当時小学生の私に、
「神が創りたもうた別世界がテレビ画面の中にある」
ことを教えてくれた作品です。
今の時代、「名前やBGMは知ってるけどゲームを遊んだことはない」みたいな方が多いかもしれません。
そこで、クロノトリガーがいかに凄いゲームなのかを解説します。
もくじ
神ゲー「クロノトリガー」とは
「外国人が選ぶ日本のRPG1位」
(2013年「Gameranx」より)
・SFC最高峰のグラフィック・BGM
・タイムトラベルをテーマにした魅力的なストーリーとキャラクター
・FFのアクティブタイムバトルを発展させた戦闘システム
それら全てが上手く噛み合っています。
さらに、
・強くてニューゲーム
・様々なタイミングでに挑めるラスボス
・豊富なマルチエンド
など意欲的なシステムも多く、初心者からやり込み派まで満足できます。
後述する「ドリームプロジェクト」で膨れ上がった期待を裏切らないRPGです。
その出来の良さで国内売上203万本を記録しました。
SFCのRPGで5位。「DQ・FF」以外のRPGでダブルミリオンは本作のみ。
ドリームプロジェクト
FFの坂口博信、ドラクエの堀井雄二、鳥山明が手を組んだ!
このコラボは、スクウェアとエニックスのRPG2大巨頭コラボも意味します。
2社の合併など想像もしなかった当時のゲーマーは夢のコラボに衝撃を受けました。
当時は鳥山人気絶頂で、(失礼ですが)画力も全盛期。
その魅力が遺憾なく発揮されており、鳥山氏のイメージイラストを元にしたシーンが非常に魅力的です。
当時、1994年末に発売されたジャンブ1995年3ー4合併号はドラゴンボール・スラダンのツートップで発行部数653万部のギネス記録を打ち立てました。そして本作発売の2ヶ月後にドラゴンボール連載終了。
そんな少年マンガ絶頂期に登場したクロノトリガーは、私を含めた少年達の心をわしづかみにしました。
FFに近い、緻密な描き込まれた背景。
一方、モンスターはドラクエみたいな鳥山テイスト。
この相性が想像以上に良い。
主人公はDQ型の「喋らない主人公」を踏襲。
一方、アイテムや魔法は「ポーション」「ケアル」などFFシリーズの用語。
この辺にもFF・DQの融合を感じることができます。
■ドリームプロジェクトの実際
実は3人はそれほど関わってないらしい。
当時のスクウェア開発チームの実力が半端じゃないから生まれた作品といえます。
・堀井雄二
携わったのは開発初期のプロット制作。
初期プロットは「現代・中世・未来・原始」まで。魔王はただの魔族の王だったらしい。
実際、堀井氏らしいテキストは目立ちません。
にも関わらずアメリカで堀井氏の代表作と言えばドラクエではなくこの作品が挙がるのだとか。
初期プロットをベースに加藤正人氏が全体的に加筆・修正し、全面監修で古代パートを追加したとのこと。
確かに初期プロットに無かった「古代」はノリが違います。
少年少女のわかりやすい冒険活劇が一変、小難しい話になります。
展開もなんだか唐突で、古代パートの決着は消化不良。
続編「クロノクロス」はトリガーの続編というより古代パートの続編と捉えるとしっくりきます。
・鳥山明
イベントの再現でイメージイラストを作るのではなく、イラストを再現する形でイベントシーンが制作されています。
そのため、鳥山氏のイラストは作品の雰囲気に多大な影響を与えています。
キャラデザインは意外と関わりが薄く、鳥山氏が担当したのはメインキャラとイメージイラストに載るキャラのみ。しかも渡されたキャラ設定案のリファインらしい。
他のサブキャラやモンスターは影武者(鳥山風の絵を描いている人)によるもの。
開発スタッフが全力を尽くして鳥山ワールドを実現しました。
・坂口博信
現場指揮はディレクターの北瀬佳範氏で、坂口氏はゲーム開発外のプロデューサー業務に徹していた。でも作品の出来に満足できず自ら全面的に手直しに入ったらしい。
SFC最高峰のグラフィック
間違いなくSFCトップクラス。
キャラの表情も、笑う、考える、驚く、喜ぶ、叫ぶ、死刑判決を受けてヘコむ、など豊かです。
戦闘時のドットアニメも凝っており、敵は色んなモーションを見せます。
技・魔法エフェクトも大迫力。
画面からはみ出しそうな巨大ボスはパーツ分けを導入し、各パーツが別々に動きます。
もはや伝説的なBGM
光田康典氏が手掛けたBGMはもはや伝説的。
メインテーマ、パーティキャラそれぞれのテーマソングや、ボス戦など名曲揃い。
どの曲も強い印象を残します。
なんと本作が光田氏のプロ作曲家デビュー作。
光田氏は後に「ゼノギアス」「クロノクロス」などの作曲を手がけます。
BGMと相性抜群のSE(効果音)も素晴らしい。
牢獄の水が滴り落ちるポタポタ音、吹雪や小川のせせらぎなど環境音は、引き込まれるような臨場感があります。
以下、代表的な曲を紹介します。
「風の憧憬」
中世フィールドの曲。
現代とは違う寂しい曲調で「違う世界に来ちゃった感」が出ています。
「ボスバトル2」
ボスの中のボス、大ボス曲。
曲の入りから並のボスとは違うスケール感があります。
「魔王決戦」
風が鳴く、嵐の前の静けさのようなイントロからの盛り上げ方が凄い。
キャラの掛け合いから曲の入りまで完璧に計算されています。
「世界変革の時」
ラスボス第2形態。
メインテーマの旋律も組み込んだ壮大な戦闘曲です。
トランペットのソロがたまらん!
