シリーズの原点回帰、スタイリッシュ2Dアクションを目指します。
その「X8」は本当に信用してもいいのか?
シリーズ黄金期「X2」「X4」のハイスピード・スタイリッシュ感を味わえるのか?新要素はどんな感じ?
など、気になる部分を解説します。
もくじ
ロックマンX8の特徴
ロックマンX8は、ストレス発生装置と化した前作「X7」から大反省して作られた作品。
その意気込みはパッケージ裏の売り文句「これは面白い」に表れています。
「X5~7」を開発した第三開発部(別名「駄遺産」開発部)からスタッフを一新し、近年のエックスシリーズでは例外的に評判が良い「ロックマンX コマンドミッション」のスタッフが参加。
グラフィックは「X7」「コマンドミッション」と熟成してきた3Dを踏襲し、シリーズおなじみの軽快な横スクロールでサクサク進めます。(例外あり)
ゲームバランスも絶妙。
1周目はシステムを色々活用してギリクリアできる感じで、達成感を味わえます。
総じて、「X7」までの悪印象を払拭する良作アクションです。
悪名高いエイリア通信が無くなりました。
「ブレス」シリーズの吉川達哉氏がデザインを担当したことで、エイリアに女性らしい魅力が出たのも嬉しい。
システム解説
新要素を紹介します。
新要素
「リカバリーゲージ」
ダメージを受けると体力バーにリカバリーゲージ(赤いゲージ)が残り、待機するとその分が回復します。
つまり交代でダメージを回復できる。
また「X7」と違い相方がやられてもゲームオーバーにはなりません。
同社のタッグバトル格ゲー「VSシリーズ」に近いシステムを導入し、交代(チャンジ)の重要性が高まりました。
「X7」の道中は突っ切る方が楽、というかまともに付き合うのがバカらしいので交代なんぞ使った覚えが無いです。
対して、リカバリーゲージが前提で被ダメが大きい本作でゴリ押しは通用しません。
3発食らうと瀕死、敵ライドアーマーのパンチ1発で即死なのでチェンジを利用して粘る必要があります。
敵に掴まれた時、チャンジで抜け出せるのも重要。
状況に応じて、自分の判断でキャラを入れ替える。
チェンジのシステムとアクションが楽しめるステージ構成により、幅広い遊び方ができるようになりました。
今までは形だけだった「ダブルヒーローシステム」がようやく完成したといえます。
「ダブルアタック」
ダブルアタックは、アタックゲージ満タンで使える全体攻撃&超威力の合体技!
たしかに爽快です。でも「ボスが発狂したら使え」と言わんばかりのシステムなのでやらされている感が強い。
演出もなんだか雑。二人で無茶苦茶するだけ。
「クラッキング」
一部の攻撃で敵のシールドをクラッキング(剥がす)。
敵がシールドを張るので、ただ攻撃するだけでなくシールドを剥がすタイミングも重要です。
シールドとクラッキングによりゲーム性が一段深くなりました。
クラッキング対応技は、
・エックス:最大溜め
・ゼロ:通常攻撃3段目
・アクセル:ショット8発目
「ラボラトリー」
ラボラトリーで、ステージ中で入手した「メタル」で3人の能力(チップ)を購入してキャラをカスタム。
「X5」~「X7」のゴチャゴチャしたカスタムシステムを経験済なら「そうそう、こういうので良いんだよ」と称賛せざるを得ないでしょう。
とにかくシンプルで快適です。
また、キャラ強化が偏りがちな過去作と違い3人をまんべんなく強化可能。
サブタンクも低コストでチャージできて便利。
ステージ中に隠されたレアメタルを収集するやり込み要素もあります。
隠しチップは「無くてもクリアできる、あれば助かる」程度の効果。プレイの幅を狭めないバランスが絶妙です。
難易度ノーマル以上でクリアすると強化を引き継いで周回できるのも嬉しい。
無双化したキャラで俺ツエーできます。
その他、「X7」からの改善点
前作から引き継ぐ部分も、多くの改善点&新システムで快適になりました。
