ゴジラ

キングコング対ゴジラ【感想/評価】そりゃ子供から大人まで夢中になるわ

投稿日:2019-07-30 更新日:

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日米2大スター怪獣、夢の頂上決戦!

■あらすじ

自社製作テレビ番組「世界驚異シリーズ」の視聴率不振に悩むパシフィック製薬は、「巨大なる魔神」の噂を話題にするためファロ島へスタッフを派遣した。

現地に行ったスタッフは、大ダコと戦う魔神キングコングを目撃する。

一方で北極海では、前作で氷山に封印されたゴジラが7年ぶりに復活。日本へ向けて南下を開始した。

新しい企画「キングコングとゴジラはどっちが強い?」を思いついたパシフィック製薬は、キングコングを眠らせて日本へ運ぼうとする。

運搬中の太平洋上でキングコングが眠りから目覚め、運搬船から脱出して日本へ。

ゴジラも日本に上陸し2大怪獣は激突。
中禅寺湖で第一ラウンドが始まった。

公開:1962/8/11

 

怪獣映画最大のヒット作

「キングコング対ゴジラ」はシリーズ3作目。シリーズ初のカラー作品です。

怪獣対決は前作で実現したけど、中盤でアンギラスが途中退場して中途半端な感がありました。

本作は前作を超える、怪獣のガチンコ対決が楽しめます。
しかも相手はアメリカのスター怪獣、キングコング!

まずポスターが面白すぎます。ぶん回してます。
「あ~れ~」みたいなゴジラの体勢が(笑
劇中でもこのシーンがあります。でもポスターほどは回していません。

実は怪獣映画最大のヒット作
最終的には観客動員数1255万人を記録しました。この記録は現在でも邦画史上14位。なんと「ET」「アバター」より上です。

怪獣対決路線の大ヒットが、昭和ゴジラシリーズの方向性を決定づけました。

 

キングコングがいるファロ島はソロモン諸島の1つ。

ソロモン諸島といえば第二次世界大戦中、ガダルカナル島の戦いなどで日本軍とアメリカ軍が激戦を繰り広げた場所です。

ソロモン諸島をエンターテイメントの舞台として描くことで、日米が戦争の記憶をいったん消化し和解する。

日米2大怪獣の共演にはそういう意味もあります。

ノリはコミカル

ゴジラ映画史上屈指のお気楽ムード。コミカルなノリです。

主人公・桜井修(高島忠夫)達が属するパシフィック製薬は、キングコングが話題になると宣伝になり儲かるのでキングコングを応援。

ゴジラ復活を伝えるテレビや週刊誌のスポンサーはライバルのセントラル製薬なので、応援にも力が入ります。

「部長、旗色が悪くなってきましたね」
「負けちゃいかん負けちゃいかん」
とか、ゴジラが完全アウェイです。

最後は自衛隊や博士まで「共倒れ作戦」でキングコングを応援。

 

解説役の重沢博士(平田昭彦)は、目を細めて渋い顔をしながら終始テキトーなことばかり言っています。

キングコングが帯電体質になると、
「スイスにあった実例だが、ある郵便配達員が落雷に撃たれてね。運良く助かったんだが彼の体は蓄電池みたいになったことがあるんだ」
そんなアホな。

最後も、
「さぁね…今の僕に言えることは、人間はあらためて動植物の自然に適応する生命力に学ぶべきだ。それだけしか言えないね」
よくよく聞くと内容ゼロな重沢博士。

 

 

作り込みは本気

コミカルノリにしつつ、完成度の高さは歴代屈指。
7年ぶりのゴジラ映画ということで、相応の気合が乗っています。

 

まずオープニングでも流れるテーマ曲「ファロ島の祈りの歌」が格好いい。
2大怪獣の対決にふさわしいゾクゾクするような曲。期待が膨らみます。

前作の続編設定なので、ゴジラは前作で生き埋めにされた氷山から復活。
このときの原子力潜水艦の描写が秀逸で、「ただの氷山です→いや、違う!」の流れをしっかり描きます。
復活時の光を見た博士のセリフ「チェレンコフ光のようです」も燃える。

 

