ゴジラ

モスラ対ゴジラ【感想/評価】「出るか、出るか?」からの尻尾ドーン!

投稿日:2019-07-31 更新日:

モスラ対ゴジラ <東宝Blu-ray名作セレクション>
東宝 (2019-05-22)
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東映スター怪獣対決

■あらすじ

巨大台風が日本を通過した翌日、毎朝新聞の記者・酒井と助手・純子は倉田浜干拓地で謎の鱗を見つける。

一方、静之浦海岸に巨大な卵が漂着した。
漁民から卵を買い取ったハッピー興行の熊山は、孵化施設を兼ねた観光施設「静之浦ハッピーセンター」の建設を始める。

卵の調査をしていた酒井達の前に小美人が現れ「卵はインファント島に残った唯一のモスラの卵だから返してほしい」と訴える。

酒井達は熊山に卵返還の抗議活動を行うが熊山は応じない。

干拓地ではゴジラが出現。名古屋市を蹂躙する。

酒井達はインファント島に行き、島民にモスラの力を借りたいと頼みこむ。
しかし核実験によって島を荒らされ、卵の返還を拒まれた島民は人間不信を抱いていた。

それでも必死で訴える酒井達。
島民は納得し、モスラは寿命が近い身を押して日本へ飛び立つ。

公開:1964/4/29

 

前作「キングコング対ゴジラ」で日米スター対決が実現した後は東映スター対決です。

「モスラ対ゴジラ」は前作に並び、昭和ゴジラ最高傑作といえる出来。

見せ場が盛り沢山です。

・ドジっ子ゴジラが街を破壊
・ゴジラ史上もっとも良い動きをする成虫とバトル
・いつになく熾烈な自衛隊とのバトル
・初代ばりの迫力で漁村を襲うゴジラ
・幼虫が決着をつける

と怒涛の展開なのでダレることがありません。

 

本作の見どころは大まかにいうと

・社会の構造が描かれている

・怪獣映画の頂点といえる特撮

・モスゴジが格好いい

の3点です。以下詳しく紹介します。

 

社会の構造が描かれている

人間ドラマ部分では、卵の利権を奪い合う人間の醜さが存分に描かれています。

お金の流れを通じて社会の構造が描かれているのが秀逸なところ。

・卵を発見して売った漁民
・卵を買ったハッピー興行社の熊山
・出資者の大興行師、虎畑二郎

この3者がそれぞれ思惑を持って動いています。

漁民と虎畑の板挟みにあって次第に追い詰められていく熊山。
その様子が描かれているため、蛇足になりがちな人間ドラマも小気味いい。

そして最後は人間の醜いゴタゴタをゴジラがまとめてぶっ壊す。これがスカっとするわけです。

 

漁民勢では
「こーのぉ、腰抜けめが!卵が噛み付いたりひっかいたりするけ!祟りがおこらんようワシがちゃんとお祓いばした!」
と神主までイキってるのが笑う。

ちなみにモスラ卵の値段は普通の卵何個分かで計算してます。生物学的な意味とか完全無視。

鶏卵が8円×15万3820個分=122万4560円だそうです。

1965(昭和40年) と2018年(平成30年)を比べると消費者物価指数は約4倍。
なので現在の価値に換算すると約500万円。安い!

 

こんな取引は当然むちゃくちゃなので、主人公達は所有権を争おうとするのですが、
「すぐで半年、よかろで2年、審議、審議で5~6年」
というお役所仕事の裁判で何年もかかってしまうため断念します。

土地や物の所有権が現在でも曖昧な日本の問題を象徴していますね。

 

人間の醜さだけを描いているわけではありません。

終盤には小学校の教師と生徒たちが残された岩島で、必死に子供を助けようとする校長と教師の姿を描きます。

こうして人間の良い面・悪い面の両面を描くことで、

「我々だって人間不信のない世界が理想なんです。でも人間が多ければどうしても難しい問題が起きてくるんです。しかし我々は諦めません。その理想を実現するために努力していきます。どうか長い目で観てください。」

と主人公達が小美人に語った通り、悪い人ばかりではなく良い人もいる、そこに希望があることがわかる。

インファント島に帰っていくモスラ幼虫を見ながら言う最後のセリフにも、押し付けがましくない前向きなメッセージがこめられています。

 

ご覧ください、若い星由里子さんを。この美しさですよ。

「テーマを見つけてるのっ」
登場からいきなり可愛い。

主役は毎朝新聞の記者である酒井(宝田明)&助手の純子(星由里子)と三浦博士(小泉博)。

「毎朝=毎日+朝日」
という名称で、権力に批判的な新聞社であることがわかります。

今や第3権力となったマスコミの力で世論に訴えようとするわけですが、世論を上手く利用してるのはむしろハッピー興行社。

「こっちがいくら書けば書くほど、向こうはPRになると喜んでる。奴ら痛くも痒くもないんだ。それがしゃくなんですよ!」
と酒井は諦めムードになってしまいます。

三浦博士は優しくて良い人だけど頼りない。
インファント島住民との交渉では1人だけすぐ諦めてしまい役に立ちませんでした。

酒井はプライドは高いが押しが弱くこちらも頼りない。
助手の純子には「いっちゃん」と呼ばれています。最初はこの2人付き合ってるのかと思ったけど、単純にナメられてるだけでした(笑

この頼りない男2人の背中を押すように純子が活躍します。
男社会のしがらみにしばられない女性が状況を打破する構図が面白い。

 

怪獣映画の頂点といえる特撮

怪獣映画の頂点といえる特撮

前作「キングコング対ゴジラ」からさらなる進化を遂げ、1つの完成形といえる出来に仕上がっています。

冒頭の台風シーンから凄い。
テントが崩れ電柱がなぎ倒され、水が氾濫して岩盤が流されてくる。
リアルすぎてニュース映像を見ているかのようです。

 

ゴジラは登場してすぐ名古屋に上陸。
四日市コンビナート地帯から名古屋テレビ塔、名古屋城へ豪華フルコースで破壊していきます。

この短い時間にどんだけ詰め込んでるんだと。見どころ多すぎ。

また、名古屋の逃げ惑う人々やインファント島のエキストラが多い!