・余計なシステムを潔く削除
具体的には、
ボスのレベル制、レスキュー、しゃがみ、ナビのしつこい呼びかけ、無限リトライ。
・ダッシュ壁げりの仕様が元に戻った
「X7」と違い慣性がつくので段差を越えられます。
・ムービーと会話のスキップ・早送り可能
これ重要。
・ロード時間が短い
ステージ選択時のボスデモ中に前半マップを、中ボス戦の間に後半マップをロードしているらしい。
プレイヤーキャラ3人の特徴
プレイヤーキャラ3人は性能がしっかり差別化されており、それぞれ違う使用感が楽しめます。
エックス
チャージショットはシリーズ初の溜め3段階。最大溜めは高威力。
3人中最高の防御力。
さらにパワーアップパーツで強化。
パワーアップパーツは、ベースの「ニュートラルアーマー」に2種類のプログラム「I・H」を組み合わせる仕様です。
部位それぞれの組み合わせでパターン豊富。
パーツを入手できるのはエックスだけなので、入手するときはメンバーに入れておく必要があります。
未クリアのステージでもエスケープ可能なのでボスを倒す前にパーツを集めることも可能。
パーツの中でも特にアームの選択が重要です。
オススメは「I」アーム。
ノーマルショットが1段目チャージの3連射になり瞬間火力が大幅アップ。
1段目チャージが必要ないのでチャージ時間も減少。
ただし最大溜めのビームは死に技なので溜め時間の調整が必要です。
全体的にクセがなくて使いやすいキャラ。
ただ、特殊武器は使いづらいです。
・地上限定技が多い
・上下への攻撃手段に乏しい
・スキが大きい
の三拍子でほぼボス専用。
アクセル
初登場の前作「X7」ではエックスの下位互換だったけど、差別化されて個性が出ました。
・ショットがフルオート&8方向
・操作方法の改良
具体的な改良点は、
ホバー操作:ジャンプ中にジャンプボタン
ローリング:下+ダッシュボタン
これなら前作のように暴発しません。
・特殊武器が武器ゲージなしで使い放題の専用武器
前作はエックスのコンパチでした。
・コピーショットはチャージ不要に
・変身・解除は任意のタイミングで可能
しかし肝心のコピー能力が前作以上に使い勝手悪いので隠しアイテム入手用です。
「もうこの設定自体、無くていいのでは」って気がします。ついでにいうとローリングも使いません。
ゼロ
・3キャラ中唯一、二段ジャンプ可能で動きが軽快。
・通常攻撃の火力が最高。
でも前作同様バスターは捨ててきた。セイバーのリーチはさらに短くしてきた。
しかも見た目に力強さがなくて格好悪い。
「えいっ」みたいな女々しいモーションが気になります。
チップ開発で攻撃回数や武器が増えて攻撃の幅が広がります。
でも結局、前作と同じく1段目の攻撃力が高いので1段目ブンブン。強化後は「螺刹旋&Dグレイブ」で広範囲ブンブンになりがち。
「X7」から盛り返したに過ぎない
全体的には良作アクションです。
とはいえ「X7」から盛り返したに過ぎません。「X7」が酷すぎて過大評価されている感があります。
シリーズ黄金期の「X2」「X4」には及ばない。
縛りの強いステージ構成
せっかくの多彩で軽快なアクションを楽しめるステージが少ないです。
1つ1つのステージが個性的だけど「やらされてる感」がツラい。
・重力反転
・強制スクロール
・スニーキング
など、縛りの強いステージばかり。
自由に動けるのは「ノアズ・パーク」「ブースターズ・フォレスト」の2ステージぐらい。
多彩で軽快なアクション自体は楽しいので、それを楽しめるステージがあと2つぐらいあれば…と残念な気分になります。
トゲ配置が完全に本気かつ、ポリゴンの3Dトゲの当たり判定が分かりにくいのもイライラします。
特に、剣山のような「シグマ・パレス」のトゲは奥行きのある画作りで絶妙に紛らわしい。
何度やっても当たり判定を見切れずティウンの山を築きました。
ダイナスティだけは許さん!