テーマはタイムトラベル
テーマはタイムトラベル。
まずはあらすじからご覧ください。
■あらすじ
平和なガルディア王国に暮らす少年・クロノは、千年祭で少女・マールと出会う。
成り行きで千年祭を一緒に見て回ることになり、流れで幼馴染の発明少女・ルッカが発明したワープ装置の実験会場へ。
マールがノリノリで実験に参加すると、ペンダントが共鳴して時空の歪みが出現。マールは歪みの中に消えてしまう。
マールを追いかけてクロノがたどり着いた先は、クロノ達が生まれる400年前。中世のガルディア王国だった。
この偶然の出来事をきっかけに、星の運命をめぐり時空を超える冒険が始まる!
偶然タイムトラベルが出来るようになった少年少女が偶然、世界の危機を目の当たりにし、立ち向かう。
やっていることは冒険活劇の王道なので馴染みやすいです。
運命を変えるため、タイムトラベルで過去や未来へ。
一つ一つの時代背景、登場人物が丁寧に作り込まれており見応えがあります。
それぞれの時代で1本のゲームが作れそうなほど。
冒険の舞台になるのは以下、7つの時代。
・「ときの最果て」(?)
時空を旅する者が迷い込む何もない場所
・「未来」(2300年)
ラヴォスによって崩壊後
・「ラヴォスの日」(1999年)
ラヴォスが地表に出る日
・「現在」(1000年)
クロノ達が住む平和な時代
・「中世」(600年)
魔族が幅をきかせており不穏な空気が漂う
・「古代」(紀元前1万2000年)
魔法を使える人間が浮遊大陸で富を支配
・「原始」(紀元前6500万年)
ヒトと恐竜が覇権を争う
旅の目的を簡単にいうと、ラスボス「ラヴォス」が地表に出る前に始末したい。
ラヴォスは宇宙から飛来した星を喰らう寄生虫。
星へ衝突すると同時に地下深く潜り、星の内部に寄生します。
星を食らって力を蓄え、あらゆる生物の遺伝子を集めて自己進化を続け、充分に力を蓄えると地表に現れて他の生物を死滅させます。
その後に子供を産み落とし、子供達は宇宙へ旅立ち新たな星へ寄生し増殖。
わかりあうことも、共存もできない。絶対に倒すしかない敵。
ラヴォスによって星をめちゃくちゃにされ、ミュータントが徘徊する未来に飛ばされたときの絶望感は凄まじいです。
タイムトラベルは、
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ターミネーター」「ゴジラVSキングギドラ」
など、SF映画などで既におなじみのテーマ。
でもRPGで大々的に取り上げた作品なんてあったでしょうか。少なくとも私は知りません。
クロノ達はけっこう好き勝手に歴史改変します。倫理的にはめちゃくちゃかもしれません。
例えば中世で良いことをすると、現代で子孫の性格が変わります。
それだけの影響じゃ済まない気が。
封印された宝箱を開けたまま400年放置するとあら不思議、中身がパワーアップ。
しかも現代→中世の順番で取れば両方入手可能。
なんという都合の良い歴史改変。
豊富なイベントと掛け合い
テーマの独自性だけでなく、特筆すべきは濃さ。
当時のRPGなんて大抵「世界を脅かす大ボスとその手下を倒す」みたいな感じです。
イベントの流れも「街A→ダンジョン→街B~」の繰り返しで水戸黄門的に事件を解決するだけ。
対して本作のイベントはどれもメインシナリオを掘り下げるために必要なもの。
ラヴォスは太古の昔から存在しており、その力をめぐり色んな時代で色んな人がドラマを展開します。
台詞も面白く、キャラが生き生きしています。
パターンも豊富で、キャラの組み合わせごとに個性的な台詞と掛け合いがあります。
終盤は自由度が一気に広がり、メイン・サブイベントを任意の順番で進行可能。
それらのイベントを無視してラスボスと戦える構成は「FF6」オマージュといえます。
サブイベントは、メイン以上にタイムトラベルを活かしたロマンあふれるもの。
本編で張った伏線をしっかり決着させます。
