ゴジラVSビオランテ <東宝Blu-ray名作セレクション>
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前作:ゴジラ (’84)
次作:ゴジラvsキングギドラ
もくじ
バイオテクノロジーに警鐘を鳴らす
あらすじ
1985年、ゴジラ襲撃から一夜明けた新宿では自衛隊がゴジラの体の破片を回収していた。
そのとき、米国のバイオメジャーが忍び込みG細胞を採取するが、サラジア共和国のエージェントにより射殺されG細胞も彼の手に渡る。
G細胞は白神博士の実験に使用されていた。しかし、バイオメジャーによって研究室が爆破され、白神博士はG細胞と娘を失う。
それから5年後、再び活動の兆しを見せたゴジラに備え、国土庁は核物質を食べるバクテリア「抗核エネルギーバクテリア」開発を白神博士に依頼する。
一度は断った白神博士だが、G細胞を1週間借りることを条件に承諾。
数日後、芦ノ湖に巨大なバラの怪獣が出現する。
それは白神が、娘の細胞を融合させたバラにG細胞を組み込んで生まれた怪獣ビオランテだった。
同じ頃、バイオメジャーによる三原山爆破によりゴジラが復活してしまう。
ゴジラから生まれたビオランテと、それに引き寄せられるように進撃するゴジラは激突し壮絶な闘いが始まる。
公開:1989/12/16
3国による三つどもえの争奪戦
ゴジラ映画は毎作、なにかしらの社会問題を訴えるメッセージが入っています。
「ゴジラvsビオランテ」は遺伝子組換えなどのバイオテクノロジーに警鐘を鳴らす話。
当時は「バイオテクノロジーが命をもて遊ぶ」ことへの問題意識が高かったようです。
ゴジラ細胞をめぐり、
・ゴジラ細胞を盗むアメリカのバイオメジャー
・それを奪うサラジア共和国のエージェント
・それを追う日本の自衛官
以上の3国による三つどもえの争奪戦が繰り広げられます。
ゴジラとテレパシーできる超能力少女、三枝未希が初登場。
三枝未希は平成シリーズの時系列がつながっていることを示すアイコン。ときにメインとして、ときに無理やり端役で「vsデストロイア」まで出演し続けます。
前作に引き続き、すぎやまこういちBGMで異質な雰囲気。
ゴジラ総選挙で1位?嘘でしよ
「ゴジラvsビオランテ」はゴジラ総選挙で1位に選ばれたらしいのですが、絶対なにかの間違いだと思うんですよ。
次作「vsキングギドラ」ほど破綻はしていませんが、端々が粗く突っ込みどころ満載。
細かく言及するとキリが無いので、目立って気になる部分を大きく3点に分けて紹介します。
人間ドラマがグダグダ!
人間ドラマ部分の出来はお世辞にも良いとはいえない。グダグダです。
ゴタゴタしたあげくゴジラが復活、ビオランテは生まれるし、抗核バクテリアは盗まれるし、踏んだり蹴ったり。
三つどもえの争奪戦でチープなカーチェイスなど色んな場面が差し込まれるため、とっ散らかってる印象。
抗核バクテリアという日本の命運を左右するようなものをたった2人、しかも自衛官と科学者のコンビで探してる状況も冷静に考えるとオカシイ。
グダグダな印象を受ける原因は演出にもあります。
例えば、「それじゃあ、みんなが見た夢の絵を先生に見せて」「はーい」でゴジラのテーマとともに一斉にゴジラの絵が出るシーンはめちゃかっこ良いのですが、次のシーンで流れがぶつ切りになり冷める。
テーマが流したままゴジラ活動開始シーンになだれ込むとか、そういう勢い・まとまりのある演出が欲しい。
台詞が嘘くさいのも気になります。
「あなたはロミオのつもかもしれないけど、私はジュリエットをやる気はないわ」
とか日常会話で言わないでしょ。
サラジアのエージェントと肉弾戦で互角に戦う科学者、三田村邦彦。
一段落して恋人がかけた言葉が「バットマンみたいだった(笑顔)」。
人間ドラマがメインになり、ゴジラには覇気が無くなりました。
1人の少女に誘導され、抗核バクテリア経口投与でパタりと倒れるゴジラ。
この倒れるカットだけどう見ても着ぐるみで、全くスケール感がないのが悲しいです。
最後のメッセージ「思い出して下さい、もう一度」と言われて、「何を?」と思ってしまいました。
ゴジラも結局倒せてないじゃないか。次の日また来たらどうするんだろう。
サラジアのエージェントがガリガリ!
