ギリシャ神話を題材にしたアクションアドベンチャー「ゴッドオブウォー」。
・魅力的なキャラ
・丹念に描かれるストーリー
・美しいグラフィック
・洋ゲーらしからぬ作り込みと遊びやすさ
上記により「大味」「理不尽に難しい」という日本における洋ゲーのイメージを変えた偉大なシリーズです。
その最新作が満を持して登場しました。
主人公は前3作から引き続きクレイトスさん。
「スパルタの亡霊」の二つ名を持つ半神半人の戦士。
前作で神々への復讐を果たした後、北欧の地に流れ着きました。
ギリシャ神話から北欧神話に舞台を移し、神々との新たな戦いが始まります。
当レビュー記事は最低限のネタバレで書きました。とはいえネタバレが抑えきれません。
なので先に結論を言います。これは「本当に神が作ったゲームなのではないか」と思うほどの神ゲーです。
どこの神だよ、こんな神ゲー作ったのは。
もくじ
これが本当の神ゲー
新作を出すたびにゲームの水準を引き上げてきたGoWシリーズ。
PS3で発売された前作「Ⅲ」も、開幕のポセイドン戦やハデス戦などいまだに語り草になる演出の数々でプレイヤーの度肝を抜きました。
そのGoWがPS4で再びゲームの限界を突破!
現世代最高のグラフィックで、眼に飛び込んでくる美しい景色に圧倒されます。
システムや世界観は前作から大きく刷新しました。それでいてGoWらしいフィーリングはそのままなのが凄い。
年々プレイヤーの求める水準が上がる中、模倣ではなく進化により「これぞGoW!」と思えるフィーリングを実現しています。
舞台は北欧神話
舞台はギリシャ神話から北欧神話へ。2つの神話が夢の共演。
ギリシャ神話の神々を全員ぶっ倒したクレイトスさんは、色々あって北欧神話の世界に流れ着きました。
「そんなのアリ?」と思うけど、北欧神話のルーツはギリシャ神話らしいのでアリなのかも。
ギリシャ神話が舞台の前作までは、神々を模したイカつい像に囲まれて戦が絶えず血生臭くてハードな世界観でした。対して北欧神話はファンタジックな印象です。
かつてこんなに北欧神話の世界をド迫力で見せつけたゲームがあったでしょうか。
映画でも散々使い回されたはずのモチーフなのに全てが新鮮。
雪山を登るだけかと思いきや、大自然から神サイズの巨大建築物まで様々なロケーションが登場します。
敵となる北欧神話の神は大ボス以外、必要最低限の下っ端です。
オーディンやトールといった大物は姿を現しません。
話を聞く限りオーディンは相当なクズです。今後の活躍に期待。
大物の名前が出るとビビるけど、よく考えればクレイトスはゼウスをはじめとしたギリシャ神話の神を全員倒してるわけで今さら臆することはないんですよね。
グラフィックだけでなく演出のメリハリも凄いので飽きるヒマがありません。
・目もくらむような鮮やかな補色対比とモノクロな世界
・野外と屋内の明暗差
・美しいエフェクト
これらが絶え間なく眼に飛び込んできます。
メリハリが凄いとはいえシリーズの伝統、フィールド使い回しは健在。
同じ道のりを違うシチュエーションで楽しむ構成です。何度も山を登っては降りてを繰り返すため、今何をやっているのか忘れます。
全編ワンカットの迫力!
なんと全編ワンカット。
ロード画面や暗転が一切ありません。オープニングからずっとシームレスに進行します。
例えばファストトラベルなどロードが必要なときは、デモや狭間のフィールドを挟んでバックグラウンドでロード。その間も会話で間をつなぎます。
タイトル画面はクレイトスさんが動き出してゲームがスタート。
タイトル画面からワンカットを徹底した上、木の手形を見せて「アクションできる場所にはマークがある」ことを伝えるきめ細やかな配慮まであります。
ワンカットの視点は第三者=プレイヤー視点で一貫しており、クリアまで数十時間ワンカットの没入感は映画でも体験できないものです。
スケール感が神レベル
カメラが追いつかない超スピードで、神レベルの力がぶつかってる感!
正直、プレイする前は不安でした。
パッケージや宣伝のノリが地味だし、歳をとって父になったクレイトスさんにあのハチャメチャさが無くなったような気がして。
そんな不安はゲーム開始30分で吹き飛びました。
GOW3で度肝を抜いた「最初からクライマックス!」な演出は健在です。
プレイ開始すぐ、コナーマクレガーみたいな謎の男が登場してバトル開始。
ただのガラ悪くて身の程知らずな奴かと思ったら、コイツめちゃつえーぞ!