ファロ島の宴シーンでは、広いセットに作り込まれたオブジェクト。エキストラは百人以上。
踊り子も何十人といて動きがキレッキレ。手間と金をかけているのがひと目でわかります。(どう見ても全員日本人だけど。)

急行から降りる人や街から疎開する人のエキストラも多い。

急行にゴジラが迫る中で道案内をする警察官や自衛官が、恋人を助けようと強行突破する男をみて「バカたれ!バカたれ~!!」と注意するのが日本人らしくて面白いです。

 

山林のミニチュアは木の1本1本まで丁寧に作ってあるので雰囲気抜群。

クライマックスの熊本城はもちろん、最後の1カットだけ映る沿岸の民宿ミニチュアがリアルで驚きます。
バシャーン!と2体が海に落ちた衝撃で土石流が起こる様子もちゃんと描く。

 

土木工事の描写も素晴らしい。
はたらく車をミニチュアでしっかり描きます。
しかも次シーンで「穴掘り→フタ作り」と工事が次段階に進んでいる。

こういう地味な部分を丁寧に見せてくれると嬉しいですよね。
予算が無いと、土木工事みたいな描写はテレビごしのニュース映像で処理したり丸々カットされるので。

 

自衛隊の活躍も秀逸。
「埋没作戦→高圧線」二段構えの作戦を実行します。

・埋没作戦

両側の河川にガソリンを焚き、落とし穴に誘導。
ゴジラが落ちたら毒ガス火薬を爆発させて土中をガス室にする。

結果:毒ガス全然効いてない

 

・100万ボルト高圧線

結果
ゴジラ:「熱つっ!」とビビって進路変更
キングコング:100万ボルトは美味しく頂きました

この作戦により、本来電撃に強いはずのゴジラが逃げ帰り、キングコングは帯電体質になってパワーアップ。
結果的に、自衛隊の作戦はゴジラ対策として効果を発揮しました。

 

コミカルな人間ドラマはテンポが良く、ムダがありません。

ドラムが得意な主人公、糸の強度、倒れた相方のために赤い汁をとりにいかせた子供が大タコに襲われる、などなにげないシーンが全て伏線になっている。

 

総じて、
「とにかく良いものを作ってやる!」という作り手のやる気・余裕を感じる。
予算が減った後期昭和ゴジラを観てから本作を観ると、豪華な作りなのがわかります。

 

怪獣バトルが面白い!

怪獣バトルは、日米2大スター怪獣の対決にふさわしい面白さ。

キングコングは、ゴジラ怪獣にしては珍しく動ける体型なので躍動感があります。
対するゴジラは、どっしりした体型と悪役顔のキンゴジ。

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ゴジラ対策を考える知性を持つキングコングが、放射火炎と強力な尻尾攻撃を持つゴジラにあの手この手で立ち向かう。

この対決はシリーズ屈指の面白さです。

 

急斜面の地形を活かしたアクロバティックな戦いが繰り広げられます。

ヘリから落とされたキングコングが山の斜面を滑り落ち、そのままゴジラにスライディングキック!
斜面を存分に活用したアクションに、高島忠夫も「おお、すごいすごい」と興奮。

 

キングコングがゴジラの口に木を突っ込むシーンや、女性をさらって国会議事堂によじ登るシーンは初代キングコングのオマージュ。

 

ラストの、激しく戦いながら熱海城までなだれ込み城を両側から破壊するシーンは必見です。
本作から城破壊がゴジラ映画のお約束になりました。

 

もう「キングコング対巨大タコ」の時点で面白い。

本物のタコを使っているのでなのでぬたぁーっとしています。効果音もずっとヌチャヌチャ鳴ってる。
このタコをしつこいぐらい映すので画面がずっと生々しい。

こんなヌメヌメな巨大生物が襲ってきたら恐怖!

