今話題の、サイバーパンクRPGのレビューを書いたのでご覧ください(大嘘)
もくじ
サイバードールとは
ダーク&ハードボイルドなサイバーパンク
サイバードールとは、1996年にセガサターンで発売されたRPG。
サイバーパンク※な世界観が特徴です。
一応ことわっておくと「サイバーパンク2077」とは別物です。
スクショを見て「思ってたゲームと違うわ」と帰るのはもう少しお待ちください。
本作はサイバーパンク2077以上にサイバーパンクを表現したかもしれない、一読する価値がある作品なのです。
※サイバーパンクとは
簡単にいうと、
・肉体・意識を機械的に拡張する
・それにより個人や集団がより大きな構造に取り込まれる
個人が大きな構造に取り込まれるため、ディストピア感が強いのも特徴。
具体的には、「ブレードランナー」「攻殻機動隊」などサイボーグやインターネットを題材にしたSF作品を指します。
スマホやネットが当たり前になった今では「これはサイバーパンクだ」と言及する必要が無いほどテーマが普遍化しました。
徹底してサイバーパンク黎明期、80年代のダーク&ハードボイルドなテイストで描きます。
RPGといえばパーティー戦闘だけど、本作で操作するのはサイボーグの主人公1人のみ。
ハードボイルドなサイバーパンクに仲間は必要ないのです。(女は必要)
主人公は荒廃した世界で、ときには薬物に逃避しながら復讐を目指します。
その独特な空気を感じるために、まずはあらすじをご覧ください。
■あらすじ
A.D.1997、人類はAIDSを克服した。
しかしA.D.1999、ノストラダムスの予言が的中するかのように新種の病が蔓延した。
その病とは「筋弛緩症 (Musculer Loosening Disease:MLD) 」。
MLD感染者は筋肉が委縮し植物人間になるという。
A.D.2002、MLDに対抗するため感染者をサイボーグ化する「人間機械化計画 (Human Mechanical Project:HMP)」が提唱された。
ところが、HMPで不老不死を実現できると考えた人々はMLD対策を外れてサイボーグ化を進め始める。
計画責任者Dr.ライリウスの死後、後のHMPはDrの脳を移植したコンピュータ「MARIA」に委ねられた。
A.D.2034、HMPが40%台を越えるとMLDは突然消え始め3年間で消滅。
HMPは中止され、人々は生身の肉体を取り戻そうとしていた。
A.D.2039、突如現れた機械生命体「闇の来訪者 (Dark Visitor:DV)」が人類を襲撃する。
HMP中止の後、都市管理を担っていたMARIAはDVに対抗するため「対DV用特殊部隊:DEBUGGER」を結成。
そして今、DEBUGGER入隊を済ませた1人の男がいた。
ね、独特でしょ?(笑)
ローカライズに失敗した洋ゲーに見えるけど日本製です。
グラフィックはスーファミ時代に逆戻りしたようなドット絵。
いい意味で古臭い、80年代サイバーパンクな雰囲気が出ています。3Dポリゴンだとこの味は出ないでしょう。
ロックな戦闘BGMも秀逸。
サイバーパンクってグロくて「うわぁ…」と引くイメージですよね。
本作は振り切った世界観とドット絵のおかげでグロく感じません。
「北斗の拳」や「グラップラー刃牙」が一周回ってグロくないのと同じ。
相手は人間というよりただのモンスター。倒してもボコォと壊れるだけで罪悪感もありません。
全年齢向けの健全なRPGとして楽しめます!(?)
