ゴジラVSデストロイア <東宝Blu-ray名作セレクション>
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前作:ゴジラvsスペースゴジラ
次作:ゴジラ2000 ミレニアム
平成VSシリーズ最後を飾るにふさわしい作品
■あらすじ
香港に現れたゴジラは身体が赤く輝き、熱戦が赤く強力になっていた。
自然の核爆発によってゴジラの体内炉心が不安定になり、このままでは核爆発を起こす危機的状況だった。
スーパーXⅢによってゴジラの炉心暴走は止められたが、メルトダウンが避けられない状況となる。
一方、東京湾海底では40年前にゴジラを消滅させたオキシジェンデストロイヤーで異常進化した怪物「デストロイア」が誕生。
デストロイアならメルトダウンを阻止できるかもしれない。
三枝未希たちは、ゴジラジュニアを使ってゴジラをデストロイアへ誘導する。
完全生命体デストロイアとメルトダウン寸前のゴジラの死闘が始まる。
公開:1995/12/9
「ゴジラvsデストロイア」は平成vsシリーズ最終作。
初代以来に、ゴジラの最後を描きます。
最後を迎えるのはゴジラだけではありません。
ゴジラが死ぬときは、日本どころか地球が核の炎に包まれるというのです。
劇中で挿入されるシュミュレーション映像が恐い。
最悪の事態をどう回避し、ゴジラがどういう最後を迎えるのか。
その先には衝撃的なラストが待っています。
最終作の予定で制作された「ゴジラvsメカゴジラ」と並んで見ごたえのある作品です。
僕は小学生だった当時に劇場で観ました。
大好きなゴジラがあんなことになるラストシーンにショックを受けてしばらく放心状態になったのが良い思い出です。
平成シリーズだけでなく、ゴジラの歴史を締めくくる作品。
初代ゴジラの続編でもあり、初代のオマージュが豊富です。
例えば、メインキャストの2人
・山根ゆかり(石野陽子)
・山根健吉(林泰文)
2人の父は山根新吉。
山根新吉は初代ゴジラの大戸島襲撃で家ごと親を踏み潰され「おかあちゃーん」と叫んでいた少年です。
あの後、山根博士の養子となっていました。
初代のヒロイン、河内桃子さんが同役で出演しています。お年を召されてもお綺麗。
40年前の出来事を引きずっており「地球が滅びるとしても芹沢博士の意思を尊重しろ」(意訳)とかなりムチャを言います。
平成シリーズのキャラも活躍します。
「vsビオランテ」から6作連続出演の三枝未希。
彼女の物語も本作で完結させます。
ゴジラはおろかジュニアすら1人では誘導できないほど超能力が衰えています。
「何も感じない…ジュニア生きてるの?」と、歳を重ねて力が落ちた様がゴジラと重なり切ない。
ジュニアを作戦に利用することに
「できないわ!ジュニアをオトリに利用することなんて!」
と反対する三枝未希はもはや邪魔者のような扱いです。
前作の、新城功二とのロマンスは無かったことになりました。
恋も力も無い。
キャラの役目を終えたことがはっきりとわかります。
対して、同じエスパーでも「恋もしたいし結婚もしたいな」という新時代の価値観を持つのが新キャラの小沢芽留(大沢さやか)。
最後、真っ先にゴジラを感知するのは三枝さんではなく小沢さん。
平成シリーズが終わり新たな時代が始まる、世代交代を暗示しています。
スーパーメカゴジラ、モゲラと2作品続けて超兵器を撃破されたGフォース司令官の麻生(中尾彬)さんはなんだか余裕がありません。
「vsメカゴジラ」でゴジラにプラズマ・グレネイドを直撃させたときの自慢気なニヤけ顔が懐かしいです。
本作に登場する超兵器は、前2作の巨大ロボに対して控えめな「スーパーXIII」。
麻生さんのせいでゴジラ対策予算を削られた感が否めません。
対ゴジラ兵器ではなく原発事故や核攻撃を想定して作られた多目的大型戦闘機なので、フォルムがX2までと比べて普通の爆撃機に近い。
そのため、熱線を増幅して撃ち返すファイヤーミラーはありません。
兵器は冷凍メーサー、冷凍ミサイル、カドミウム弾とほぼ災害対策用。
しかしスーパーXIIIはタイマンでゴジラの動きを封じた上、過去最強の放射熱線を食らっても撃破されない。
結局シンプルな兵器の方が強かった!