役者の表情、モーション、ボイスをすべて同時に取り込む「パフォーマンス・キャプチャー」という手法が採用されているとのことで動きが非常にリアル。
異様なクオリティで過去作を超えるハチャメチャバトルが繰り広げられ、開始30分でクレイトスさんとプレイヤーは疲れ果てます。
その後もドラゴン戦を筆頭に、凄すぎて笑うしかない光景を目の当たりにします。
アドレナリン全開の戦闘シーンから一転、心情を描くときはたっぷり間をとる。
静と動。プレイヤーの心理を計算しきった完璧な構成です。
スパルタの亡霊が第二の人生を歩む
ストーリーは終始謎に包まれています。
物語は妻の火葬から始まります。
クレイトスさんと妻の馴れ初め、外見や声、素性は一切わかりません。
「9つの世界で最も高い山から遺灰を巻いてほしい」という妻の遺言を実行するのが旅の目的。しかしそれが何を意味するのかは謎。
実はクレイトスさんもその真意を知りません。
一度は神になったクレイトスさんが山奥で木こり仕事に励む。
すっかり落ち着いて人並みになったなーと思いきや、持ってる丸太のサイズが普通じゃない。
クレイトスさんはギリシャの神々との戦いで散々な目にあって、あわせてきました。
そのため何事も戦いの教訓に結びつける不器用な堅物オヤジになっています。
他人を信用せず、いかなるときも油断しないし期待もしない。
特に神と名のつく奴に対してはトラウマに近い不信感を持ちます。
そんな不器用な親父と旅を共にするのが息子のアトレウス。
アトレウスはクレイトスさんの生き方を変える可能性を持つ唯一の存在です。
息子との旅を通じて親父が過去を受け入れ、乗り越え、第二の人生に踏み出す過程が描かれます。
多数の敵、神を相手にたった1人の孤独な戦いを繰り広げてきた無敵のダークヒーロー、クレイトスさん。
その冒険に守るべき存在を追加するのは大胆なチャレンジといえます。
今まで家でおとなしくしてたアトレウスは仕留めた鹿にトドメを刺したり、やむを得ず人間を殺すと動揺を隠せません。
デモはもちろん、プレイ中の様子も変わります。鎖下ろせつってんのに動かなくなったり。
本当に息子を見守っているような気分になります。
2人の掛け合いが実に微笑ましく、リアルです。
相変わらずパワー任せで状況を打破する親父を見て、息子が「あ、ああ、上手くいったね」「すごいね…腰痛めてない?」と若干引いてるのが面白い。
それに対する親父の返し「痛めてなどいない」「もっといい考えがあったら聞くぞ」が味わい深いです。
不器用な父親と好奇心旺盛な息子が最後まで上手くいくはずもなく、2人は度々衝突します。ついには恐れていた事態が現実に。
アトレウスが反抗期になると謎解きで「もしかしてわかんないの?こっちだよ」みたいに煽ってくるから普通に腹が立つ。
戦闘中も言うことを聞きかないのでイライラ。
クレイトスさんとプレイヤーの心情が完全にシンクロ。
最初は「良い子だなー、可愛いなー」と思わせておいて「思春期の子供ってこんな感じなのか…この旅もう無理かも」と、しっかり子育ての大変さをプレイヤーに味わわせる計算され尽くした演出です。
だからこそ、突き放すような態度をとられても必死で息子を守ろうとする親父の姿が泣ける。
最初はただ好奇心に任せて好き勝手してたアトレウスは、旅をするうちクレイトスさんの事情を察して気を回すまでに成長します。
戦闘でも対等に共闘できるほど頼もしい存在。
やはりカエルの子はカエルで、物語後半ではクレイトスばりの無茶な「考えがある」で状況を打破します。
息子が目立ちすぎず、ついてくるだけの脇役でもない絶妙なバランス。
決して親父が保護者として世話を焼くだけの話ではありません。
爽快な立ち回りの邪魔になる要素は潔く切り捨てました。
NPCとの2人組でありがちな「2人揃ってドアを開ける」みたいな面倒くさい要素はカット。「バイオハザード5」のような煩わしさは一切ない。
壁を登るときはアトレウスが勝手に背中に飛んでくるし、クレイトスが即死するようなギミックも勝手に抜けてきます。
戦闘でも非常に優秀。
息子はちょこまか動いて腹が立つだけのNPCではありません。
息子の弓攻撃はまるでファンネルのような早いレスポンスと命中精度。
