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歴代ワースト1位でも後期昭和ゴジラの最高傑作
■あらすじ
前作で海に沈んだメカゴジラの残骸を調査していた潜水艦が「恐龍」という言葉を残して消息を絶つ。
原因は15年前に学会を追放された真船信三博士が操るチタノザウルス。
前作で野望を阻まれたブラックホール第3惑星人は、その真船博士と手を組みでメカゴジラを修復。メカゴジラIIとして復活させた。
チタノザウルスとメカゴジラは横須賀に上陸。徹底的に街を破壊し始めた。
子供がゴジラに助けを求めたとき、ゴジラが姿を現す。
公開:1975/3/15
メカゴジラの逆襲は昭和シリーズ最後の作品。
ゴジラシリーズ観客動員数、歴代ワースト1位の97万人。
あの「ゴジラ対メガロ 」の98万人を下回ってしまいました。これはツラい。
本作の観客動員数が原因の1つになり次作のゴジラ(84)まで9年間、シリーズがいったん休止状態になりました。
では本作は駄作なのかといえばとんでもない、後期昭和ゴジラで最高傑作といえる作品です。
低予算でシリーズが落ちぶれる中、よくぞここまで持ち直した!感動した!
大人向けのシリアスなストーリー
前作「ゴジラ対メカゴジラ」の続編ですが、作風が前作と別物。
東宝は落ち込んでいる観客動員を増やすため、大人向け路線への復帰を試みています。
監督はリアリティを追求する本多猪四郎さん。
「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」以来、久しぶりのゴジラ映画復帰。
大人向けのシリアス&ロマンスな雰囲気は後期昭和ゴジラに無いもの。
ブラックホール第3惑星人と真船博士が高笑いしてる以外、笑いは一切ありません。ヒロインも笑いません。
大人向けということでキャストの見栄えが良い。
・真船桂(藍とも子)
・真船博士(平田昭彦)
この真船親子がいい味出してます。
藍とも子さんは粒ぞろいのゴジラヒロインの中でもひときわ美しい。
感情を押し殺しているわりに色んなファッションを見せてくれるのが嬉しいところ。クリスマスみたいなポンチョが可愛い。
大人向けなのでヌードっぽい描写があったりします。女性の胸が映るのはゴジラ史上唯一で、今後も無いでしょう。作り物感が強いのでエロくはない。
平田昭彦さんの続投も嬉しいのですが、キャラとメイクが濃すぎて平田要素が薄い(笑
前作の宮島博士とはまるで違うマッドサイエンティスト。狂ってます。
自分の正しさを証明して学会に復讐するため、チタノザウルスを暴れさせる狂気。
この一切笑えない雰囲気の中、シリアスなドラマが展開されます。
真船博士は以下2つの研究を学会に否定されました。
・動物を科学的にコントロールする研究(必ずしも成功ではない)
・海底で恐竜を発見した
「きょーりゅう」の発音が気になるのは置いといて、
1つ1つなら真っ当なのに2つの研究を組み合わせようとしたのが謎です。
そりゃ学会追放されるわ。それぞれ別に研究すりゃいいのに。
そんな狂った博士と、前作で敗れたブラックホール第3惑星人が協力し地球人の殲滅を開始。
助手でもある博士の娘、真船桂は父が大好きなので心の奥で疑問を感じながらも協力しています。
ブラックホール第3惑星人は桂の事故死直後に現れて博士に恩を売ったので、事故から仕組まれていた可能性が高い。その考えると真船親子は本当に悲惨です。
久々の街破壊、プロレス感が無い死闘
特撮の出来も素晴らしい。
ここ数作、予算不足でカットされてきた
・都市破壊
・群衆の避難
・自衛隊の戦闘
といった見応えあるシーンが復活!
ゴジラシリーズはしばらく低予算でミニチュアの新規破壊シーンが無かっただけに、本作の街破壊は久々に気持ちが良いです。
火薬の量を間違えてるんじゃないかと思うほどの大爆発。
メカゴジラがビームで薙ぎ払った後、「次は俺の番だ」と言わんばかりにチタノザウルスが突風攻撃!
中でも特筆すべきはメカゴジラの新兵器フィンガーミサイル。
ドゴォッ!とセットの床から盛り返してます。
この威力の前にはチタノザウルスの突風攻撃もかすみますね。
撃つ前にピカピカとメカゴジラの足元がスパークする演出がまた格好いい。
高威力な分、予備動作が長くて打ち出されるまでハラハラするとか、気の利いた演出もニクい。
子供が危機に陥ると、どこからともなくゴジラ出現!
このまま街でバトルが始まるのか?