乗っているのは、麻生が「特殊戦略作戦室のアイツしかいないでしょう」と抜擢したヤングエリート黒木。
中身が「vsビオランテ」の高嶋政伸から高嶋政宏にすり替わっています。(高嶋政伸さんはスケジュールの都合がつかなかったらしい。)
そのため、経験を積んだ「vsメカゴジラ」の青木だと勘違いして「青木もずいぶん立派な軍人になったなー」と感動しました。紛らわしい!(笑
とはいえ、黒木だと思って観ても感動できます。
トゲトゲしく融通の効かない所がマイルドになっており、6年間でヤングエリートからベテランエリートになったことがわかる。
冷凍弾や燃料をフル補充したことを告げられた黒木の台詞、
「これで我々の来年度の予算は0だな。…来年度があれば、だが」
にはシリアスな状況でも余裕を忘れないベテランの貫禄があります。
最強!バーニングゴジラ
上海上陸シーンからスタート。
ゴジラが海外で暴れるのは珍しいですね。「怪獣総進撃」以来でしょうか。
胸、背びれを中心に目など体の各所が炎のように赤く発光。赤く光るだけでなく表皮がテカテカしてるのが印象的。
常に蒸気をまとっており、その姿には覇気が漂っています。
ギミックとエフェクトがイカつすぎて、このスーツに人が入ってるのが信じられません。どう見ても生きてるゴジラ。
G細胞が限界を超えて活性化したゴジラは無敵です。
デストロイアの大技で裂傷を受けても即回復。
これには、麻生も「なんてやつだ!」。
国連G対策センター長官の国友は
「今のゴジラにオキシジェンデストロイアでさえも無力なのか」と驚愕します。
背びれが溶けた後は、「俺が死ぬ前にテメェだけは絶対に倒す」といわんばかりにデストロイアを粉砕。神となったゴジラは誰にも止められません!
この生命を燃やすようなバーニングゴジラは、歴代ゴジラの中でも最強といえます。
そんなゴジラが強すぎるため、デストロイアとの決戦はあっさり気味。
しかもデストロイアにトドメを刺すのは人類、スーパーXIIIの超低温レーザー砲や冷凍メーサー戦車の集中攻撃です。
そのため、デストロイアはスペースゴジラに並んで最強怪獣なのに弱キャラの印象が残ります。
これは、オキシジェン・デストロイヤーすら超越し神となったゴジラを描く作品なので仕方ないところ。
(個人的に、デストロイアのデザインはいかにも「僕が考えた最強の怪獣」って感じで好きではないです。)
決戦があっさり気味なのはバーニングゴジラの着ぐるみが重装備すぎて長時間の戦闘を描くのが困難という理由もあります。
バーニングゴジラの着ぐるみはFRPと電飾で赤く発熱する皮膚を表現し、体から蒸気を吹き出す炭酸ガス噴出装置つき。
大量のギミックを全身に仕込んだスーツは、初代と同じく重量100キロを越えました。
電飾の電源などはケーブルを引きずる状態になり非常に動きづらかったらしい。
こんな重装備スーツで着ぐるみ同士の戦闘シーンを描くのは困難です。
でも長い戦闘シーンが無くとも、歴代最強クラスの怪獣、デストロイアすら物ともしないゴジラの強さが引き立っているのでOK。
ゴジラ死す…衝撃のラスト
最後の瞬間、映像と音楽がまあ美しいこと。
何回観ても鳥肌立ちます。
秀逸なのは劇中で何度も「ゴジラの最後は回避できるかもしれない」と何度も思わせるから緊張感が維持できているところ。
ゴジラは撃退したいけど死んでほしくない。
観客はみんなゴジラが好きですし、なんだかんだで死なないと思っています。宣伝はきっと「死ぬ死ぬ詐欺」に違いないと。
だからカドミウム弾で制御できたり、オキシジェン・デストロイヤーと上手い具合に中和されたりで普通のゴジラに戻るはず…と良い方向に考えます。
しかし、ことごとく希望が打ち砕かれます。
カドミウム弾による一時的な制御で安心したところ、すぐさまメルトダウンで地球に穴が開くという絶望的な事態に。
これには「やはりゴジラの破滅は避けられないのか」と落胆します。
でも、まだ希望はある!デストロイアがなんとかしてくれるはず。
それでダメでもなんかしら奇跡が起こってゴジラは助かるに違いない!