親父の斧投げを避ける相手にも弓は百発百中。リロードも早いので撃ちまくり。どんな地形でも貫通するので位置取りを気にする必要もない。必殺技も非常に優秀。
しかも無敵。オトリとして活躍します。
絶対、成長したら親父より強い。
初陣の息子をオトリに使うクズ親。
2人旅の脇を固める、クセが強くてどこか抜けてるキャラ達(主にオッサン)も魅力的です。
同行するキャラは移動中も色んな話をしてくれます。
せっかちな自分でも会話の続きを聞きたいから船から陸に上がるのを待つぐらい内容が面白い。
脇役はただの賑やかしのようで、実はみんな物語上欠かすことのできない重要キャラです。
それぞれが複雑な背景を持っており、物語の最後にはそれまでの何気ないやり取りが全てメインテーマの伏線になっていることに気づきます。
以下、本作の名脇役を紹介。
ドワーフ兄弟「ブロック&シンドリ」
クレイトスが持つ戦斧「リヴァイアサン」を作った兄弟。
青い肌をしたぶっきらぼうな兄ブロック、神経質で潔癖症な弟シンドリ。
現在は喧嘩別れ中です。
兄は悪態をつきながらも弟の生活を気にかけており、弟は兄を天才だと認めているけどきっかけが無いのでいつまでも仲直りできない状態。
別々にショップを開いてそれぞれの手法でリヴァイアサンを鍛えてくれます。
森の魔女
前作はパンドラちゃんという萌え要素があったけど、本作には若い女の子が1人もいません。
登場する女性はこの目力が半端じゃない魔女だけ。
ミーミル
シリーズ伝統の生首。
そして生首をアクセサリーか何かのように腰につける、生首が最も似合う男クレイトスさん。
九つの世界で最も賢いと謳われる賢者で、オーディンに109年間身体を拘束されていました。
「首を切り落とす→復活」という逆転の発想で拘束から逃れて生首化。
「度重なる拷問で自分はすでに死んでおる」というわりに明るくてひょうきんなキャラで和みます。
初登場時の「ここからさっさと消えてくれ」の言い方で僕はさっそく心を掴まれました。
博識で、ピンチに陥ったときは冷静に助言してくれたり親子のために敵の注意を引いたりしてくれる頼りになる生首。
ヨルムンガンド
その巨体から世界蛇と謳われる怪物。
こう見えて実は良い奴なのがギャップ萌え。
孤独故に話好きなのに失われた古代語で話すから誰にも伝わらない悲しみを背負っています。
GoWが再びゲームの限界を突破
探索しがいのある広大な箱庭マップ
この濃さでこのボリュームはどうかしてる。
前作はほぼ一本道だったのが、探索しがいのある広大な箱庭マップになりました。
多様なロケーションがシームレスにつながった世界を自由に探索できます。
クリアに要する時間は前作と同じ程度なのに、「縦」のシナリオだけでなく世界が「横」に広がったので途方もないボリュームに感じます。
広大な複数の世界にサブクエストが多数。
ちゃんと濃いメインシナリオで引っ張りながらつい脇道に行きたくなるように作り込まれています。
流れるようにプレイヤーを引っ張る導線と、探索の自由度のバランスが絶妙なマップデザインにより足が勝手に目的地の逆方向へ進む。その先には宝箱や隠し部屋が。
やらされるのではなく自分の意思で探索して自分で見つける喜びがあり、これが本当の「探索要素」だと実感できます。
オープンワールド系にありがちな、広い退屈なフィールドに放りだされて雑多なクエストをこなすような雑な作りではありません。
ドラゴンやヴァルキュリアを解放する大型サブクエは難易度的にも遊びごたえ十分。
僕はヴァルキュリア1体倒すのに2時間かかりました。
死にゲー好きにもオススメ。
9つの世界があり一部は封印されています。
てっきりDLCで1つ1つ開放する予定なのかと思いきや、まさかの「DLCは考えていない」(ディレクター談)。DLCの為のアイデア温存も一切無いのだとか。
リアルマネーでゲーム内通貨を買う(マイクロトランザクション)みたいなのも無い。
販売側は本当にこれで大丈夫なのか?本体価格だけでこんなに楽しんじゃって良いのか?とプレイするこちらが不安になります。
本編と無関係の世界「ムスペルヘイム」「ニブルヘイム」はいわゆるエンドコンテンツ。
それぞれDLC1つ分のボリュームがあり、本編を遥かに凌ぐ難易度です。
「ムスペルヘイム」
敵のラッシュ!ラッシュ!
