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出し惜しみなしの怪獣アベンジャーズ
■あらすじ
20世紀末(1994年)、国連科学委員会は硫黄島に宇宙港を建設。
怪獣たちを小笠原諸島(怪獣ランド)に集めて管理していた。
しかし怪獣ランドに突然謎のガスが充満。その後、逃げ出した怪獣たちが世界各地に出現して街を破壊。
原因を突き止めるため、国連科学委員会は月ロケット「ムーンライトSY-3」艇長の山辺克男に怪獣ランドの調査を依頼。
怪獣ランドの職員によって怪獣がリモートコントロールされていることを突き止めたとき、職員たちを操るキラアク星人が姿を現す。
公開:1968/8/1
怪獣総進撃は怪獣対決路線の総決算、オールスター的な作品。
怪獣を集めて「怪獣ランド」を作った人間と、地球を侵略しに来た宇宙人の戦いが描かれます。
今風にいうと怪獣アベンジャーズ。世界よ、これが特撮だ!
当時、怪獣ブームに陰りが見えはじめており、本作で怪獣映画の終了を予定していたので出し惜しみなし。
なんと怪獣が11体も登場します。
この数は「ゴジラ FINAL WARS」(2004年)までシリーズ最多。
ただしバラン、バラゴンはほとんど登場しないので実質9種類です。エンディングにムササビもどきみたいな奴が一瞬映るのはたぶん気のせい。
特撮は端々まで素晴らしい仕上がり。小物やコスチュームも力作で妙な説得力があります。
モスクワ、ニューヨークなど世界各地で暴れる怪獣たちや、集団暴行されるキングギドラは他では観れません。
おそらくゴジラ映画史上最も未来の話。
最後のつもりなので、ついに怪獣をコントロールできたという設定になっています。
人間に囚われ、怪獣ランドで仲良く暮らす怪獣たち。
しかし小笠原諸島で全員共存って、なんかスケールが小さいような気が。インファイト島にいるはずのモスラまで囚われているのも気になります。
怪獣ランドの陸には管制装置。これで怪獣の脱走を防ぐのですが「本能と習性に応じて科学的な壁が設けてある」以上の説明がありません。
空にはいたるところに磁気防壁。凄い科学力だ。
「ここには怪獣達の食べ物が豊富に栽培され養殖されていて自由に食べられる」
とかわりと普通のこと言ってるのに、おどろおどろしいBGMなのが笑う。
あと「国連科学委員会は硫黄島に宇宙港を建設」って、なんつーことするんですか。
日本の領土、しかも歴史的に非常に重要な場所に国連基地をおっ立てるなんて。
時代が時代だけに、国際協調のシンボルである国連を重視していますね。
近未来だけあって、人間の科学力も宇宙人に負けていません。
宇宙艇「ムーンライトSY-3」の活躍が光ります。
洗練されたデザインのくすんだシルバーボディにジェットの青い炎が綺麗。
今でも格好よく見えるデザインって凄いですね。
性能も凄い。
・大気圏内での最大速度はラドン以上
・UFOに取り付かれても急旋回で振り切る機動力
・ゴジラの熱線に耐えられる機体強度
・垂直離着陸可能
さらに、探検車とミサイルを搭載。
・ミサイルはUFOを一撃で仕留める
・探検車のメーサー砲4門は、月キラアク基地のバリアを突き破って単独で基地を破壊するほど強力。しかも分解して携行可能
というトンデモメカ。
最終的に決着をつけるのもムーンライトSY-3だったりします。
総じて、いつゴジラが出てきたか覚えていないほどゴジラの存在感が薄い作品。
しかしSFモノとして豪華なので見応えはあります。
雑なノリが楽しい
上記のようにかなりハチャメチャな設定で、お祭り映画っぽい突っ切ったノリが楽しいです。
「協力もヘチマもないでしょ!怪獣を野放しにして!」とかセリフが雑(笑
