ロックマンXシリーズを全作遊んだつもりが1作忘れていました。
その1作がこの「ロックマンX コマンドミッション」、通称「コマミ」。
本作はシリーズおなじみのアクションではなく、なんとコマンド式RPG。
結論をいうと、本作は良作RPGです。
「いやいや、いくら良作つっても知名度のわりにって程度でしょ。「隠れた良作」といわれるゲームは遊ぶとたいていガッカリするんだよな。」
なんて思いましたか?
いえいえ、本作はマジで良作なのです。
当記事でその魅力を詳しく紹介します。
そして、出来が良いのに知名度が低い理由についても迫ります。
当記事を読めば、あなたは今すぐゲーム屋の中古PS2ソフト棚に行きコマミを探すことになるはず。
エックスシリーズまとめ記事はこちら↓
もくじ
ロックマンX コマンドミッションってどんなゲーム?
シリーズ初のRPG
ロックマンXシリーズ初のRPG。
「RPG要素のあるアクション」程度ではない、ド直球のコマンド式RPG。
秀逸な戦闘システムの一点豪華主義で、コマンドRPGの戦闘が好きな方を絶対に楽しませる作品に仕上がっています。(戦闘システムについては後述)
ハイスピードアクションの代名詞、ロックマンXシリーズがなぜRPGになったのか。
それは本作が、X7で破綻したエックスシリーズを別チームに預けるためいったん間を置く意味で作られた作品だからだと推測します。
実際、本作に関わったスタッフの多くは「X8」に続投。X8は良い出来です。
時系列はX7の約100年後。X8より未来。
年代が近い「ロックマンゼロ」に絵柄を寄せています。
その影響で味方・敵キャラのデザインがカッコいい。
エックス達はどう見てもX8のマヌケ面(特にムービー)よりカッコいい。
モーションもカッコいい。
エックスがバスターを構える動きが大げさでハッタリが効いています。
設定はナンバリングの時系列から外れたパラレルワールド扱いで、コピー能力の扱いがX8と違う。
システム
フィールド画面では常にエックスを操作します。
迷路のようなややこしいステージを、画面右下のミニマップと全体マップを見ながら探索。
移動中は、レーダーを無効化するステルス・ビームマフラーを展開。
このマフラー、「こんなに目立ったらアカンやろ」と思うほど派手です。
あまりにも派手なので私は最初、エフェクトのバグかと思いました。
派手すぎるマフラーには意味があります。
この輝きにより、自キャラの位置がわかりやすい。
フィールドが全体的に暗いため、仮にマフラーが無いと自キャラを見失うでしょう。
こういう気の利いた配慮が随所にあり、かゆいところに手が届く作り込みをプレイ開始してすぐに感じることができます。
他にも、
・ロード時間が短い(GC版はさらに短い)
・ムービースキップ可能
・アイテムの並べ替えが親切
・全体マップにはロック扉など欲しい情報を表示
このように、ストレスなく遊べる配慮が嬉しい。
こういう地味で細かい部分こそ重要だと思います。
「神は細部に宿る」。本作にはちゃんと神が宿っています。
戦闘システム
各ボタンに武器を割り当て、ワンボタンでメインウェポン+サブウェポンを次々と発動します。
攻撃がテンポが良く重なって連携のようになるのが楽しい。
ゲームはボタンを押すときが楽しい。
「ボタンを押す→反応がある」。このインタラクティブティビティが3倍楽しめるってわけ。
さすがカプコンさん、わかってらっしゃる。
RPGはただ凝った戦闘システムにすれば良いわけではありません。
なぜならRPGは凝った戦闘システムほどザコ戦が面倒くさいから。
本作の開発チームはその辺もよくわきまえています。
方向キーによるコマンド選択不要なのでダルくない。□△◯ボタンを順番に押せばサクサク攻撃してくれます。
それでいてサブウェポン・WE・ハイパー・アクショントリガーなど複数の要素が重なり、奥深い駆け引きもある。
レベルデザインも丁寧でいい塩梅です。
他、
・行動順を確認できる
・ターン消費なしでメンバー交代
・アクショントリガーがQTE
これらのFF10っぽいシステムが上手く噛み合っています。
ボス戦は「真・女神転生III」のように、事前の準備と戦略がモノを言います。
フォースメタルと武器を組み合わせるキャラカスタムは、敵の行動・属性との相性が重要です。
