怪獣島の決戦 ゴジラの息子 <東宝Blu-ray名作セレクション>
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前作:ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘
次作:怪獣総進撃
このグレー色の醜いカタマリが息子?
■あらすじ
ゾルゲル島では食糧問題解決ため気象実験「シャーベット計画」が行われていた。
いよいよ実験が開始されるが、謎の電波により実験は失敗。その影響で島は異常気象になってしまう。
異常気象により巨大カマキリが怪獣カマキラスへ変異。
カマキラスは小山に大きな卵を発見する。
その卵から怪獣の幼体が誕生。カマキラスがその幼体に襲いかかるところへゴジラが現れ、幼体「ミニラ」を連れ帰る。
こうしてゴジラとミニラの島での親子生活が始まった。
公開:1967/12/16
「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」にはタイトル通り、ゴジラの息子であるミニラが登場します。
「あ、あれは何だ!」「ゴジラだー!」
と冒頭からゴジラが雑に登場しますが、見どころは別。
ゴジラは何を目指して進んでいるのか?その島に何があるのか!?
そこが本作の目玉です。
しかし初見では「このグレー色の醜いカタマリが息子?」とあ然とすること間違いなし。スターウォーズに出てきそう。
卵から生まれたけどこの卵、いったい誰が産んだのでしょうか。
監督の福田純は「この作品のゴジラはオスです」とコメント。
ママは誰なんだ?交配せずに卵を産める種なのか?と色々疑問が出てきます。
そもそも、ゴジラ同種かどうか定かではないんですよね。人間が勝手に息子と呼んでるだけで。
ゴジラは突然変異で生まれた怪物だから同じ姿にはなれないはずだし。
でも似たような熱線を吐けるってことはやっぱりゴジラの息子なのか?
謎は深まります。
ゴジラの息子かどうかはともかく、
ミニラはブサイクな上に着ぐるみが分厚いせいで動きがぎこちなく、「クウァークウァー」(たぶんパパーって言ってる)と鳴くのがなんとも哀れ。哀れすぎて可愛くなってきます。
生まれたてで3匹のカマキラスにボコられ、ゴジラには「カマキラスなんぞにやられおって」と叱られるミニラ。いやいや、生まれたてだからムリだろ。
そんな厳しい教育を受けても、雪に足を取られて寒さで立ち上がれなくなっても、頑張ってゴジラについていこうとするミニラ。
そんなミニラが最後は愛おしくなります。
しかしミニラの人気はイマイチだったようで、昭和シリーズでミニラが出るのは本作含めて以下の3作のみ。
「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」
「怪獣総進撃」
「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」
平成シリーズではベビーゴジラに息子の座を奪われ、次に登場するのはミレニアムシリーズの最後「ゴジラ FANAL WARS」です。
ベビーゴジラのデザインはあざとすぎるし、ミニラはブサイクすぎる。中間が無い(笑
あと、ゴジラの造形は順調にブサイク路線を突き進んでおります。
高島忠夫率いるコミカルな探索隊
初見では「くだらね~」と思った人間ドラマ部分ですが何度も観るとがなかなか面白い。
チームで秘境を冒険する感じが出ています。
まず秘密実験にも関わらず、拠点入口にテーマパークみたいに「ゾルゲル島シャーベット計画」とデカデカと書いてあるのが面白い。
コミカルといえば高島忠夫さんです。
「キングコング対ゴジラ」からたった5年ですが、お年を召されて上司の役。
白髪まじりでパイプをくわえた姿には貫禄があります。
本作はゴジラ映画初の海外ロケで、メインキャストはグアムに行って撮影しました。
しかし高島忠夫さんのみ飛行機が恐いからダダをこねたので、仕方なくロケの撮影では代役を立てたのだとか。
それでもメインに起用せざるおえないところに高島忠夫さんの力が伺えますね。
実験隊はわかりやすいバカキャラ揃い。
気温を下げる実験が失敗して逆に摂氏70℃の異常高温になってしまい猛暑、実験基地はボロボロ。
さらに海からはゴジラ出現で、居住区を破壊された隊員はノイローゼ気味。
古川(土屋嘉男)なんて、まだトラブルが起きてない前半から
「早く実験を済ませて帰りたいんだ!余計な邪魔をするな!」
とキレ気味。
しかし、調査船がこちらに向かっていると聞いたとたん「やろう!みんな、やろうじゃないか!」と隊員の中で一番やる気を出すのが笑う。
こんな状況の中、どうやってチームの統率をとればいいのか。
隊長の楠見博士(高島忠夫)がどういう判断を下すのかが見どころ。
とても精鋭部隊とは思えないメンバーの中に渋顔の平田昭彦さんが混ざってるのも良い味。
そして変なヘッドホンの付け方。平田さんの顔が小さいのかヘッドホンがデカいのか。
核兵器並みの秘密実験なのに勝手にやってきた自称ジャーナリスト、真城(久保明)を仲間にしちゃいます。
勝手に来て「いいネタの臭いを嗅ぎつけると腹の虫がグーグー鳴るんです」って知らんがな!