灼熱の地で6×3難易度=計18種類の試練が待ち受けます。
厄介な条件が乗っかっており歯ごたえ十分。
「ニブルヘイム」
地形は固定で敵、罠、宝箱の配置は毎回ランダム。
限られた探索時間で「探索してアイテムを集める→探索時間を伸ばす装備を作る→探索」を繰り返す本格的なトレハン仕様。
トレハン好きにもオススメできます。
気づきを味わえる親切な謎解き
カメラを自由に動かせるようになったので、仕掛けが色んな角度に存在します。
360°見回すのはけっこう大変だけど、行ける場所はわかりやすい模様がついているので探索のストレスは無いです。
困ったときはたいてい上に何かあるので上を見ましょう。
ナビは目的地の方角を表示するだけでなく、自分の位置に合わせて方向を指示してくれるタイプ。どんな地形でもナビに従えば先に進めるので楽。
息子や生首の視線や台詞でもさりげなく誘導してくれます。
クレイトスさん自身が「なんだかあの辺が怪しいぞ」なんて言うと興ざめなわけで、他キャラを上手く活かしているなと感心しました。
ダクソ風の丁寧なアクション
ザクザク斬るだけで手応えがなかった前作から一転、隙を見て的確に攻撃を積み重ねるダークソウルのようなゲーム性になりました。
ボタン連打のゴリ押しは通用しません。
敵の攻撃は誘導が強くてリーチが長く、スーパーアーマー状態。
複数戦のようで実はタイマン、みたいなヌルい仕様ではなく普通に連携プレーで死角からボコボコにされます。
(てかクレイトスさんの身体で画面の3分の1が死角)
2、3発食らうと瀕死かつ回復手段が限られているため1ミスが痛い。回復アイテムを持てないし自動回復もありません。
最初の大型ボスが既に強くて何度もやられました。
僕はダクソ3や仁王を経験して多少の「死にゲー」では動じないつもりだったけど難しい。
とはいえ、
・ラッシュ(敵編成)が毎回緻密に組まれているので「基本→応用」の段階的な学習で上達を感じられる
・戦闘機会が多いので思う存分戦える
・難しいからこそスキル・装備強化にやり甲斐がある
よって理不尽さは全く感じない、楽しい難しさ。
ちなみに、ダメージが通らず1撃食らうと即死みたいに理不尽なときは育成不足です。
アクションの味付けも本当に上手い。
基本は「斧投げ・斬る・避ける」の簡単操作で戦えます。
慣れるとアトレウスと同時攻撃、攻撃・回避しながら流れるように次の行動につながるアドレナリン出まくりな立ち回りが可能。
アトレウスと同時攻撃で気絶ゲージを溜め、他の敵にも対応しながらおもむろにCSアタックを決める!
2人を同時操作しているかのような新感覚を味わえます。
元々多いアクションはアップグレードで使い切れないほど増加。
後半はメイン武器まで増えてアクションの幅がどこまでも拡大します。
色々できる中、斧投げの独特なフィーリングだけで楽しいのが素晴らしい。
斧投げは一言でいうと映画「マイティソー」のムジョルニア。
戻ってきた斧を掴んだときのズシリとした手応えがたまらん。
投げたら手動操作で引き寄せます。
慣れなうちはどこかに投げたまま斧で攻撃しようとして素手攻撃になり「あれ?大事な斧無くなった~わーん」みたいなことが多い。
謎解きでエイム操作がシビアな場所があるのでTPS・FPSに慣れてないとちょっと難しいです。
例えば制限時間内に鐘を3つ鳴らす的当てはちょっとエイムがもたつくと失敗。
ハクスラのようにやり込める育成
過去作ではオマケ程度にすぎなかった育成要素が大幅パワーアップ。
「ディアブロ3」みたいなハクスラに近い仕様になりました。やり込みが熱いです。
ルーンスキルの回転を上げて攻撃重視、回復・防御機会を増やした守り重視、パリィ成功時のリターンを上げたテクニック重視など、自分の戦闘スタイルに応じてカスタム可能。
素材を集めて多種多様な装備をクラフト、さらに素材を使って強化。
装備にはそれぞれアビリティをつけるスロットつき。そこにはめ込む「呪力」のレア物もあり収集欲が止まりません。
さらなるレア装備が手に入る「New Game+」がアプデで追加されました。
New Game+はデモカット可能でサクサク周回できます。
デモ全カットしても全然楽しい。何周でもできそう。
まとめ:これが本当の神ゲー
想像をはるかに超える神ゲーです。
全てが凄すぎて「北欧神話一発目でこんなの作っちゃって大丈夫か?」とおせっかいなことを考えてしまうほど。
GoWがまたひとつゲームの限界を突破し、新たなレベルに踏み出しました。
平成の終わりにこんな作品を遊べて幸せです。
キャラやシステムを1から丁寧に作り出そうという、謙虚なモノづくりの精神を感じます。
少なくとも本作のディレクターはGoWを愛する開発スタッフやプレイヤーのことを「GoW病」なんて言わないでしょう。
北欧神話編は3部作の予定。本作だけでは完結しません。
とはいえ一本の話としてしっかりまとまっているので見応え充分です。
次作への伏線もしっかり仕込まれています。
エンディングの演出は鳥肌が立ちました。この感動はぜひネタバレ無しでプレイして確かめてほしい。
北欧神話の大ネタは山ほど温存しているし、次作もとんでもないことになりそうです。