ゲームの流れ
全16章で、章ごとに舞台が変わります。
ストーリーにはあまり期待しない方がいいかと。
最初から最後まで起伏が無いおつかいミッションが続き、終盤に急展開。
苦労してたどり着いたラスボス戦は負けイベント、エンディングは投げっぱなしで消化不良です。
ストーリーでやる気を引っ張るというより世界観にひたるゲームです。
各章のパターンは下記のどちらか。
・町エリアで情報収集
・いきなりダンジョンから始まる
最後に待ち構えるボスを倒すと次の章へ。
舞台が変わるといっても、2つの町と代わり映えしないダンジョンのみ。
最初から最後まで同じエリアの使い回しです。
ワールドマップも無いし、決められたエリアから出れない。
無理やり例えるなら、サガフロンティアのレッド編。
閉塞感が強いけど、作品にマッチしているので難点とはいえません。
進行フラグはほぼノーヒントなので、町を総当たりで調べ回ります。
この町エリアがやたら広くて迷いやすく移動距離が長い。
しかもランダムエンカウントで足止めされてテンポ良く進めません。
プレイ時間の約半分は街で右往左往することになります。
建物の外見が紛らわしいため、何回探索しても全体像がつかめない。
僕も色々なゲームやってきたけどこんな街マップは初めてです。
どうせ何回も来るので、手書きでマップを作ると良いかもしれません。
戦闘・育成システム
戦闘と育成システムで特徴的なのは、
・距離に応じた武器
・部位パーツ換装、破壊
以下、詳しく紹介します。
■距離に応じた武器
戦闘画面はベルトスクロールアクション風。
でもアクション要素はありません。コマンド式なのでリアルタイム性も無い。
では横画面に何の意味があるのかというと、「距離」(画面下のバー)を表現しています。
距離は「ロング・ミドル・ショート」の3つ。
武器は距離3種類と特性3種類「ピンポイント/各部位ランダム/全体攻撃」の組み合わせで、全9カテゴリーあります。
自分の強みと敵の弱みを考慮し、移動により間合いを詰めたり離れたりして有利に戦える距離を取るのが重要です。
僕のお気に入り武器はショットガン (ショート・全体攻撃)。
ショート距離で戦うのが手っ取り早く、この距離は敵の攻撃もわりと弱い。
全体攻撃は合計ダメージがケタ違い。中でもショットガンは命中率が高いので重宝します。
ボスも全体的に削るのが有効です。
全体攻撃のデメリットは、全体をぶっ壊すためパーツが入手しづらいこと。
でも実際のところ、耐久値の低い頭が先に壊れやすいので問題なく入手できます。
ただショットガン1本だと対応できない相手が現れて詰むことがあるので、やはり距離に応じた3種揃えたいところです。
■部位パーツ換装、破壊
本作にはレベルの概念がありません。
敵を倒すと、未破壊部位パーツをランダムで2つ落とします。
そのパーツに換装して自分を強化します。
自分・敵ともに部位パーツは5ヵ所(頭・身体・右腕・左腕・脚)対応。
当然、脚パーツを換装するには脚パーツが必要です。
欲しい部位が落ちなくて「また腕かよ」みたいなことが多々あります。
一見難しそうだけど、メンテ屋がワンボタンで最適状態に組み替えてくれるのでややこしいカスタムは不要。
パーツの選別や収集は趣味の領域。どうせ次の章に進めばもっと良いパーツが出ます。
敵を倒す→ステータスアップの流れはレベル上げと大差ないので、すんなり馴染めるはず。
各パーツは独立したHPと機能があり、壊れると機能不全になります。
左腕:武器が使えない
右腕:パンチ、サポートウェポンが使えない
脚:移動できない
頭・身体:本体撃破で終了
このように機能不全で致命的なデメリットを負います。
そのせいでけっこう簡単に詰むのが恐いところ。
例えば、
・ボスの攻撃が頭に集中して即壊される→終了
・遠距離武器を持っていないときに遠距離で脚壊される→詰み
・左腕壊れて攻撃力激減→ほぼ詰み
しかも頭・脚は耐久値が低いためすぐ壊れてしまう。
強化不足だとザコの攻撃1発で終わることもあります。
理不尽に詰んでコントローラーぶん投げ、いったん頭を冷やしてから拾ってプレイ再開。そしてまたぶん投げる。
そんな、やみつきになるスリルが味わえます。
難点
ここまで語ってきたように魅力的な要素を持つ作品。
しかし長所を打ち消し足を引っ張る部分が多すぎて、令和の今プレイすると相当な忍耐力が必要です。
戦闘のテンポが悪すぎる!
戦闘のテンポが悪すぎる!