記者会見で関係者の博士が、
「なんにもわからないんだ」
「今答えられる材料は何一つない」
「それは私が一番知りたい問題の1つだ。知ってる人は教えてもらいたい」
とか開き直ってるのが笑う。
おなじみの決戦地、富士山ではアナウンサーがのんきに実況中継。
「一番乗りはゴジラか、ラドンか、アンギラスか」
「ゴジラを先頭にした怪獣軍。まことに壮観です!」
「このすさまじい怪獣達の叫び声をお聞きください!」
完全に怪獣プロレスですね。
「地球は人間だけのものではない」というキラアク星人。
これに似た台詞をどこかの総理大臣が言ってたような…
その言動に頭にきた隊員がキラアク星人に襲いかかるのですが、どう見ても胸触りにいってます。
キラアク星人が全身タイツみたいなコスチュームだから余計ひわいに見える。
ちなみに、「キラアク」は忠臣蔵の吉良上野介の姓「キラ」と役柄「悪(アク)」から作った名称です。
(本作は最初「怪獣忠臣蔵」という企画だった)
ヒロインの真鍋杏子(小林夕岐子)が美しい。ゴジラ映画のヒロインは外れないですね。(毎作言ってる)
杏子さんはキラアクに洗脳されています。
それを主人公カツオが解くのですが、愛の力で我に戻るとかじゃなくて完全に力ずく。力ずくでイヤリングを奪います。なぜイヤリングに洗脳装置があるとわかったのかは謎。
このとき周りに山ほど人がいるけど一歩も動かないのが笑う。
杏子さんは洗脳解除後も「作戦は失敗ですの?ねぇ失敗かしら?」とかうるさいです。
洗脳されてるときの悪行に対する罪悪感とか無いんかい!
こだわりの特撮
世界の主要都市を破壊
おなじみの怪獣たちが日本から飛び出しモスクワ、ニューヨークなど世界各地で暴れます。
海外の建物が壊されるのは日本特撮史上初。
パリではゴロザウルスによってエトワール凱旋門が破壊されます。
身長35メートルのゴロザウルス1体ぐらいならフランス軍でも倒せそうですね。
ソ連ではラドンの衝撃波によって吹き飛ぶモスクワのクレムリン宮殿。
ソ連ならラドンに核ミサイル撃ち込んでもおかしくない気がする。
ゴジラはニューヨークの国連ビルを熱線で破壊。
さすがは我らがゴジラ、目の付け所が違うぜ!
幼虫モスラまで破壊に加わっています。
北京で列車の前に現れ正面衝突でぶっ壊す。
東京を破壊する特撮が素晴らしい出来。
特にマンダがモノレールに絡みつき「ねじり壊す」シーンは必見。どうやって動かしてるんだこれ。
このシーンだけでマンダを出したかいがあるってものです。
集団暴行されるキングギドラ
決戦での、キングギドラのボコられ方は本当に酷い。
首3本、尻尾2本それぞれ痛めつけられて見るに堪えません。誰か警察呼んでー
キラアクは自信満々で、
「キングギドラは宇宙の怪獣です。地球の怪獣では歯が立ちません」
と言うのですが、この数相手はさすがにムリでしょ。ガイガンも呼んでくれ!
案の定、
・ゴロザウルスが背中にドロップキック!
・戦意喪失してるのに首と尻尾を噛みつき・踏みつけられ吐血
・ミニラがリング熱線で首を仕留める
このように散々ボコられてあっという間に倒されました。キングギドラ、良いとこ無しです。
なんでキラアクはファイヤードラゴンで加勢してあげないんでしょうか。キングギドラが倒されてから出てきても遅いって!
見事、キングギドラとキラアク星人を倒した人間と地球怪獣ですが、「怪獣たちはまた怪獣ランドに囚われるのか…」と思うとラストは寂しい気持ちになります。
まとめ
キラアク星人の基地が富士山西側にあることに気づいた理由とか全然覚えてないけど、まあいっか。
最後の怪獣映画として作っただけあり、出し惜しみ無しで豪華な作品。
ゴジラ映画ではなくSF特撮大作だと思って観れば満足できます。