カスタムの相性が外れたらボスにはまず勝てない。
サブタンク容量に限りがあり、回復ゴリ押しではしのぎ切れない。
武器には3属性あり、相性が悪いとダメージが通らない。
戦闘中に属性を変えたり、耐性が射撃・格闘と交互に変わる敵もいます。
テキトーに戦っていると状況を見失ってピンチに。
敵味方の攻撃・防御の属性を全キャラ分把握する必要があります。
覚えゲーに近いとはいえ、理不尽には感じない程度です。
初見でボコられ何度か挑んで攻略法を練りようやく倒せる感じ。
最初はザコ・ボス共に堅く感じるけど、システムに慣れてカスタムが上手くハマれば爽快に瞬殺可能。
戦闘システムの美味しい部分が存分に味わえる良バランスです。
ただ強い武器を買って攻撃力を上げるだけではないパワーアップシステムにも、他のRPGにはない面白さがあります。
調べたところ、開発はあの「ブレスオブファイア」シリーズを手掛けたチーム。
ディレクター・竹中善則氏は「X4」以前の作品や「ブレスIII」のプロデューサー。
この布陣なら出来が良いのもうなずけます。
以下、特徴的な戦闘システムを列挙します。
■Xオーダー(クロスオーダー)
画面右下のチャートに敵味方8ターン先までの行動順とLE残量を表示。
チャートを見れば一目で状況がわかります。
■交代
ターン消費なしで控えメンバーと交代可能。
仲間はそれぞれ特性があり、状況に合わせて交代すると有利になります。
■WE (ウェポンエネルギー)
攻撃アクションで消費。
普通のRPGでいうMPに相当します。
一方、
・戦闘のたびにリセット
・キャラに順番が回ってくるたびに回復 (WEゲイン値による)
よって、MPのように温存する必要はありません。
WEが0になると行動順が遅くなります。
強力な行動はWE0になるリスクつき。
限られたWEをいかに上手く活用するかが考えどころです。
■サブウェポン
メインウェポンとは別に毎ターン使える武器。
追加攻撃やバフ効果などの種類があり、メイン+サブを上手く組み合わせると強力なコンボ攻撃が作れます。
■ハイパーモード
キャラごとの強化形態に変身して大幅パワーアップ!
ボス戦の切り札。キャラによっては特性も大きく変わります。
一定ターン経過で終了。
使用回数に制限があり、一度の戦闘で乱発はできません。
エックスとゼロには隠しハイパーモードがあり、これがめちゃ強い。
■アクショントリガー
キャラ固有の必殺技。WE50%以上で使用可能。
・WE消費が多いほど効果アップ
・キャラごとのQTEが入り、結果によって効果が変わる
・使用後、WEが0になる
他システムと組み合わせ、
「WEを溜める→ハイパー発動→必殺技で大ダメージ」
が有効な行動です。
■サブタンク
回復手段は全キャラ共有のサブタンクのみ。
プレイし始めるとまず回復アイテム・回復技が無いことに面食らいます。「回復手段が無いじゃねーか」と。
ご安心あれ。サブタンクでお手軽に回復できます。
回復手段をキャラごとに用意する手間が省ける。面倒くさがりには嬉しいシステム。
■ゲーム中で説明が無い重要なこと
・地上敵には射撃ダメージ半減
・空中敵は格闘攻撃75%回避
これに気づかないとめちゃ苦戦します。
気になること
ここまで述べてきたように、オススメの作品です。
一方で売上が伸びないのもうなずける、気になる点もあります。
エンカウント率が高い
一歩進むごとに戦闘になるほどエンカウント率が高め。
ダンジョンの見た目・構造がどこも似通っており迷いやすく、迷う最中に小刻みにエンカウントしてじれったい。
ダッシュ中はエンカウント率が上がる(隠れ)仕様です。せっかくダッシュが軽快なのに、軽快に使えない。
アクション性のある移動と、わりと殺風景なステージがシンボルエンカウント風なので期待を裏切られた感もあります。
しかも1回の戦闘時間が長め。
サブウェポンで1ターン複数行動できるのは戦闘時間が延びる要因です。
前述の通り、サブウェポンを絡めてテンポ良く攻撃を繰り出すのは楽しい。
反面、モーションが複数回重なって演出時間が長い。
仮にスーファミのドラクエみたいな簡易演出なら、戦闘時間が3分の1になるはず。
ボリュームが薄い
上記のエンカウント率と関連するのが、ボリュームの薄さ。
たしかにクリアまで20時間はかかります。