最後まで奇跡を信じて展開を見守ります。
そして最後は…
最後の瞬間はぜひ作品でご覧ください。
当時、最後のゴジラはファンサービス的な幻だと思いました。
ゴジラはいつまでも私達の中で生きている、的な。
色々と伏線はあるんですよね。
三枝未希→小沢芽留のバトンタッチとか、「vsメカゴジラ」のファイヤーラドン吸収復活とか。
ビオランテが急に現れては消えるのもアリな世界なので、ゴジラは一回消滅してから瞬時に復活したと捉えることもできます。
観る人によって解釈が分かれる名シーンです。
ムダが多くてダレる人間ドラマ
以上のようにゴジラからは眼が離せません。
対して人間ドラマはムダが多くてダレる。
丸々無くて良いようなシーンが続きます。
まず気になるのは、「三枝未希に会える」という理由でGサミットに参加した科学オタクの山根健吉(林泰文)。
でしゃばりすぎ!発言力デカすぎ!
しかも頻繁に決め顔、キメ台詞で映り込むのがウザい!
ネットに論文を上げたぐらいでこんなに重用されるものでしょうか。
Gサミット参加からは難しい顔をして決め台詞を吐くばかりでキャラが立っていません。
「僕らはオキシジェン・デストロイヤーを作らなかった。しかしオキシジェン・デストロイヤーはそこにある」
と決め顔。
これには国友長官も「なにをいってるんだ」とポカーン。
目当ての三枝未希とはほぼ絡みなしで、三枝未希ファン設定が無意味。
林泰文さんの芝居が臭いのもツラいところ。
世界中探してもこの科学オタク以上の研究者がいないのが悲しいです。
主役格の2人、
・伊集院研作 (辰巳琢郎)
・山根ゆかり (石野陽)
このコンビも存在意義が薄い。
伊集院博士は演技がちょっと大根すぎませんか。
「ロマンチストかどうかはわかりませんが少なくともマッドサイエンティストではありません」
って、なに言ってんねん。
この台詞は「vsビオランテ」の桐島博士(三田村邦彦)「あなたはロミオのつもかもしれないけど、私はジュリエットをやる気はないわ」に匹敵する嘘くささ。
そもそも伊集院博士がミクロオキシゲンを作ったこと自体、シナリオに全く関係ありません。
博士と関係なくミクロオキシゲンが生まれているし、それに対して博士が何かするわけでもない。
一方で、デストロイアに襲われた山根ゆかりを命がけで救出。冷凍兵器使用を提案するなど、肩書きと関係ない活躍が目立ちます。
初めてデストロイアを確認したとき、博士によるシリーズおなじみの強引説明入ります。
「古代の地層に閉じ込められた単なる微小生命体。それが40年前、オキシジェン・デストロイヤーによって無酸素状態になり復活し、さらに大気に適応するため異常進化した」
粗い映像を見ただけで自信満々に断言できるのか謎すぎ!
てかデストロイアが自然発生しているのも大問題です。
第2、第3のデストロイアが誕生するだろこれ。
山根ゆかりは終始鼻につく。
散々、科学者を楽観主義者とバカにしたあげくラストの、
「これが私たちの償いなの…」
「科学、核をもてあそんだ私たち人類の…」
はクサすぎて、ほんとナメとんのかと。
てか償いならアメリカとか別の国に行ってくれという気がします。
デストロイアは5段階変身が詰め込みすぎ。
幼体のホラー演出は「ガメラ2」の劣化版。
「デストロイアに火器を使うな」つってんのに思いっきり火炎放射しているのが謎です。
このように気になることは多々ありますが。
でも、それすら気にならないほど「ゴジラの最後を描く」というコンセプトがしっかりしているためギリ許せます。
まとめ
ゴジラの最後を逃げることなく描き、
・ゴジラvsモスラ :420万人(観客動員数)
・ゴジラvsメカゴジラ:380万人
・ゴジラvsスペースゴジラ:340万人
・ゴジラvsデストロイア:400万人
と大ヒットを連発した平成シリーズを見事に完結させました。
今後、
・ミレニアムシリーズ
・ハリウッド版ゴジラ
・シン・ゴジラ
とゴジラは続くけど、自分の中では「ゴジラvsデストロイア」がゴジラ最終作です。
初代、平成シリーズを観た後に鑑賞するのがオススメです。