ゴジラ×メガギラス G消滅作戦 <東宝Blu-ray名作セレクション>
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もくじ
ゴジラ×トンボの怪獣メガギラス×ブラックホール!
■あらすじ
1954年、ゴジラ東京襲撃により首都が大阪へ移転。
1966年、ゴジラにより原子力発電所が破壊される。日本政府はゴジラに襲われる原子力を永久放棄。
1996年、原子力の代わりとして開発したプラズマエネルギーの施設がゴジラに破壊される。
そのとき迎撃にあたった自衛隊員、辻森桐子はゴジラ打倒に生命を懸けるようになった。
2001年、マイクロマシンの天才・工藤元と物理学者の吉沢佳乃により「ディメンション・タイド」が開発される。
しかし、試射で時空の亀裂が発生し太古の巨大昆虫メガニューラが現れる。
メガニューラが産み落とした卵からかえったメガヌロンが人間を襲い、渋谷は水没してしまう。
水底には、メガニューラにエネルギーを与えられながら眠る巨大怪獣メガギラスの姿があった。
その後、奇岩島でのディメンション・タイド作戦中、羽化した成虫メガニューラの群れがゴジラに襲いかかる。
メガギラスの脅威が迫る中、果たして人類はゴジラを倒せるのだろうか。
監督は、駄作と評判の「戦国自衛隊1549」監督でおなじみの手塚昌明。
その手塚監督が手がけるミレニアムシリーズ3作の1作目。
手塚ミレニアム3作の特徴は「戦うヒロイン&超兵器」です。
ゴジラを倒すために超兵器を作り、それを人間がどう使うかという切り口でドラマを展開するのがお約束の流れ。
3作それぞれ、ヒロインがパイロットとして活躍します。本作のヒロインは辻森桐子(田中美里)。
手塚ミレニアム3作に登場するヒロイン「田中美里、釈由美子、吉岡美穂」は3人とも表情が硬く棒演技なのがツラいところ。
もっと良いキャスティングは無かったのでしょうか…
男性の主役は天才エンジニアの工藤元(谷原章介)。
とりあえずイケメン出しとけば良い的なポジション。
お肌ツルッツルでどう見ても無傷だけど包帯グルグル巻きで半裸の谷原章介が、「うるせぇーなぁー、よっぽど俺に気があるんだな」なんて軽口を叩きながらおもむろにギブスを外すのは笑う。骨折してるのに普通にタイピングしてるし。
メガギラス群体は「ガメラ2」、怪獣を育てる子供からは「ガメラ3」の影響が見て取れます。
詰め込みすぎで消化不良
なんだか詰め込みすぎで、消化不良なことが多すぎ。どこから突っ込めばいいのかわかりません。
「細かいことはノリで気にならない」ほど面白い内容でもないので、片っ端から気になってしまう。
しかもなんか色々あった後、最終的に政府の情報隠蔽がバレただけで何も解決しません。残るのは「この話なんだったんだ」感。
以下、気になったことを大きくまとめて説明します。
ゴジラファンに媚びるような演出がイヤラシイ
冒頭、わざわざ白黒映像を作って初代ゴジラに絡めてくるあたりがもうイヤラシイ。
「モスラ対ゴジラ」「三大怪獣 地球最大の決戦」ヒロインの星由里子さんが登場します。
その吉沢博士(星由里子)が、
「ブラックホールにゴジラを吸い込ませて消去するのよ。永遠にね」
「この中に吸い込んで永久に消滅させるしか、もうゴジラを倒す手は無いのよ!」
「地上の被害を最小限にするには、直接宇宙からゴジラにブラックホールを撃ち込むしかないのよ!」
と畳み掛けるのが力技すぎて笑うしかない。
その肝心のディメンションタイドもトラブル続きでもう嫌になります。
卵を持ち帰った子の罪は重い
特に子供のエピソードは消化不良で心に引っかかります。
そのわりに本編に絡まないし、メッセージもありません。
この子は大阪で拾ったメガニューラの卵を東京に持って行って下水に流します。
残酷なことを言えば、殺人事件や渋谷水没、その後の被害も全部この子のせいでしょ。
(渋谷が水没してる理由がよくわからない)
最初に特別G対策本部にでも連絡すれば被害を防ぐことができたはず。
ガメラ3の、イリスと一体化した少女と同じぐらいの罪を背負っていますよ。
この子は「自分のせいで大勢の人が死んだ」という十字架を背負って生きていくしかない。
にも関わらず「君のせいじゃないわ、昆虫博士」と何気ないシーンでさらっと消化され、子供は物語から退場してしまう。
こんな片付け方をするなら最初から子供のシーンを入れるな!と言いたい。
この子は最後の最後、エピローグに出てきますが全く落ち込んでいる様子がありません。「君のせいじゃないわ」を真に受けてしまったようです。
トンボの標本を眺めているので、あんなことがあったのにまだトンボが好きみたい。「ちょっとは責任感じろよ」と言いたくなります。
君達にクリーンエネルギー開発を責める権利があるのか?