最大の問題は3Dシューティングの2ステージ。
8ステージ中2ステージがライドチェイサー乗りっぱなし。
もうこの時点でツラいです。
しかも、どちらも初見殺しで異様に難易度が高い。
「ダイナスティ」はツラいを通り越してヤバい。
ここだけは悪い意味で「X7」に匹敵。
まずステージ開始直後、頭に「?」が浮かびます。
何をすれば良いのか全くわかりません。
戸惑っていると、一定時間経過で失敗扱い。
制限時間の表示がないし、急に画面が止まって終了する失敗演出が謎すぎます。
街が爆発する的な、なんらかの演出とゲームオーバーになる理由がほしい。
そんな中、「キャハハハ!バックオフ・バックオフ!キャハハハ!ロッキン・カモーンカモーン!シュシュシュー!」
と終始叫び続けるボスがあまりにもウザい。
途中で音を切って無音にしました。
何度も意味不明な失敗を繰り返し、無音で攻略法を探ること数十分。
こちらの弾速が遅すぎて敵に攻撃が当たるのは密着したときっぽいことに気づくと、ようやくステージの意味がわかります。
ブーストで接近して攻撃を当てる
→ブーストは武器エネルギーを消費する
→道中の武器エネルギーを取る
→ウェポンアップを装備しよ
ここまでの攻略を自力で気づく必要があります。
攻略法を踏まえた上で、楽しくは無い。
カーブ時、自機と当たり判定のあるオブジェクトとの位置関係がわかりにくい。
ダメージを受ける障害物は避けにくい、逆に武器エネルギーは取りにくい。
てか最初は武器エネルギーを機雷だと思って避けていました。このステージはそれほど初見で意味不明。
このように、ダイナスティは「X7」に勝るとも劣らないステージです。
「X8」開発陣がなんでこんなのを作ってしまったのか謎。
ボリュームが少ない最終ステージにも不満があります。
軌道エレベーター「ヤコブ」→8ボスラッシュ「ゲートウェイ」→ラストステージ「シグマ・パレス」で終わり。
「ヤコブ」なんて縦スクロールだけ。
無敵時間が長いボス
ボス戦はテンポが悪いです。
やたらとボスの無敵時間が長い。
8ダメージごとに無敵。
小刻みに無敵になるためチャージ攻撃が無意味です。
体力が減って攻撃パターンが変化する演出中も無敵。
瀕死時に発狂して必殺技を放つとき酷い奴は30秒無敵。
いくら撃ってもキンキンキンと弾かれます。
無敵かどうか見た目でわかりにくいのも難点。
無敵時間といえば、ラスボス第二形態の必殺技「パラダイスロスト」が典型的です。
画面が暗くなっていき、倒しきれないと強制的に負け。
ダメージが入れるには3回クラッキングする必要があります。
最後の最後で初見殺し。
その他
・3Dグラフィックの出来は良いけど、ドット絵より魅力が薄い
3Dキャラの立ち姿や顔は格好悪く、ムービーも少々マヌケ面。
当たり判定がわかりづらいのも難点です。
・アクションの感触もドット絵時代に劣る
床を滑るように歩き、バスターの反動も感じないモーション。
・ボスのデザインが格好悪い
パンダ、ニワトリ、ひまわり、雪男など。個性豊かなのは良いけど戦闘向きとは思えません。
・ストーリーが迷走気味
元々エックスシリーズのテーマだった「レプリロド同士のハードな戦い」はどこへやら。
敵ボスの言い分に全く聞く耳を持たないエックス達には、レプリロイドと戦う葛藤がありません。
アクセルの謎は「新世代レプリロイド」というだけで解決。ややこしい設定をバッサリと切り捨てました。
しかもルミネから「君はプロトタイプだからシグマ化しない」と不自然なお墨付きまで貰います。
シグナスなんて申し訳程度にリザルト画面で顔を見せて「このステージはお前達の庭だなぁ」と緊張感の欠片もないことを言うだけ。
「X7」までの駄遺産がまだ足を引っ張っているように見えます。
個人的には、設定がゴチャった「X5」以降は無かったことにして再スタートしてほしい。
まとめ
「「X7」のタイミングでこれぐらい遊べる作品を出してほしかった…」
と思う良作。
気になる点はあります。
・魅力の薄い3Dグラフィック
・縛りの強いギミック偏重ステージ
・前作以上に最悪な3Dシューティング
・本筋からズレた設定・ストーリー
これ、本作の難点というより「X5~7」の駄遺産。
駄遺産の威力は続編を潰すほどに強いのです。
ストレス発生装置と化した「X7」から良作といえる所まで盛り返した本作は凄い。
駄遺産に足を引っ張られる開発陣の努力と苦悩が伝わってきます。
シリーズ最高傑作とはいえないけど、遊ぶ価値ある力作なのでぜひ。