この真城が、海辺で泳いでいる原住民の美しい女性サエコ(前田美波里)を見つけます。
こんな巨大カマキリ&クモンガがいる島で1人で暮らす美人、しかも日本人!これは夢か幻か。
このルックスで小学生みたいな精神年齢と喋り方は反則だろ。
怪獣大戦争の沢井桂子さんといい、久保明さんは毎回絶世の美女と絡んでますね。うらやましい。
トラブル続きでついに隊員5人倒れてしまい、新たな拠点の洞窟もクモンガに襲われてしまう実験隊。
これには楠見博士も「こんな状況では実験を諦めるしかない」と言います。
そりゃそうだ。実験も失敗したし、わざわざ怪獣だらけの島で実験する必要はない。
いったん体勢を整えるべきです。こんな環境だとリアルな話、サエコさんの身が危ないですよ。
でも諦めてないんですよねーこの隊長は。2度目のチャンスに賭けます。
真城&サエコがクモンガから命からがら逃げ出した直後、隊長と「まだ実験を諦めてないんですね」と爽やかに会話してるのは笑う。
色々とハラハラする人間ドラマ部分。
子供向けのようで、大人目線でも楽しめる絶妙なバランスだと思いました。
特撮の見どころはクモンガ
特撮では敵怪獣が見どころ。
カマキラスとクモンガは操演の動きがやけにリアルです。
ただ、カマキラスは怪獣化する前の時点で怪獣みたいなサイズなので異常気温による突然変異がわかりにくいのが惜しい。
このカマキラスにタイマンを挑むミニラですが、この島にはもっと強い怪獣が潜んでいたのです!
それが本作の大ボス、クモンガ。
一見地味な怪獣だけどめっちゃ強くて怖い!そして良い動き。
アゴ2本、足8本がそれぞれ躍動感あふれる動きをしています。
「いったい何人で操演するとこんな動きが可能なんだ?」
と思って調べた所、なんと20人がかりで動かしているらしい。
人間を執拗に追いかけ、住んでいる洞窟の出入口を糸で塞いだりと容赦ない奴。
カマキラスなんぞ何体相手だろうが敵ではない。ゴジラ相手にも互角以上に戦います。
糸攻撃は幼虫モスラ並の拘束効果があり、これで相手を捉えて毒針を狙う。ゴジラは毒針を顔面に食らってクラクラ。
ゴジラをもう一歩のところまで追い詰めましたがミニラの加勢で形勢逆転。
放射火炎には分が悪いようで最後は燃やされてしまいました。
まとめ
未開の自然は存分に堪能できますが、怪獣映画としてはやはり人工物を壊してほしかった気がします。
最後のゴジラ親子の演技は素晴らしい。
立ち上がれないけどゴジラについていきたい…それを見てついに放おっておけなくなるゴジラ。
ラストの、雪の降る中で抱き合うゴジラ親子は良い画ですね。
ゴジラ映画の中で「vsデストロイア」ラストに並ぶ切ないシーンだと思います。
人間側の終わり方も、前作が上手い伏線になっていて面白い。
ゴジラ映画としては不満が残りますが、娯楽映画としてしっかり作ってあるので楽しめます。