クリーンエネルギーは「重水素を原料とするプラズマ発電」。
たぶん核融合です。実現すれば夢のエネルギーなのに開発中止なんてもったいない。
でもクリーンエネルギー開発は「とにかくゴジラが来るからダメ」の一点張り。
「プラズマエネルギーの開発は我が国に莫大な富をもたらすことになる」
「全て国益のためだよ」
という杉浦(伊武雅刀)をヒロインがぶん殴りますが、僕なら反論できないです。
ディメンションタイド試射のとき吉沢博士が杉浦に、
「でも、ゴジラを倒した後は設計図も一緒に廃棄処分にする。これは守ってくださいね」
と言うのですが、そんな口約束を信じる方がおかしい。
このオッサンが設計図を廃棄処分するわけないし、技術がもったいない。
ゴジラ襲来の可能性があるなら、わざわざこんな首都大阪や渋谷に作らず海上とかに作ればいいのに。
それに、杉浦は「中性子対策は完璧だった」と言ってるのでゴジラが来る原因が結局わかりません。
だいたい、ブラックホールを兵器利用した人達にクリーンエネルギー開発を責められたくない。
こんな凄い技術をまず武器に使う君達の方がどうかしている!
工藤は最初「遮断を完璧にしときゃゴジラは来ないんだろ?」ともっともなことを言うのですが、辻本に「それでは問題の解決にならない。究極の解決策はゴジラを倒すこと」と否定されます。
いやいや、完璧なクリーンエネルギーの開発は重要でしょ。なぜゴジラを倒すことばかり考えてるんですかこの人達は。
てか「プラズマエネルギーの原理を応用したマイクロブラックホール」って言ってるから結局プラズマエネルギー使ってるじゃないかと。
CGを多用した映像が安っぽい
CGを多用した映像が安っぽい!週1放送の戦隊モノみたいです。
平成シリーズの迫力はどこへやら。
これなら「対メガロ」みたいな低予算臭の方が面白いからマシ。
メガギラスの動きが安い!
筋肉の動きやバランスの取り方を無視してるから全く体がブレません。羽ばたいてないのに浮いてるし。
少しでも実物を参考にすればこんな動きにはならないはず。
実際、youtubeでトンボの動きを見たら全然違いました。
お台場で戦ってるのにフジテレビは無傷なのも不自然。
個人的にはフジテレビを跡形もなく消し去ってほしかった。
本作の要であるディメンションタイドの効果が曖昧で納得感が無い。
食らったゴジラは地中に埋まっただけで五体満足。ブラックホールなのに全然消滅しないじゃないか。どうなってんだ。
特撮以前に、やってることがそもそも変。
ヒロインは5年前、尊敬する上官をゴジラに殺されたのでゴジラ打倒に燃えています。
しかしその5年前の作戦が違和感ありすぎ。
なぜゴジラ相手に歩兵13人で市街地戦をやっているのか。
至近距離からロケット攻撃て、そりゃ足元まで近づいたらやられて当然でしょう。
ゴジラを憎む前に、作戦を立案した奴を憎むべきです。
まとめ
家で観ると「劇場で観なくて良かったー」と安心できます。
よく大人の観賞に耐えない作品を「子供向け」と評されることがありますが、それは子供に失礼だと思います。本作は子供だって楽しめないでしょう。
最後に細かい話を。
ヘルメットが電子レンジになってるのを「このマイクロマシンで具をかき混ぜて、特殊な電子レンジで仕上げる。違う?」とタネ明かしされて、子供が「なーんだ、つまんねーの。行こうぜ」と出ていってしまうのですが、このマイクロマシンはマジックより凄いだろ(笑