個人的に印象に残っているのは、ロボが400年間砂漠を耕し続けるイベント。
現代でボロボロになったロボに再会したときの感動をぜひ味わって頂きたい。
後半は、自由かつノーヒントです。
当時は攻略情報無しで遊ぶ時代。友達と情報交換しつつ隠し要素を自力発見したものです。
魔王の最強装備がある隠し部屋は自力で見つけました。
その翌日だけ地元小学校のヒーローになったのは良い思い出。
魅力的なキャラクター
メインキャラクター7人を紹介します。
魅力的なキャラが揃っています。
「クロノ」
クロノは「喋らない主人公」。
ジェスチャーで意思表示し、倒れた仲間をかばうために身を投げ出すなど主張は強いです。
実は一部のエンディングで喋ります。
仲間からの信頼は厚い様子。
特に修行したような描写がないけど剣の達人です。
腕前は中世1の武芸者・カエルも一目置くほど。
戦闘では頼りになるアタッカー。
武器・技が全体的に優秀で連携も豊富。
最強魔法「シャイニング」は単独最大ダメージを叩き出します。
「マール」
マールは、見た目がブルマ(10代)なヒロインポジ。
正体はお忍びで千年祭をウロウロしてた王女マールディア。
おてんばな性格が災いし、次々と事件に巻き込まれます。
ペンダントが吹っ飛ぶほどの勢いでクロノとぶつかり、テレポットの実演に参加したことで中世に飛ばされるハメに。
戦闘では回復役。
高い魔力と連携技の全体回復、「アレイズ」「ヘイスト」が頼りになります。
攻撃面では「アイスガソード」「ひょうがなげ」「はんさようボム」など連携技が強力。攻守ともに活躍できます。
「ルッカ」
ルッカは、見た目がアラレちゃんなクロノの幼馴染。
機械いじりや発明が得意で、発明がきっかけで時空ゲートが開きます。
戦闘では、トップクラスの魔力による魔法・爆弾攻撃が強力。
親父のタバンから貰える専用装備も強い。
「フレア」は「シャイニング」に次ぐ最強魔法。
連携も豊富で、「炎3段げり」「反作用ボム3」は最強クラス。
「カエル」
カエルは見ての通りのカエル。
親友を失った自責の念で引きこもっているカエル剣士です。
ネタバレ↓
正体はグレンという名の若者。
魔王に対峙した際、「蛇に睨まれたカエルのようだ」ということでカエルにされてしまった。
物理、魔法、回復を使いこなす万能キャラ。
器用貧乏で終盤は埋もれがち。
周回時、カエルだけ最強武器がキーアイテム扱いなので最初に使えないのが痛いです。
「ロボ」
ロボは見ての通りのロボ。
元々は不法侵入者を抹殺する冷徹ロボ。ルッカに修理されて心を持ちました。
パーティーの誰よりも心優しい。健気な姿が泣けます。
戦闘では全体回復、冥の回転レーザー、火のサークルボム、天のエレキアタックと、水属性以外は全て揃う有能。カプセルで魔力を上げると強いです。
「エイラ」
エイラは、見た目がランチな原始時代のイオカ村の酋長。
恐竜人と生存競争を闘っています。
曲がった事が大嫌い。
恐竜人を恐れる「ラルバ族」の言うことは聞かず、恐竜人と決着をつけるべくティラン城に乗り込みます。
戦闘では、肉体派のパワーキャラ。
攻撃力が高いです。
己の拳で戦うので武器は不要。
レベルアップによって「こぶし→てっけん→ごうけん」に変化します。
「ごうけん」はランダムで固定9999ダメージのぶっ壊れ性能。
連携も豊富で威力が高く、誰と組んでもバランスが良い。
「いろじかけ」で敵からアイテムを盗めるのも強い。
最強防具のいくつかは盗んで入手するため、やり込み的にも必須キャラです。
「魔王」
魔王は、中盤の大ボスとして立ちはだかる魔族の王。
真の目的は自分の手でラヴォスを倒すこと。
後半、ラヴォスを倒すという目的の一致で仲間に加わります。
魔王だけあって全属性魔法が使用可能。
とはいえ、器用貧乏で使い勝手が悪いです。
いちいち格好良いモーションが売り。
