「欧州委員会がSteamの「地域ブロック」が独占禁止法違反であるとの見解を示し、Steamを運営するValveと販売元5社に是正を求める反対意見書を送った。」
ニュースを見て。
私は2010年頃、据え置きゲーム機を持っていなかったのでSteamのゲームだけ遊びました。
洋ゲーの良作が和ゲーを駆逐し始めた時期です。その頃の「おま国」仕様にはずいぶん苦労しました。
その経験をふまえて、今回のニュースを期に「おま国」について恨みを込めて話します。
参照したサイト↓
もくじ
欧州委員会、良いこと言うやん
欧州委員会のいう「地域ブロック」とは、
・一部のゲームが買えない
・その国の言語が抜かれている
・値段が高い
など、企業が特定の国に対して不公平な規制を課すこと。
この行為がEUの独占禁止法に違反する、と問題になっています。
地域ブロックは、日本では「おま国」と呼ばれてSteamユーザーの間では有名です。
(「お前の国には売ってやんねーよ」の略)
欧州の地域ブロック問題は欧州の話なので、日本のおま国とは無関係です。
でも判例として影響はあると思います。
ちなみに、反対意見書(抗議先)に名前が挙がっている日本の企業はバンダイナムコとカプコンの2社。
ニュースを読むと、
「同委員会の最高責任者であるMargrethe Vestager氏は、デジタルマーケットにおいて欧州在住の消費者は、欧州のどの地域に住んでいたとしても、自由にゲームを買い遊ぶ権利を持つべきだと主張。消費者が(欧州加盟国間で)ベストな買い物をすることを妨げる行為を憂慮していると声明を出した。」
(automatonより引用)
ほんと良いこと言うじゃないですか。
対して、
日本の消費者の権利を、日本の偉い人が主張してくれないのが不思議です。
おま国の代表的な3パターン
一口に「おま国」といっても色んなパターンがあります。
販売権を持っているゲームを売らない。洋ゲーを日本語化しない。国内産から日本語を抜く。
セール除外、表現規制、本体とDLCのどちらかを売らない、リリース日が遅れる、サーバー隔離、などなど。
あらゆる方法で消費者の権利を規制してくるので悪意すら感じ、怒りを超えて呆れます。
今(2019年)はだいぶ改善されつつあるけど、PS3時代は本当にひどかった。
以下、代表的な3つのおま国を紹介します。
「おまえの国では売らない」
おまえの国では売らない=日本では買えない。
非常に多いケースです。
ストアに表示されないので、買えないことを認識もできません。
特に悪名高いのがバンダイナムコ、セガ、コナミ。
国内メーカーが販売権を得た洋ゲーも封印されます。
私は「Total War: Shogun 2」で悔しい思いをしました。
戦国時代が題材の良作シュミュレーションゲーム。
これ系のゲームが好きなので「これ絶対買おー」とワクワクして発売を待ちました。
でもSteam版は日本から購入不可。パッケージ版はDLC購入不可。(2020年は買えます)
あまりの仕打ちに落胆しました。
日本が舞台なのに、日本で遊べないという謎。
今でいうと日本だけ「SEKIRO」が買えない、みたいなものです。
「おまえの国では割高」
「おまえの国では割高」=日本だけ定価2~3倍で売ること。
為替レートや物価の影響ではなく、なぜか日本だけ定価が高いです。
販売元として悪名高いのがスクエニ。
スクエニが販売するほとんどのゲームは、日本だけ値段が跳ね上がります。セール時80%割引で海外と同じ値段になるほど。
スクエニが絡むと本当にロクなことがありません。
しかも販売権で稼いだ資金をつぎ込んで作った自社製ゲームがあの有様なので怒りも倍増です。
バンナムも「DARK SOULS」シリーズをおま値で売っていたのが有名。
実は、おま値はSteamだけに限った話ではありません。
海外ではPS4など据え置きのソフトも安いです。新作で5000~3000円ぐらいが普通。発売直後にセール品になることもあります。
対して日本は定価9000円で売る。
日本でゲームが売れないのは当然な気がします。
「おまえの国ではおまえの母国語抜き」
「おまえの国ではおまえの母国語抜き」は文字通り。
元々ある日本語データを抜き、そのデータだけ有料で販売する手法です。
スクエニ販売の「Tomb Raider」(2013)が有名。
プリロードのたった1時間半後、アップデートの形で日本語データを削除。
その後、削除した日本語データをDLC(30ドル)として販売する伝説を残しました。
しかも本体はおま値。
この常軌を逸した詐欺的手法にユーザーは激怒し、批判が殺到しました。
スクエニはここからの対応がまた凄い。
何者かが圧力をかけて、ニコ生で「30ドル」が禁止ワードになりコメントできなくなりました。
どこぞの独裁国家かよ、と言いたくなります。