しかしその内容は、「拠点→ステージ→ボス→拠点」の繰り返し。RPGとしては単調です。
・ステージが狭い、短い
・イベントが少ない
・ワールドマップがない
・エンカウント率が高い
・戦闘時間が長い
これらが相まって、戦闘時間でボリュームを水増しする狙いが透けて見えてしまう。
プレイを引っ張るようなストーリーが無いのも、RPGとしては「薄い」と感じる要因です。
シナリオがなんだか雑。敵の言うことに全く聞く耳を持たないエックス達に違和感があります。
もちろん警察が犯人に感化されてしまっては話になりません。
ただ、エックス達は敵に何を言われても「お前はイレギュラーだ!」と返すばかりで思考停止。
葛藤を乗り越え「それでも俺たちはこっち側だ!」と決心するようなシナリオの起伏がほしい。
ボリュームやストーリーが薄いのは別に良いんです。
プレイ時間短めでクリアできるのはレトロゲームにおいては短所ではない。むしろ、時間がない大人が遊ぶ場合は長所になり得ます。
ボリュームの薄さではなく、水増しがツラい。
長引く戦闘の連続により、本作はクリアまでがっつり20時間かかります。
後半イベントで目立つのがシリーズおなじみのメインキャラ3人(エックス・ゼロ・アクセル)だけなのも気になるところ。せっかくのオリジナルキャラが空気です。
ゼロ・アクセルの2人は削り、仲間をオリキャラで統一した方が良かった気がします。
というのも2人を無理やりねじ込んだせいで、ゼロは変にねじ曲がった性格だし、アクセルの性能はスパイダーと丸かぶりです。
特にゼロの頑固ジジイみたいな言動は気になります。
過去作の、先輩目線でエックスを助けるベテランハンターの面影がありません。協調性に欠け、事あるごとに文句ばかり言います。
そんなゼロや、コピー能力設定が曖昧なアクセルを見ると「エックス以外は全員オリキャラにした方がより魅力的なシナリオが作れたのでは?」と思ってしまう。
RPGお約束の隠しアイテムやダンジョン、裏ボスが用意されています。
この隠し要素も水増し感が凄い。
・各ダンジョンにはちょっとした隠しエリアが1つのみ
・隠しダンジョンは一本道の階段を降りていくだけ
・隠しボス9体は1体のコンパチ
隠しボス「~テール」シリーズ9体は全員ほぼコンパチな上に、そこら辺にいそうなレプリロイドに見えます。
ここはプロトタイプゼロやVAVAのコピーとか、過去作のオマージュ的なキャラが出てきてほしかった。
いい仕事してますねぇ
ここまで語ってきたように出来は良い。戦闘が楽しい。
でもボリュームの薄さは隠せません。
総じて「地味」な印象です。
本作をプレイして、RPGにおける「地味」とは作品世界のスケールが小さいことを指すのだと気づきました。
RPGはストーリーの起伏や見える世界の広さで作品世界のスケールを表現する。
そのスケールが大きいほど「派手」と感じるわけです。
本作は見た目が地味なわけではない。
派手な技もあるしキャラデザインにも華がある。でも作品世界が狭い。
・ストーリーが薄い
・拠点から各ダンジョンに転送される単調な進行
・暗く狭い閉所でひたすら戦闘
よって広がりがない極小の世界になり、地味な印象になります。
この地味さが、知名度が低い原因だと感じました。
作品世界のスケール感を出すには、相応の開発リソース(予算)が必要。
本作をプレイすると開発リソースの少なさを痛感します。
それと同時に、限られたリソースを上手くやりくりして面白いゲームを作る意気込みも伝わってくる。
「大作ゲームは作れないけど、買ったユーザーは絶対楽しめる作品にしよう」
そんな気持ちが、秀逸な戦闘システムの一点豪華主義に現れています。
ユーザーのニーズを無視して出来の悪い要素を盛り込み、全て中途半端になったシリーズ過去作とは違う。
本作の開発チームはいい仕事をしています。
まとめ
ひたすら戦闘の繰り返しが好みじゃない方がプレイするとツラい。
ストーリーとかどうでもいいから戦闘やらせろ!な方はハマるはず。
私は、PS2屈指の名作RPG「真・女神転生III」(真3)とダブりました。
ストーリーそっちのけでひたすら戦闘、味方のカスタム、相性重視の戦闘。
トゥーン処理したグラフィックも真3ぽい。
エックスシリーズが好きな方だけでなく、「戦闘が楽しい、PS2の良作RPG」をお探しの方にもおすすめです。