ガリガリやないかい!
こんなエージェントいないだろ(笑
サラジアのエージェントが出てきた途端に安っぽい画になります。
嘘くさい演技で、英語もへったくそです。
「キスユーガイズ」「ガッデム!ゴズィラ!」
また、エージェントが出てくるような場面ではBGMが妙にコミカルで緊張感がありません。
ただサラジアのエージェントは非常に優秀。
生育中のビオランテに襲われても靴から取り出したナイフで必死に抵抗し生き残っています。
このときの演技がまた嘘くさくて笑うのですが。
ビオランテを作った白神博士がお咎めなし!
「植物+娘+ゴジラ」と3つ組み合わせてビオランテを作った白神博士はダントツで罪深い。
にも関わらず白神博士はお咎めなしで、ビオランテを作った後もずっとエラそうにしています。これは納得できない。
重要な会議にも参加して専門家として見解を述べたりしてますが、ビオランテを作った人間の言うことなんて信用できませんよ。
ゴジラとビオランテが戦う最中に白神博士が、
「兄弟などではない!文字通りの分身だ。同じ細胞で一方は動物、一方は植物」
とエラそうに解説するのですが、一方はお前が作ったんじゃねーか!
どういう神経してるんだこのオッサン。
そんな博士よってビオランテにされた娘の感情も最後まで理解できません。
ビオランテが最後に言った「ありがとう」は意味がわからない。「ゴジラを倒してくれてありがとう」ってことでしょうか。
花獣形態のときに「お願い、助けて」って言ってたから博士を良く思っていないはずなのですが。
自分がビオランテなら「こんな姿にしやがって!絶対に許さん!」と暴れまわりますよ。
超ゴジラ、ビオランテは見応えあり
ビオランテ汁プッシャー!
ゴジラ怪獣史上最も禍々しい見た目ですが人間(悪い奴以外)に危害を加えない良い怪獣です。なんせ中身は沢口靖子さんなので。
霧がたちこめる夜の若狭湾をドドドド~と突進する映像が素晴らしい。
操演の極地といえる動きを見せてくれます。
これに対抗できるのは「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」のクモンガぐらいでしょう。
触手はいとも簡単にゴジラの手を貫通します。これはゴジラ映画の中でも珍しいダメージ描写。
ビオランテは元が植物がということで防御力が低く、熱線であっさり弾け飛んでしまいます。
それでも再生能力が高そうなので完全に倒すのは難しそう。中身が博士の娘じゃなければ本当にゴジラ以上の怪物になっていたかも。
「いったいどうなるんだ」
「勝った方が我々の敵になるだけです」
は名台詞ですね。
まとめ
粗いけど新しいものを作ろうとする熱がある作品。
特撮にとってはいい時代だったなーと思います。
最後に余談を。
鈴木京香さんが自衛隊のオペレーターとして出演しています。出番は少ないけど美しいお顔と美声がキラリと光る。
個人的に本作のヒロインは田中好子さんでも小高恵美さんでもなく鈴木京香さんだと思っております。
ちなみに隣のオペレーター、豊原功補さんは次作「vsキングギドラ」の主役。
鈴木京香さん主演のゴジラも観てみたかったですね。