ゴジラ

地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン【感想/評価】ストーリーは無視してガイガンを味わう

投稿日:2019-08-01 更新日:

地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン <東宝Blu-ray名作セレクション>
東宝 (2019-05-22)
売り上げランキング: 62,665







子供向けストーリーを無視してガイガンを味わう

■あらすじ

「絶対の平和」をうたう非営利団体により世界子供ランドが建設されていた。

そこで怪獣デザイナーとして雇われた、売れない劇画家の小高は謎のテープを手に入れる。

テープを落とした女性と調査を進めるうち、子供ランドは地球征服を企むM宇宙ハンター星雲人の秘密基地であることがわかった。

一方、テープの電子音に気付いたゴジラとアンギラスは日本へ向かう。
星雲人はキングギドラとガイガンを呼び寄せる。

決戦の地、子供ランドで地球怪獣と宇宙怪獣の死闘が始まる!

公開:1972年/3/12

 

「ゴジラ対ガイガン」はゴジラが完全に正義の怪獣として描かれている作品。

緊張感抜群の曲と「キーン!」って効果音で入るオープニングスタッフロールがめっちゃ格好いいので期待が膨らみます。
でもこれ、伊福部氏作曲「日本の自然と日本人の夢」の「火山」を流用しているのだとか。

 

結論から言うとゴジラ映画屈指の駄作。

ストーリーが完全に子供向けでさすがにツラいです。「アレ」がドアップで映るのもツラい。

せっかく格好いい新怪獣ガイガンが出てくるのにチンピラみたいな役どころなのがもったいない。
キングギドラの存在感はずいぶん薄くなってしまいました。

 

とはいえ、前作「ゴジラ対ヘドラ」に比べると豪華になっている印象です。
久しぶりに綺麗なヒロインが2人も登場するのが嬉しい。昔は当たり前だったのですが。

本作から侵略者&怪獣タッグマッチがお決まりの形式になります。

 

ストーリーが意味不明

誰が何のために何をやってるのかよくわかりません。意味不明。

「世界子供ランド」を建設する目的が謎。
ゴジラ塔のレーザーは既に完成、ガイガンとキングギドラは完成前に呼べるし、秘密基地にするには目立ちすぎ。

会長は子供というにはオッサンっぽい。
敵のナンバー2が「事務局長」って呼ばれているのも気になります。国連トップをイメージしているのでしょうか。
この事務局長、喋り方がウザすぎる。「NOです!」

 

主人公が劇画家という設定が全く活かされていないのも気になります。

Mハンター星雲人はなぜ売れない劇画家を採用したのでしょうか。
シュクラ、ママゴンとかにも興味なさそうだし。
宇宙人は大衆芸術をナメてるのか、有名所を起用するお金が無いのか。

最後は一応、劇画の活かすけどかなり無理やりです。秘密基地なんだから監視カメラぐらいつけとけよ…

ヒッピーみたいなオッサンの存在意義もわからない。

しかも結局、苦労して入手したテープとか関係なくゴジラ達が独自に行動するので人間側の活躍は意味が薄い。

 

そんな中無理やり入れ込まれた科学に対するアンチテーゼがなんとも腑に落ちません。
最後に「平和ってなかなか難しいものね」といわれてもポカーンとしてしまう。

 

Mハンター星雲人の正体は「災厄の中で生き延びられる生命力を持つもの」
つまりアレです。これが劇中にどアップで映るのがツラい。

ちなみに本作の敵、Mハンター星雲人は次作「対メガロ」の海底王国シートピアと友好関係があるらしいです。そのため次作にもガイガンが登場します。
宇宙にも敵、海底にも敵。敵多すぎですね。

 

ゴジラ・アンギラスの吹き出し会話

本作最大の特徴はゴジラ・アンギラスの吹き出し会話
これは当時でも賛否両論だったそうです。

以下、会話のまとめ (太字がゴジラ)

「おい!アンギラス」
「なんだい?」
「すぐていさつにゆけ」
「OK!」
「いそげよ」

以上のように2体には明らかな上下関係があります。

アンギラスは偵察に行ったせいで人間の通常兵器でボコボコにされます。その後、また会話があるのですが

「いそげよ」
「OK!」

ゴジラはいったい何様なんですか。一方のアンギラスは良い奴すぎて泣けます。

 

アンギラスは本当にかわいそうで、ゴジラに命令されて相模湾に行くけど防衛隊の攻撃に追い返されてしまいます。

作中で一番火薬使ってるんじゃないかというほどの総攻撃。爆炎でアンギラスの姿が見えません。

最後は額にメーサー食らって悲しそうに泣きわめくアンギラス。
このとき登場する「メーサー殺獣光線車」はゴジラ映画初登場で、アンギラスはその最初の被害者。

結局、アンギラスは一切攻撃せず上陸することもなく海に帰りました。

「おい!アンギラス」
「なんだい?」
「人間は攻撃するなよ」
「OK」
とゴジラと話したのかもしれません。

 

地球怪獣vs宇宙怪獣タッグマッチ

地球怪獣vs宇宙怪獣タッグが激闘を繰り広げます。
炎に囲まれながら戦う石油コンビナートのシーンが特に格好いい。

片目を潰され額から流血するゴジラや、1本背負いされるキングギドラとか他じゃ観れません。

キングギドラの街破壊シーンは夜間処理された過去作からの使い回し。
新録シーンは首の動きが硬く、明らかに操演の質が劣化しています。

その分、ガイガンだけはちゃんと作ってあるので見応えあり。
スーツの質、貨物船を蹴り飛ばすなど残忍さを表現したアクションも良い。
戦闘機の機銃を全部爪で捌いてジャンプ斬り!

前作のヘドラも圧倒的な強さと恐さが格好いいけど、ガイガンはヘドラとは真逆のソリッドな格好良さ。
アンギラスと比べれば一目瞭然ですが、怪獣デザインが一皮むけたなと。

 

ダッグマッチなのですが、この宇宙怪獣に対して相方アンギラスではどうも不安です。

絵面が地味な地球怪獣2体に対して、敵は首3つ&腹にノコギリとか特徴多すぎでしょ。
飛び道具を持っていないアンギラスはどちらが相手でも勝ち目が無いじゃないか。

さらに何が強いってゴジラ塔のレーザーがめっちゃ強い。
超威力な上に確実に眼を狙い撃つ射撃精度。しかも連射が効く。
これにはゴジラも為す術なしで瀕死に追い込まれます。てか放射火炎を撃て!

宇宙怪獣&ゴジラ塔レーザーに、地球怪獣コンビはかつてないほどボコボコにされます。
コントロール装置を破壊しなければ確実に負けていました。

ゴジラ塔に倒れ込むゴジラを見てガイガンがキングギドラに、
「みろよアイツ。じゃ、俺がちょっと行って片付けてくるぜ」
みたいなジェスチャーしてるのが笑う。
その後、ゴジラの策略にハマって仲間割れを始めるのも笑う。

最後はゴジラの主人公補正でなんとか追い返すことができました。あーよかった。

 

まとめ

ドラマ部分の意味が何度観てもよくわからないし、特撮は使い回しシーンが目立ちます。
とはいえ、石油コンビナートで炎に照らされるガイガンが格好いいのでここだけも観る価値あり。

ガイガンは次作にも登場しますが完全にプロレス風味。なのでガイガンを味わうなら本作です。







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