▼紹介
アメリカ側の史料と被爆者のインタビューで、日本本土空襲の実態に迫ります。
毎日新聞(大阪本社版)の連載をまとめたものなので、関西の話がメインです。
▼メモ
■原爆不要論
米国戦略爆撃調査団は敗戦直後、「戦略爆撃」検証ために1000人体制で日本各地を調査した。
その報告書では、原爆を落とす必要はなかったと結論づけている。
■住民標的爆撃
日本への空爆はもはや無差別、盲爆ではない。
いかに効率よく住宅を焼き払うかを考え尽くした「住民標的爆撃」。
・無差別の前例はある
ドイツ:スペイン・ゲルニカ
日本:重慶
■主要4都市爆撃
焼夷弾は中心にまとめて落とし、炎の波を作るのが重要。まだらな火災になるとダメ。
主要4都市爆撃では、焼夷弾の落とし方の結果検証が行われている。実験として落としたのは明らか。
まず関東大震災の火災調べあげてデータ化。
対象都市を機能・燃えやすさで細かくゾーン分けし、最適な配分で爆撃。
わずか1週間で、4都市で実験。
↓
東京(3.10):投下間隔が広がりオペレーションは失敗したが、強風により燃え広がり結果は成功。
名古屋(3.12):東京の結果を踏まえて投下間隔を広げたが、まばら火災になり失敗。
大阪(3.13):東京・名古屋の結果から得た投下間隔で成功。
神戸(3.17):大阪の成功モデルを実証。
■爆弾の使い分け
・爆弾
4.5t:模擬原爆「パンプキン」
2.0t:住友桜島工場(現USJ)を徹底破壊
1.0t:爆撃のトラウマを与える大型爆弾
500,250kg
・破片爆弾
避難・消化活動を妨げる。現在は非人道的すぎて禁止されているクラスター爆弾の原型。
・焼夷弾
エレクトロン焼夷弾:水をかけると燃える
黄燐焼夷弾:ガスが広範囲に広がり、皮膚・呼吸器を侵食
■地方都市爆撃も凄まじい
富山は焼失面積あたりの焼夷弾投下数が東京の10倍。都市破壊率は驚異の99.5%。
和歌山串本町へ、爆弾を捨てるように爆撃。
迎撃力もないため、B29だけでなく普通に空母艦載機が飛んでくる。
■その他
大阪砲兵工廠(大阪城周辺):アジア最大規模の軍事工場
甲子園:戦時中は兵器工場として使われた
▼感想
大阪爆撃後の写真を見ると、原爆投下後の広島と大差ない更地になっています。
日本に迎撃力が無いから何度でも爆撃できるので、更地にするだけなら原爆は必要ない。
圧倒的優勢な側がいくら「新兵器のインパクトでビビらせた」的な理屈を言っても説得力ゼロ。
やはり原爆は不要だったと思います。
爆撃は天気予報が死活問題になるようです。
戦時中の研究が今の天気予報に活きているのかも。
現在僕は大阪に住んでいるので「大阪砲兵工廠」に興味が出ました。
大阪城東(京橋~森ノ宮)の敷地全てが軍事工場だったってマジ?
調べたところ、
あの辺りは「焼跡地は不発弾があり危険」ということで戦後約20年ほどは更地で、その後鉄くずを回収する「アパッチ族」がバラック集落を作り、昭和30年代初頭まで警官と合戦を繰り広げたのだとか。
どうりで、あの辺りはホームレスが多いわけだ。(関係ない?)
当時、アメリカが日本の都市がどう燃えるかを調査するため、関東大震災を調べ上げているのが凄い。日本より詳しく調べているのでは。
爆撃では東京・名古屋・大阪・神戸と、結果を踏まえながら着実にデータを積み重ねています。
この、調査・結果・検証のサイクルが強さの秘訣かも。
精神論を振りかざし、ガダルカナルで「戦力の逐次投入」をしていた日本と違う気がします。
とはいえ アメリカの場合は余裕があり、戦後を見越してるから冷静なのは当たり前ともいえます。
そりゃこんだけ戦力差あったら実験感覚で色々できるわ。
戦勝国・アメリカは上手くやった分が見習うべき前例になる一方、敗戦国・日本は上手くやった分だけ責められるというバイアスもある。
戦争の反省点については、当時のリアリティも踏まえて考える必要がありそうです。