ちなみに、名前入力は漢字が使えないので名前を変更するとデフォルトの名前に戻せません。
(DS版はセレクトで戻せる)
システム:色んなRPG作品のいいとこ取り
シンプルなシステムで遊びやすいです。
ワールドマップから直接、建物やダンジョンに入るワールドマップ移動型。
よって街やフィールドのつながりで迷子になる心配はありません。
複数の建物で構成された街もマップの一部なので、直接各建物に入れて快適です。
戦闘の難易度はヌルめ。作業的なレベル上げ抜きでサクサク遊べます。
シンボルエンカウント&ATB
特定位置・シンボルエンカウントでシームレスに戦闘へ移行します。臨場感が抜群。
フィールドの地形やエンカウント時の位置関係がそのまま戦闘に反映されるのも凄い。
戦闘システムは、FFのアクティブタイムバトル(ATB)の改良型「ATB Ver.2」。
ATBとの違いは、
・味方キャラクター3人のコマンド同時表示
・行動可能な仲間を組み合わせて「連携技」が使える
・攻撃・魔法発動中は時間停止
・敵キャラがリアルタイムで動き回る
タイミングを見計らって円や直線などの範囲攻撃技を撃てば、敵を複数巻き込こんで爽快です。
連携技は2~3人の同時攻撃。
キャラの組み合わせによって出せる技が変わります。
別々に技を出すより高威力な反面、参加したキャラが一度に行動終了するため隙が大きい。
連携技を使うときは回復役を待機しておくなど役割分担が重要です。
連携技のおかげで、単体では使いづらいキャラにも出番があるのが嬉しい。
(パーティメンバー3人は戦闘中以外でならいつでも入れ替え可能。)
3人技はあまり活躍しません。
ダメージがそれほどでもなく、発動後は全員行動終了で隙だらけ。
終盤はダメージが上限の9999で頭打ちなので、なおさら個別の最強技か2人技を使った方が良い。
しかもクロノ不在の3人技はアクセサリ「~の石」が必要で、アクセサリ欄を1つ埋めてしまいます。
よって実用性はほぼ無い。
ただ、SFC最高峰の凝った演出は一見の価値ありです。
ボスは「わからん殺し」の傾向が強め。
・決まったタイミングで来る即死級の全体攻撃
・一部の攻撃に大して猛反撃
火耐性が無いと「サン・オブ・サン」のフレア一発でほぼ壊滅したり、「ダルトンゴーレムシスターズ」に火・水以外で攻撃するとめちゃくちゃな攻撃力で叩き潰されたり。
けっこう歯ごたえがあります。
強くてニューゲーム&12種類のマルチエンド
ある条件を満たした上でクリア後に「強くてニューゲーム」を選ぶと、ステータスや所持アイテムを引き継いで周回可能。
周回すれば入手数が限られているレアアイテムを再び入手可能。周回するたび強くなります。
周回すれば「にじのメガネ」など一周一個しか入手できない最強アイテムを人数分揃え、カプセルを集めてステータスMAXにできます。
強くてニューゲームの周回とセットになっているのが、ラスボスを倒したタイミングで変化するマルチエンディング。
周回時はマールと出会った直後にラヴォスを倒すことも可能で、倒したタイミングと矛盾しないエンディングが用意されています。
エンディングは12種類 (+バッドエンド)。
歴史改変を活かしたギャグ・シリアス・パラレル・内輪ネタもあります。
一回クリアするだけでも最高の満足感が得られるのに、周回でさらに遊べる。世界観が広がる。
今プレイしても「神が創りたもうた別世界がテレビ画面の中にある」と思わされます。
まとめ:RPGにおける一時代の締めくくり
RPGにおける一時代の締めくくり、そして新たな時代の始まりを告げる作品。
ストーリー、グラフィック、BGM、システム、どれをとってもSFC最高峰。
その全てが噛み合い、「ドリームプロジェクト」で膨らんだ期待値を上回ってきた神ゲーです。
ちなみにPS版はムービーが蛇足、ロードが長い。DS版で追加されたやり込み要素は面倒くさいだけ。
やはりオリジナルが珠玉です。これ以上足すことも引くこともない。