「FF15ロイヤルエディション」発売記念の公式配信では、流れるコメントが異様に好意的なものばかりでした。
間違いなく、やってます。
同じくスクエニ販売の「Sleeping Dogs」も苦い思い出。
一応、通常版はユーザーが努力すれば日本語化可能です。
私は完全版にあたる「Sleeping Dogs: Definitive Edition」を購入しました。
「完全版だから当然、日本語つきだろう」と思って買ったんです。
でも甘かった。 スクエニを信じた私がバカでした。
Definitive Editionは何をどう頑張っても日本語化不可。日本は完全に切り捨てられました。
結局、最後まで英語テキストのままクリアしました。
目的地が表示されるのでなんとか遊べるけど、楽しみを50%以上奪われた気分です。
名作「バットマンアーカムシティ」も日本語化できません。
わざわざ日本語データを抜いてあるので、日本語化するには有志作成の日本語化Modを導入する必要があります。
この頃のSteam版洋ゲーは日本語対応していないのが普通でした。
日本語化するには、
・誰かがネット上にアップしている、パケ版日本語データを恐る恐るダウンロード
・言語ファイルの場所を自力で調べて、自己責任でデータ入れ替え。
プレイする前、ここまでの作業がデフォ。
Steamのレビューを見ると「この方法で日本語化できます!」みたいな喜びのレビューを見かけます。
しかし、そもそも何でこんな面倒でグレーな手間を強いられなきゃならんのか疑問です。
近年では「真・三國無双8」がネタです。
なにかの間違いで入った日本語と中国語ファイルを発売後すぐにアプデで削除。
そのアプデの説明が「日本語で表示される不具合を修正しました」。
日本語対応が不具合という、もう笑うしか無いブラックジョークです。
しかも返金対応なし。
さすがコエテク、やってくれますよ。
なぜ日本は「おま国」にされる?
日本は「おま国」にされるのは、
・独特な国内市場
・日本のユーザーがナメられている
が原因といえます。
ガラパゴスな国内市場
日本のゲーム市場は世界的に見ると独特です。いわゆるガラパゴス状態。
世界で記録的大ヒットを飛ばす大作オープンワールドや大作FPSも、日本で売れるのは数万本です。
海外の多くの国では、ゲームはPCでやるのが一般的。
対して日本はファミコン時代からゲーム=据え置きハードのイメージが強いです。
PCゲームは長らく一部のマニア向けとして扱われてきました。
ユーザーは国内の据え置きゲームに慣れ親しみ、メーカーはPCよりスペックが劣る据え置きハード向けのゲーム開発を続けてきた。
ガラパゴスな国内市場で利益を上げ、技術のアップデートが遅れ、開発力で海外と差がついた国内メーカーは、日本における「ゲーム=据え置きハード」の構図を崩したくない。
だからPC市場を規制してガラパゴスを守っている。
と考えられます。
ガラパゴス自体は悪いことではないと思います。
国内メーカーが利益を確保するために、場合によっては規制も必要でしょう。
利益が消費者に還元されてWin-Winの関係になれば良いわけです。
ただゲームに関しては、
・生活に必須ではない
→食料などと違い、国家安全保障と無関係
・国内のゲーム市場規模は4368億円(2019年)
→規模的にたいした経済効果は期待できない。しかも世界中で日本のみ衰退傾向
・国産ゲームの国内売上は世界売上の1割
→国内市場を守る意味が薄い
・国内産の質が低い
よって、消費者には規制による利益がありません。
日本のユーザーはナメられている
日本人が情弱なのも要因です。
日本人はテレビ・新聞・雑誌への信頼度が先進国の中でズバ抜けて高い。
それだけ大手メーカーやメディアの広告・権威に弱いです。
以下、参照元から抜粋。
「欧米先進国のG7諸国の中で、最も新聞・雑誌に対する信頼度が高いのは、ドイツの44.4%であり、これにフランスの38.3%が続いている。新聞・雑誌を信頼している人は、G7諸国では、日本のほぼ6割以下であるという点は、実に、留意すべき重要事項だと思われる。」
(参照:http://honkawa2.sakura.ne.jp/3963.html )
つまり、国内メーカーは「価格3倍でも気づかないだろ。気づいても他に選択肢が無いから買うだろ。」と日本のユーザーをナメています。
おわりに
最近はSteamのおま国が改善され、ブチ切れる機会は減りました。
でも相変わらず日本語未対応、おま値、未発売ゲームは多いです。
欧州の地域ブロック問題をきっかけに、おま国の改善を期待したい。
好きなゲームを海外基準の値段で買える。
据え置き版が日本語化されているなら、Steam版も日本語で遊べる。
そんな当たり前の環境になってほしいものです。