と思いきやチタノザウルスに腹をひと蹴りされて郊外に飛ばされて戦場が荒野に移行(笑
でも荒野といっても今までのように富士山を背景にした何も無い荒野ではなく、建築現場や住宅があったりして開発途中っぽいのがリアルです。
前作はキングシーサーとタッグでようやくメカゴジラを倒せました。しかし今回のゴジラは孤立無援。
しかも今度は逆に1対2でゴジラは数的不利です。
メカゴジラだけでも勝てないのに2対1はムリだろ!
この状況で、今までのような怪獣プロレスとは一味違う凄惨な戦いが繰り広げられます。
チタノザウルスとメカゴジラが並んでいる光景は絶望的。勝てる気がしません。
メカゴジラが後方支援に徹しているのが不気味。
チタノザウルスは接近戦のパワーが凄い。
鼻先に噛みつきながらボディブローでゴジラの体を跳ね上げます。
チタノザウルスにボコられ弱ったゴジラに、メカゴジラがトドメとばかりにフィンガーミサイルをドン!
体内で爆発したのか口から煙を吹いて倒れるゴジラ。
1回地面を盛り返す威力を見てるから「これ食らったらヤバい」ことがわかる。
その後、生き埋めにされた上にしつこいぐらい踏みつけられます。酷い、酷すぎる。
しかし今回のゴジラはタフで、生き埋めから飛び出し不意打ち放射火炎。
敵が強いからこそ、ゴジラの強さが引き立ちます。
火薬の量おかしいだろ!
メカゴジラが全火力を開放する中、ゴジラが一直線に走ってくるシーンは必見。
前作同様、ゴジラが見えないほどの爆炎。
スーツ燃えてるし、ゴジラが本気に命がけでカメラまで走ってきているかのよう。
発射してるメカゴジラ自身も硝煙で見えません。
このシーンの迫力はシリーズ史上最高かも。
ところで、チタノザウルスは真船博士の都合で操られた上にゴジラにボコられてかわいそうです。
本作一番の被害者なのでは。
「これからは桂さんが基地となる」
ブラックホール第3惑星人は、メカゴジラの天敵ゴジラに博士ご自慢のチタノザウルスをぶつけて弱体化させるのが目的。
ゴジラとタイマンでは分が悪いと思っており、前作で敗北したせいか弱気です。
「これからは桂さんが基地となる」
というコントロール装置の移植はムリヤリな気がします。
桂の脳波とリンクさせてメカゴジラを操ることで頭部が破壊されても活動できるらしいのですが。
ボスのムガールが自分とリンクさせれば良くね?
サイボーグが必要なら自分や部下をサイボーグ化すれば良くね?
とか色々な疑問が湧いてきます。
怒りに萌える桂さんの脳派でメカゴジラのパワー倍増ってことでしょうか。
ブラックホール第3惑星人は拠点警備と人質管理がガバガバなので、コントロール装置の場所よりそっちを反省しろと言いたい。首取れても戦えるとかそういうことじゃないだろ(笑
まあ、細かい部分は気にしなければ良いんです。
特撮なんて雰囲気です雰囲気。なんかSFチックな雰囲気出てるからOK。
いかにも70年代SFって感じのシルバーでビカビカな研究室も雰囲気出てます。
この研究所シーンを観た彼女が「これコント?」と言ってました。
いやいや違うから、これをマネして作ったのがコントのセットだから。
このピカピカなシルバーでカラフルなランプが光るヘンテコ機械が45年前の最先端ビジュアルなのだよ。
ただブラックホール第3惑星人のヘルメットだけは気になります。バイキンマンやん。
まとめ
久しぶりの大人向けゴジラで見応えがありました。
観客動員が低かったのは、内容のせいというより時代と合わなかったのでしょう。
怪獣映画は子供か特撮ファンしか観ない時代に、子供を切り捨てた結果だと思います。
内容に難をいえばゴジラの存在感が薄いのが難点でしょうか。
極端な話、本作はゴジラ不在でも成立します。
例えば、
「チタノザウルスはシンパシーを感じた藍とも子を助けるためにメカゴジラと戦い、メカゴジラは藍とも子の犠牲でコントロール装置を破壊されて負ける。チタノザウルスは悲しみにくれながら海へ帰っていく。人間が愚かなことを繰り返せばチタノザウルスがまた現れるかもしれない…」
みたいな展開でも問題ない。
もはやゴジラを主役できないほどシリーズがマンネリ化したのがシリーズ休止になった要因といえます。
最後はまるでゴジラが「さようなら」と言ってるように見えます。
最終作のつもりで作っていないのに、ゴジラが夕日照らされる切ない終わり方でしばらくお別れ的な雰囲気が出ているのは不思議ですね。