走演出が長いのでどっちにしろテンポ悪い。
ランダムエンカウントは一部の区間に制限し、
「サブイベントをこなす→経験値と記憶素子を入手→ボス戦が有利になる」
流れを充実させた方が遊びやすいはず。
まあ、サブイベを作るリソースが無いから中途半端なランダムエンカにせざるを得ない、って事情はわかります。
周回特典でいいからエンカ無しになる装備品が欲しかったですね。
色んなイベントをみたり、1周目と違う遊び方をしたくてもランダムエンカが面倒くさくなるので。
毎回、どこかでミスってフィロトーマ入手し損ねるからもう1周したいんだけどな~
中盤から戦闘バランスがヌルい
先に進むほど、戦闘バランスがヌルくなります。
システムに不慣れで、ダメージ源が乏しい2章までは厳しい。
苦しまぎれのマインド開放でギリ倒せる感じ。
でも3章後半ぐらいからこちらの戦力だけインフレ。
HP400で被ダメージ20だから負けるわけ無いっす。
弱いわりに、一部のボスがやたら回復で粘るのがダルいところ。
瀕死でアイテム使って全快したり、やたら硬いマインドが毎ターン回復技使ったり。
こちらも回復手段が多々あるため負ける要素は無く、戦闘が長引くだけです。
・ラスボス戦はマインド即死コンボでビビります。
でもアルーア単騎の3対1でゴリ押しできるほど余裕。
・属性相性が悪くても与ダメージ半減程度。なので、結局は火力重視が強いです。
相手のマインド属性関係なく、怨マインド×2の全体攻撃ぶっ放せば良い。
アイテムのコスパがおかしいのもヌルゲー要因。
装備品の値段、特に武器がべらぼうに高い。全財産つぎ込んでも足りません。
しかも少し進むだけでもっと良い装備が売ってて「こっち買えば良かった」みたいなことになりがち。
そもそも、サポートに回ることが多いアルーアの攻撃力を上げても効果が薄いです。
対して消費アイテム「~珠」は固定50ダメージ。武器の金額で100個買えます。
ボス戦だけなら10個で足りるので武器に比べてコスパ良すぎ。武器を買う必要無い。
■コスパ良すぎアイテム
・スパイクニードル
アイテムとして使うと30固定ダメ。何度でも使える。
・電念珠
50固定ダメ。消耗品だけど安い。
・石化、混乱針
なんとボスにも確定で刺さる。値段に対して効果があまりにも強力。
「禁断の書」
さらに強力なのがこれ。
前半(2章)で入手可能かつ、最強クラスの全体攻撃を何度でも使えるゲームバランス崩壊アイテム。
消費なしで全体固定60ダメージ。
1個入手すれば最後まで武器・攻撃アイテム不要です。
攻略情報必須のオマケ要素なのが救い。
以下のようにフラグ立てがややこしいので、素で遊ぶとまず入手できません。
■ 「禁断の書」入手方法
・外道の書(怨Lv.6):2章
バーのマッチ入手前に、バザールの怪しい老婆を調べてトウコへ報告→あやしい老婆にダイブ。
禁断の書についての情報を入手→セス司祭に話を聞きに行く(一番下の選択肢) →大聖堂の使役信徒にダイブ。
カーラシャーマン打倒後にもう一度地下水路を漁って邪悪な気配を調べる。
・異端の書(怨Lv.5):3章
サン・メドク通りの階段裏で会えるキコの問いに「知らない豚→大好きな人の肉」。
・背徳の書(死Lv.3):3章
ジョニー打倒後から廃ビルで殺し屋と戦うまでにアルベール工場のジアンに会う。
前の会話が優先されるので貰えるまで何度も会う。
・涜神の書(愛Lv.3):5章
セクター12、閉鎖ブロックの独房。
・堕天の書(絶Lv.3):6章
再生の塔の本棚。
まとめ:気持ち悪すぎて気持ち良い
約15時間でクリア。
3章が長くて少々中だるみしつつ、濃厚な時間を味わいました。
最高に気持ち悪くて、プレイした後は妙にスッキリ。
これがカタルシス効果か。
テンポが悪いランダムエンカウントや、雑な戦闘バランスなど難点はあります。
でも本作のダークな魅力にハマれば難点はどうでもよくなる。
一度手を出せば、あなたは最後までプレイするしかないのです。
気持ち悪すぎてもはや気持ち良い本作は、あらゆるプレイヤーの心(マインド)にグサリと撃針を撃ち込むはず。
・お決まりの冒険とハッピーエンドな王道RPGに飽きた
・バイオハザードみたいなお化け屋敷系ホラーでは物足りない
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