三大怪獣 地球最大の決戦 <東宝Blu-ray名作セレクション>
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キングギドラ初登場&ゴジラが初めて人間側についた!
■あらすじ
巨大隕石が黒部ダム付近へ落下した。
同じ頃、セルジナ公国のサルノ王を乗せたチャーター機は暗殺者によって墜落。
その後、金星人を名乗る女性が東京に現れ、キングギドラの襲来、ゴジラ、ラドン出現を予言する。しかし誰も信じず無視されてしまう。
予言は的中し3体の怪獣が現れた。
キングギドラが日本を破壊して回る一方、ゴジラとラドンが戦い始める。
キングギドラに対抗するため小美人が呼び寄せた幼虫モスラは「みんなで力を合わせてキングギドラと戦おう」とゴジラとラドンを説得。
始めは拒絶する2体だが、キングギドラに単身で戦いを挑むモスラを見て心を動かされる。
公開:1964/12/20
キチガイ扱いされるサルノ王女
「三大怪獣 地球最大の決戦怪獣」のストーリーは「ローマの休日」の影響が強いのだとか。
しかし、急に金星人の意思に目覚めたサルノ王女が「なぜ私の言うことを信じないのですか」と連呼してキチガイ扱いされる展開は意味不明です(笑
王女(金星人)は地球人に危機を知らせるため街頭に現れて演説するのですが、
「お前さん、男かよ女かよ。その辺でストリップでもしてみろよ」
「かわいそうに。あれが誇大妄想ってやつね」
「雪が降らずに日本脳炎が出るんだからな。無理ないよ」
と、今の時代なら確実に問題になるレベルで観衆にめちゃくちゃ言われます。
(バージョンによっては「キチガイ」が差別用語にあたるとして字幕がカットされているらしい)
その後、阿蘇山に現れてラドン出現を予言しますが、
「あんなキチガイの言うことなんか気にしない気にしない。僕がついてるよー」
と言うバカップルの男の帽子が飛ばされます。すると、
「どうです、拾ってきましょうか。拾い賃は700円。で、どうです?」
「いや、500円!えーい200円!どうです!」
と言う、品の無いオッサンが現れます。
王女は「おやめなさい、すぐに戻るのです」と言ってその男を止めようとしますが、
「うるせーなキチガイめ!商売の邪魔すんな!」
と、やはりキチガイ扱い。
昭和っぽい、品の無いやりとりがたまりません。こんなオッサンいそうだなー(笑
日本に現れた王女がカーキ色の小汚い服装になので余計に哀れです。
「これが金星人のファッションセンス?」と疑問に思いますが実はこの服、腕輪を交換して貰った哀れな男(喋り方のクセが強い漁師)の服です。ほんとっしゅよ!
結局、金星人は何が言いたいのかわかりませんね。
文明が地球よりはるかに発達した金星を根こそぎ破壊する怪獣ならどこに避難してもムダじゃないか。
「このままでは地球は死の星になります」って言うなら倒す方法を教えてくれ!
王女は崖から10mぐらい落下して岩に叩きつけられたりと最後まで散々でしたが、ラストシーンだけは「ローマの休日」を思わせる美しさで印象的。
このシーンだけで東宝の実力がわかります。
サルノ王女役の若林映子さんがハマってますね。
当時の東宝は、司葉子・星由里子がツートップなので若林映子・水野久美クラスでもちょい下の役ばかりやらされたんだとか。
当時は本当に選ばれし顔面だけが映画に出れる時代だったんですねー。
コミュ力最強の幼虫モスラ
王女の他では、やたら目立つのが小美人(ザ・ピーナッツ)。
小美人が劇中のテレビ番組に楽しそうに出演しており新曲「幸せを呼ぼう」をがっつり2番まで歌います。
このときインファント島の人がめっちゃ祈ってるのが笑う。テレビ番組のためでも祈るのか。
この曲は後半、また2番まで歌うので恐ろしく間延びします。その分、嫌というほど凄く耳に残る。
この小美人の働きかけで幼虫モスラが出動。
協力してキングギドラを倒すよう、幼虫モスラがゴジラ・ラドンを説得します。
この幼虫モスラ、幼虫のくせにコミュ力が半端じゃない!
「争いをやめてみんなで力を合わせて地球をキングギドラの暴力から守ろう」
「いままでのゆきがかりはさっぱりと捨てようではないか」
と幼虫とは思えない台詞で説得するのが笑う。
言葉による説得を諦め、単身でキングギドラに挑みボコボコにされる幼虫モスラの姿を見てゴジラ・ラドンは心を動かされます。
おそらくこれも幼虫モスラの計算通りの展開。恐るべし、幼虫モスラ。
昭和ゴジラの方向性を決定づけたキングギドラ戦
引力光線による街破壊シーンはこの迫力。
豊富な破壊カットをしつこいぐらい入れているのでキングギドラがいかにヤバい奴かわかります。
このシーン、非常に出来が良いため後期昭和ゴジラ作品で何度か使い回されることに。
怪獣バトルは「地球最大の決戦」というわりにサッカーのように岩を蹴り合ったり戦い方がコミカルでなごみます。
ただ数が多いだけでなく、3体がしっかり協力しているのが好印象。
ゴジラの尻尾を咥えて坂をのぼるモスラ幼虫は可愛いし、ラドン・モスラの合体攻撃は萌えます。
で、締めはやっぱり投石攻撃。
ゴジラは格闘戦に不向きな体型なので、攻撃といえば岩を蹴り飛ばすか尻尾で叩きつけるしかないんですよね。それが後作のマンネリ化にもつながるわけです。
キングギドラの首のクネクネ感が素晴らしい。これぞ操演の醍醐味。
キングギドラの動きは本作と次の「怪獣大戦争」が2作がダントツに良いです。時を経るほど劣化していきます。
生き物としては不自然なぐらい動くけど宇宙怪獣なのでOK。
本作から、海外受けを意識した「富士山を背景にしたクライマックスシーン」が定着しました。
ちなみにタイトルで三大怪獣といいながら怪獣が4体出てきますが、三大怪獣とは地球側のゴジラ・ラドン・モスラのことでキングギドラは含みません。
まとめ
金星人の意思に目覚めた王女、テレビ出演をこなす小美人などストーリーはかなり荒唐無稽。
3体が鳴き声で意思疎通したり、戦い方がコミカル。
特撮映画としては「対モスラ」で極まってしまったので、カジュアルな作風にシフトせざるを得ないのは仕方ないところ。
この作風がヒットして昭和ゴジラの方向性を決定づけました。
本作以降、ゴジラ映画は良く言えばサービス精神・バリエーション重視、悪く言えば粗製乱造スタイルになります。