 

初代ばりの迫力で漁村を襲うゴジラは、日中で明るいのにスケール感が良く出ています。

漁村の干網まで細かく作り込まれているのが嬉しい。
初代のオマージュで鉄塔、岩場、戦車が放射火炎で溶ける描写があるのも凝ってます。

本作からゴジラ映画はほぼ年1本の量産体制に入るので、このレベルの凝った特撮は見られなくなります。

 

モスラの動きは歴代最高にリアル。東宝特撮史上最高のモスラと評判です。

上下にも動くので羽ばたきの躍動感が凄い。さらに全部位、足の一本一本まで細かく動きます。綺麗すぎないモフモフな毛並みも良い。

実際、蝶って羽ばたいてるとき大きく上下動するんですよね。
この上下動が無いと平成・ミレニアムのモスラみたいにワイヤーで釣ってる嘘くさい画になります。

さらに注目すべきは突風攻撃のシーン。
セットが吹き飛ばされるカットと、ゴジラが押されるカットを交互に映します。だから威力が伝わる。
ゴジラを後ずさりさせる突風って凄いな。

後期昭和ゴジラの低予算・怪獣プロレス系の作品では、こういう一手間かけた描写が無くなっていきます。

 

前作と同じく、自衛隊が無策ではないのも面白いところ。

自衛隊の作戦は今回も隙を生じぬ二段構え。
「A作戦がダメだっときのB作戦」と段階的な作戦を用意しています。だからこそ、それを突破するゴジラの脅威が際立つ!

前作同様、ちゃんと土木工事シーンを入れています。
前作と同じような穴掘り作業だけど、前作の使い回しではありません(未公開カット?)

大型ブルドーザーやホイールエクスカベーターなどの重機で土を掘り起こす様を丹念に描く。
低予算の作品ならこんなシーン絶対カットしてますね。

 

前作の高電圧作戦は100万ボルトでしたが、今回は一気に3000万ボルトに出力アップ。
そのためか「B作戦」では高圧電流と帯電ネット3枚重ねの組み合わせでゴジラがもがき苦しむほどのダメージを与えました。

しかし、もう一息という肝心なところで
「電圧上げろ!」
「ダメですこれ以上電圧を上げられません!」
からの装置故障で作戦失敗。いつもの自衛隊でした。
失敗した様子を見てる隊長が放心状態なのが笑う。

 

モスゴジが格好いい

「モスゴジ」と呼ばれる本作のゴジラは、前作のキンゴジと人気を二分するモデル。

この頃は造形が定まっていなくて相手に応じてかえてる感じ。
次作から親しみやすい昭和ゴジラの造形に固まっていきます。
そのため、個性的な初代・キンゴジ・モスゴジの人気は別格なんですよね。

モスゴジはモスラとの対比で悪役面。上目遣いで悪い顔してるんですよ。

眉ラインの主張、頬から口にかけてボコボコ感が凄い。
またこの部位がブルンブルンと震えるのがリアル。(実は着ぐるみの不具合。後半は震えない)

 

蒸気みたいなのがシューっと出て「出るか、出るか?」と思わせ、いったん静まってからの尻尾ドーン!

この登場シーンが最高に格好いい!
これですよこれ。引きの画で緩急つけた演出が効いてます。

その後、体をブルンブルンと震わせ砂をふるい落とす演技も素晴らしい。
もう理屈じゃない、ゴジラが乗り移ってるとしか思えない。

スーツアクターは中島春雄さん。この演技に感動したスタッフからは拍手が起きたんだとか。

 

イカつい顔でかっこ良く登場したのに、歴代ゴジラ屈指のドジっ子なのが可愛い。

・テレビ塔に尻尾が引っかかってコケる→倒れたテレビ塔が背中にヒット
・名古屋城の堀に足をとられてコケる→八つ当たりで城を壊しまくる

このように登場してすぐドジ連発なのが萌えます。
1人で何やってんねん!と突っ込みたくなる。

その後も、基本的にやられっぱなし。

・帯電ネットでもがき苦しむ
・モスラの突風攻撃で為す術なく吹っ飛ばされる
・尻尾をつかまれてジタバタ
・モスラにトドメを刺そうと近づくが、不意に飛び立たれてズッコケる
・尻尾をモスラ幼虫に噛まれて取り乱す

このやられる様子が、イカつい顔とギャップがあって可愛いんです。

格好良さ・恐さ・可愛さを兼ね備えたモスゴジ。
キンゴジと並んで歴代トップクラスの人気なのもうなずけます。

 

まとめ

怪獣バトル、人間ドラマ、社会風刺の面白さ。
どれもシリーズ最高レベルの傑作。

ゴジラ映画は次作から低年齢向けの作風に変わっていきます。
なので時間が無い方が押さえるべき昭和ゴジラは「初代」「対キングコング」「対モスラ」の3作です。







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