ロード待ちのような間と、もっさりアニメーションでとにかくテンポが悪い。
敵2体が2回行動で、1ターンに同じモーションを4回見せられることもあります。
5秒×4で20秒間、相手の攻撃をぼーっと眺めるだけ。
敵が硬いので1体倒すのに最低3ターンはかかります。20秒×3ターン、ぼーっと眺めるだけ。モーションカット機能がほしい!
例えるなら毎ターン、旧スパロボの戦闘シーンを見せられるようなもの。
マップ兵器がある分、スパロボの方がマシ。
クモみたいな敵が垂れ下がる間抜けな動きを3回連続で見せられたときは心折れそうになりました。
「面倒くさいから全体魔法で速攻」とかムリです。
自分が1回行動で単体攻撃しか無い状況は最後まで変わらない。
敵・自キャラのパワーバランスも変わらず、できることも増えません。
ゲーム開始から最後までずっと同じことの繰り返し。毎回、ザコとじっくり付き合うハメになります。
このテンポに耐えられる人はそうはいないでしょう。
ダンジョンはともかく、街中のランダムエンカウントがダルい。
少ないエリアを使い回し、プレイ時間を稼ぐようなエンカウント率の高さ。
道がやたらと広いためになかなか先に進めません。
せめて安全・危険エリアを分けてほしかった。
「長引く戦闘&街中でも容赦ないランダムエンカウント」により、フラグ立てだけなら1章5分で終わるようなボリュームなのに1章90分ぐらいかかります。
戦闘は前述の通り、マップ兵器が無い旧スパロボ状態。
よってプレイ時間のほとんどは「戦闘を眺める」時間です。
ネットの攻略情報が無ければ、僕は間違いなく投げていました。
テキスト、UIが見づらい!
テキストの読みづらさが史上最強クラス。
ポエティックな雰囲気重視。「字体で感じろ」なノリで、読ませる気がありません。
専門用語、アルファベット、カタカナが入り混じってわけわからん。
繰り返しになりますが、本作は日本製です。
ローカライズの失敗ではありません。
UI(ユーザーインターフェース)デザインも見づらい。
ステータス表記がもう何から何まで見づらい。
ずらりと並んだ武器屋のラインナップを見ても、どれが良いのかピンときません。
銃の種類毎に弾薬(マガジン)があるのも無駄にややこしいです。
そんなに消耗しないし安いから、わざわざ買わせる意味がわかりません。
このゲーム、実は遊びやすいんです。
複数キャラを管理しなくて良いし、パーツ換装でシンプルにキャラを強化できる。
戦闘も、限られた行動の中で「移動、武器の使い分け、命中率、バフ・デバフ」によりリスクリターンを考えるのがシンプルで楽しい。
それだけに、悪すぎるテンポと見づらいデザインで無駄にハードルを上げているのが惜しいです。
顔グラフィックが無い
顔グラフィックが無い!
そのせいで最後までキャラの顔がイメージできませんでした。例えるなら、挿し絵が無いラノベ。
会話シーンで拡大した全身ドット絵を見せられても感情移入できなくて困ります。
このドット絵ではただのクラウドじゃないですか。これがサターンのFF7ですか?
主要キャラの顔グラフィックぐらい作ってほしいです。
世界観の広がりが全然違うものになるはず。
まとめ:長所を台無しにする仕様が惜しい
エンディングはどう解釈すればいいのか…
このサイバーパンクな余韻、みなさまにもぜひ味わっていただきたい。
80年代風のダークなサイバーパンクにこだわった魅力的な作品です。
・リスク管理が重要なスリルあふれる戦闘
・武器・パーツ換装を繰り返して自キャラを強化する育成
も楽しい。ただ、
・テンポの悪い戦闘
・探索中のダルすぎるランダムエンカウント
・見づらいテキスト・UIデザイン
上記により令和の常人にはプレイ困難なのが惜しい。
まあ、だりーと思いながらときにコントローラーを投げながら最後までやってしまったのも事実です。
強烈な魅力がある作品なので、上記の難点を乗り越えて遊べる方は手を出してみると良いかもしれません。
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