売り上げランキング: 15,165
手塚ミレニアム3作の中では一番良い
■あらすじ
1954年以来に上陸した2頭目のゴジラは、自衛隊を退けて去っていった。
自衛隊員の家城茜は、そのとき自身のミスで仲間を死に追いやってしまった自責の念に囚われ、ゴジラを倒す意志に燃える。
日本は初代ゴジラの骨をベースとした対ゴジラ用生体ロボット兵器「三式機龍(メカゴジラ)」を作り上げた。
選抜メンバーで編成された機龍隊、その正オペレーターに茜が配属される。
機龍のテスト機動が開始されたときゴジラが出現。機龍と茜たち機龍隊はゴジラ迎撃に向かう。
機龍はゴジラを退けることに成功したが、DNAコンピューターが暴走して都市を壊滅させてしまう。
茜はゴジラの骨を使った機龍の存在について考え始める。
そんな中、ゴジラが再び東京へ来襲。全責任を負った総理の決定で機龍が決戦に挑む。
公開:2002/12/14
「ゴジラ×メカゴジラ」では9年ぶりにメカゴジラが登場。
結論をいうと、手塚監督のミレニアム3作の中で一番良い出来。
全体的にゴチャってる他2作と比べ、テーマが絞られているのでムダが無く観やすいです。
冒頭の「自衛隊vsゴジラ」からマジメに特撮やってる感じが楽しい!
機龍2部作のゴジラは、熱線を吐くとき「ボンッボボボッ」とストロボみたいな効果で背びれが光るのが格好良いです。
またゴジラがいつにも増して強い!何をされてもほぼノーダメ。
機龍と初対面したときの「なんだコイツは」みたいな顔も良いですね。
機龍vsゴジラの特撮も「×メガギラス」より数段良くなっています。
とはいえやはりミレニアムクオリティ。
機龍は超攻撃的型メカゴジラということで素早い動きと格闘戦が得意なのですが、それを強調するため無理やりなアクションが目立ちます。
特にバックユニットを外した後のアクションがチープ。
熱線をマトリックスばりに避けて、ぴょーんと重力無視のスーパージャンプ!
さらに2体とも棒立ちの嘘くさいジャイアントスイング。これには萎えます。
その他はちゃんと大迫力の格闘戦をしてるのにもったいない。
細かいところではマスコミの描写が面白いです。
・「日本はまた巨大な軍事国家になろうとしている」と記者に責められる総理
この非常時でもこんなことを言ってるマスコミ。てか日本が軍事国家だったことなんて無いのですが。
・新聞の見出しが「機龍、大暴走!」
街1つ更地にしたわりにお気楽。
難点:行き当たりばったりで作ってる?
エヴァンゲリオンっぽい
なんだかエヴァンゲリオンのオマージュが目立ちます。
・機龍の開発経緯、暴走設定はエヴァ初号機
・関東中が停電にしたアブソリュート・ゼロはヤシマ作戦
ゴジラ映画にオマージュはつきものですが、ちょっとあからさますぎでは。
シン・ゴジラのように「ゴジラというよりただのエヴァンゲリオン」まで振り切っていれば逆に気になりませんが、こう中途半端に似せてくると気になってしまう。
次作も同様ですが、ゴジラの骨を使う意味がわからないのでモヤモヤします。
内部フレーム、DNAコンピューターのどちらもゴジラの骨を使う必要性が謎。
暴走して街を破壊した後、
「塩基を修飾塩基に変えてゴジラと違うものにする」
という応急処置みたいな作業を施してテスト稼働もせずまた実戦配備。
そりゃ五十嵐総理(中尾彬)も実戦投入をためらうわ。
主人公の掘り下げが甘い
本作最大の難点は主人公の掘り下げが甘いところ。
主人公の家城茜(釈由美子)は感情をコントロールしたエリート隊員なのですが、本当に感情が感じられないのが問題。
茜はずっと罪の意識にさいなまれて「ゴジラを倒せるなら死んでもいい」ぐらいの悲壮な覚悟を持っています。
しかし釈さんの演技力のせいもあり、内に秘めた思いが全く伝わってきません。ただ任務をこなしてるだけに見えます。
冒頭で事故った原因が本当に茜のミスなのかもよくわかりません。
後ろを確認せず急にバックした葉山先輩の方がミスってるように見えます。
そもそもこの作戦、どういう勝算があったのか謎。
雨で効力70%に落ちてしまったとはいえ、メーサー1台(と戦車数台)で倒せないことぐらいわかるでしょうに。崖沿い、至近距離で撃てばそりゃやられるだろ。
手塚ミレニアムで毎回思うのですが、主人公はゴジラを憎む前に無謀な作戦を実行させた上の人間に問題を感じるべきなのでは。
あと、茜が男に混じって訓練しているシーンがあるのですが、いくら優秀でも体力で精鋭部隊の男についていけるのはおかしい。
茜の育ってきた環境など、映画冒頭以前の描写が無いのも気になります。
決戦の前に茜と子供と会話で、
「戦って戦って自分の居場所を勝ち取る。私はそうやって生きてきた」
子供「戦うって誰と?」
「世の中の全部よ」
「生まれてきたことさえ疎まれて。ほんとは生きてちゃいけない命だった」
ここまで強烈なことを言う茜は、今までどういう生き方をしてきたんだと。
主人公にそこまで言わせるなら、どう育ってきたかまで描く必要があるでしょう。
機龍が吹っ飛ばれたとき過去の回想が入るのですが、やはり冒頭以前の描写がありません。そのため薄っぺらく感じます。
機龍開発者のオッサンが茜にアプローチする展開が完全にムダ。
何を喋ってもガン無視されてるし。
さらに言うとこの人自体が必要ない。
子供は孤児で茜と同じ身の上にした方が話がわかりやすいし、こんなシーンを入れるぐらいならオッサンを省いて主人公のキャラを掘り下げてほしかった。
主人公の覚悟は子供の「生きてちゃいけない命なんてあるわけないよ」というセリフにつながり、罪を背負った主人公とメカゴジラをつなぐテーマになります。
そのため、主人公の描写が薄味なのは致命的。
しかも、次作で茜の物語が完結するのかと思いきや主人公が交代し、小美人に「機龍を作ったのは大きな過ちです」と言われてしまうので本作の全てが台無しに。
相変わらず多いカメオ出演も邪魔。
中途半端なエヴァのオマージュといい、手塚ミレニアム3作は思いつき、行き当たりばったりで作ってる感があります。
まとめ
アブソリュート・ゼロを至近距離で食らったゴジラ。
しかし何事もなかったかのように立ち上がります。傷もありません。
最後まで納得感が薄いです。
主人公の掘り下げが甘く、機龍の暴走設定が結局なんの伏線にもなってないのが痛いところ。
余計かつ重く厄介なテーマが追加されただけのように思います。
それでも手塚ミレニアム3作の中では一番観れる出来なのがツラいところ。