 

キングコングの魅力

本作の大きな魅力は、怪獣に恐さと可愛いさが同居している所でしょう。

ゴジラとキングコングの仕草が人間臭くて可愛い。

オリジナルのキングコングはゴリラっぽいイメージです。
本作ではオリジナルと大きく異なり体形や顔つきがニホンザル系統。日本人にも馴染みやすい造形で表情が愛嬌たっぷりです。

正面からいくとゴジラの方が強いので知能を活かして奇襲を狙います。
でもゴジラの強さに驚いて「ああダメだこりゃ~」ってな感じで頭掻いてあっさり退散する様が可愛い。

バンザイ状態で走るのも可愛い。
岩を投げる勢いで転び、そのまま滑り落ちて頭ぶつけてダウン。ドジすぎて可愛い。

この可愛さを観たらキングコングを応援したくなること間違いなし。

ちなみに日本版キングコングはオリジナルと大きく異なるため、アメリカでは日本におけるエメリッヒゴジラ並に不人気なのだとか。

 

本作のコングは、ゴジラに合わせてオリジナルの7mから45mに巨大化しています。

アメリカ製のコングはたいてい7~18mの設定。
最大でも「キングコング: 髑髏島の巨神」(2017年)の31.6mなので、日本版キングコングの45mは現在でもキングコング史上最大です。

オリジナルのように美女(浜美枝)をつかむシーンは、オリジナルの7mコングならわかるけど45mだとムチャです。もうどうやってつかんでるんだと。

このとき浜美枝さんが「助けてぇー恐い恐い!助けてぇー!うう…いやー!」とうるさい(笑

 

キンゴジの魅力

本作のゴジラ、通称「キンゴジ」は次作のモスゴジと並んでトップクラスの人気を誇るモデルです。

圧倒的な重量感、造形のインパクトは歴代モデルの中でも随一。

キンゴジの魅力は「不思議とイケメンに見える小さい頭部と、マッシブな体のギャップ」だと思います

ボディは下半身から上半身までマッシブ。
ゴジラにしては珍しく腕もごつい。力士みたい。
下半身がゴツいずんぐり体型のせいか、よちよち歩きみたいで可愛い。腕の構えも可愛い。

 

頭部はイケメン。

コングとの対比で爬虫類に寄せたデザインです。
この顔、なんと形容すればいいのでしょうか。堀りの深い外国人のようです。日本人でいうと阿部寛。

頭がやたら小さくて鼻や目がシュッとしてる一方、口裂け女のように口がデカい。

見る角度によりタレ目のようにも釣り目のようにも見え、違った印象になる味わい深さ。

 

この頭部・体のギャップにより、ずんぐりとイカつい中に爬虫類らしい洗練されたスマートさを感じるゴジラ。
見る人によって「格好いい」「可愛い」と色んな魅力を感じさせます。

 

 

最後は引き分け?

第1ラウンドはゴジラ、第2ラウンドはコングの勝ちで引き分けという見方が一般的です。

キングコングは雷で一時的にパワーアップしたから戦えたので、地力はゴジラの方が強そう。

キングコングは岩で生き埋め状態から尻尾叩きつけで滅多打ち、放射火炎で完全にグロッキー状態でした。
このとき岩が思いっきり顔にヒットしてるのが笑う。

運よく雷が直撃して復活し、タックルからテイクダウン。マウントとって帯電パンチで殴りまくり一気に形勢逆転。
2人はもつれ合いながら海に落ち、キングコングは悠々とファロ島に帰ります。

この後ゴジラは「モスラ対ゴジラ」まで眠っていたので、実質キングコングの勝利と考えて良いかもしれません。
でも雷さえ落ちなければゴジラ圧勝だし…

未だ決着のつかない話題です。

 

2020年公開予定のハリウッド版「ゴジラ vs キングコング」では監督のアダム・ウィンガードが「キッチリ勝敗を付ける」と明言しています。

さらに、
「僕は勝ち目のない戦いが好きなんです。ロッキーとイワン・ドラゴの対決みたく、フェアではなくても明快な戦いがいい。負けると思われている方がサプライズを繰り出すこともあるでしょう。」
と語っているので、劣勢といわれているキングコング勝利が濃厚か?

公開が楽しみですね。

 

まとめ

前作から画も内容も劇的に進化。
2大怪獣のネームバリューに負けない傑作です。

この進化を見せつけられたら、そりゃ子供から大人まで怪獣に夢中になるわ。

 

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